オアシスの番人事情

前世が蛍の人

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魔法について

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次の日の朝アークに起こされ、眠気まなこで支度を始めた。
番人の朝はとても早いが、元々早起きをしていたトイからすれば少し早い程度だ。

「あ…元に戻ってる。」
ふと、気になって鏡を見ると見慣れた自分が映っている。
アークはああ言っていたけど、内心戻るか心配だったんだ。元に戻って良かった…!
トイは部屋を出て昨日と同じ持ち場へ向かう。

『いたぞ。』

「バラルお疲れ。持ち場、交代しに来た。」

「トイっ待ってた!侵入者や怪しい奴はいなかったぜ。
そうだ、良かったらこれ食えよ。」
手渡された袋を開けると、中には見た感じ固そうなパンと干した柑橘類が入っている。

「良いのか?」

「やるよ、まだ朝飯食ってないんだろ?」

『彼の残り物で申し訳ありませんがどうぞ、召し上がってください。』

「ここじゃ朝飯を食う時間だけ決まってねぇからな。」

「へぇー…じゃ、遠慮なく貰っとく。ありがとさん。」
バラルに感謝し見送った後、アークと雑談しながら朝食を摂る。固いけどフランスパンだと思って食べればそこまででもないし、干した柑橘類をのせて食べると甘味がパンと中和して美味しい。

「…難点なのはぼそぼそしてるってとこか。」

『水ならあるぞ。飲むか?』

「飲む飲む、頂戴。」
冷たい水が胃に染みるなぁ。
呑気にご飯を食べ終え仕事モードに入ったトイは辺りを見渡すも、太陽が出てきたばかりのこの時間は静かで気を抜いたら寝てしまうだろう。
そこでアークに魔法の特訓をお願いし、トイは初級編からはじめたのだが…。

「…そもそも魔力ってどんな感じ?」

『どんな…か。
そうだな、まず目を閉じて両腕を広げ深呼吸をしてみろ。

…そう、その調子だ。何かが体の中を巡る感覚が分かるか?』
なんだろう、塊みたいな物が回っている感じがする。
アークの問いかけに頷くとおもむろに両手を掴まれ、手のひらを合わせてきた。

「え……、どうして手を…?」 

『いいから手に集中しろ。』
アークに言われた通り、手に意識を集中させる。
すると、塊だった何かが水のように流れる感覚に変わり次第に体が温かくなった。

『今、俺の魔力を注ぎ凝縮された魔力をほぐしたところだ。…よし。
そのまま魔力を集中させあの岩に向かって「風よ、見えぬ刃となって舞い踊れー鎌鼬ウィングカッターと唱えてみろ。』

「風よ、見えぬ刃となって舞い踊れー鎌鼬ウィングカッター。」
風魔法を唱えると今まで感じなかった魔力が体から抜けると同時に、前方にあった地球儀くらいの岩が小石ほどの大きさになった。

『今のが風魔法、鎌鼬ウィングカッターと呼ぶ。単体に小ダメージを与える初級魔法だ。
今のような魔法は使用者のレベルや魔力の質によって威力が変動する。』

「少しクラクラするのは魔力を使ったから?」

『あぁ、魔力の調整が上手くいかなければすぐに枯渇してしまうのだが、トイは素質があるな。』

「ほんと?じゃあこの調子で頑張ってみるか。」

『トイならすぐにでも覚えられそうだな。だか、無理はするなよ?』
魔法を乱用すると魔力切れを起こし気絶してしまうらしい。更に不足した魔力は生命力で補う仕組みになっているんだと。
…なにそれ怖い。

「そう言えば自分、風以外の属性魔法って使える?」

『使えん。
だが、異なる属性を持つ魔神ジンや適任者と合わせ魔法をすることは可能だ。
風系統の属性魔法はどの属性魔法にも波長が合わせやすいからな、上手く連携がとれる』
へぇ…覚えておこ。
トイはしばらく風魔法の特訓を行った後、賑わいだした後宮ハレムの警護に戻った。
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