11 / 11
怯える心
しおりを挟む
これは確か、仕事にいくらか慣れ始めた頃。
アークは他の魔神達との話し合いでトイが1人で警護をしていた時にそれは起こった。
(やっと…、解放された…。)
姫達の相手をし終えたトイは、昼休憩のためアークを迎えに行く。
その途中、見知らぬ男に声をかけられたのだ。
「よぅ、お前が最近入った新入りか?」
「はい、そうですが何か?」
「その様子じゃ休憩か?暇なら俺に付き合えよ。」
ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべ近づいてくる男に嫌な予感がし、踵を返そうと後ろを向けば、別の男に道を塞がれていた。
「…。」
「な?俺に付き合えよ。」
ぐいぐい背中を押され強制的に前を歩かされる。
トイは黙って男の示す行き先を歩いていくと、そこは人気のない場所で、奥に数人の男らがたむろっていた。
その内の一人と目が合う。
「おいおいこれが男なのかよ、勿体ねぇ。」
「俺もそう思うぜ。
けどこれが男とか言ってやるな、泣くかも知れないだろ??」
「仕方ない、俺達が特別にお前を男らしくしてやるよ。」
「俺も手伝ってやんよ。」
などと、皆口々に言いたい放題言っている。
「……。」
「おい…何とか言えよ。」
1人の男がトイにしびれを切らし、肩に触れようとしたその時。
トイが瞬時に相手の腕を掴み前に重心を傾け足を払い、男を地面に叩きつけた。
「あがっ……」
「俺に触らないでくれる?気持ち悪。」
「この…っ、調子に乗んなよ。
てめぇなんかボコボコにしてやんよ!」
別の男がトイの顔面を狙うも、トイはそれを受け流し腕を握りしめる。
「で?」
「な…っいでででででぇー!!」
「そっちから喧嘩売ったんだからな?」
そのまま男共を殴って蹴散らし鎮圧させた…筈だった。
「はっ、捕まえたぜ!!」
隙を狙って隠れていた男に後ろへ回り込まれ羽交い締めにされる。すると男はあろうことか、服の中に手を入れてきた。
「このっ、変態野郎が!いい加減にしろ!!」
「可愛い顔してえげつねぇなお前。
けど放すわけねーだろが、諦めて大人しく俺に犯されていろよ…」
瞬間、首筋に生暖かい感触が這う。
しかも大きな手が上から下へと、形を確かめるかのように往復している。
「やめっ…う……あ…」
「っ…すげぇそそるな………お前…」
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いっ!!!
「ふっざけるな!!」
トイは思い切り頭を振り上げ相手の顔面に命中。拘束が緩み、すかさず横腹に蹴りをお見舞いさせる…はずだった。
男は蹴りを交わし、トイの服を後ろへ引っ張りバランスを崩させたのだ。
「甘いんだよっ」
バランスを崩したトイは手首を掴まれ羽交い締めにされる。
「放せっ、この!、!やめっ嫌!!!」
「ハァっ…ハァハァ…」
男の荒い息づかいに背筋が凍る。
その間に男の手がトイのズボンの中へと滑り込む。
「誰かっ、、助け、んっ!!」
口を覆われ、暴れようにも押さえつけられたトイは恐怖によりパニックへと陥った。
それでも男は手を止めようしない。
「男に襲われてるのを見られてぇのかよ…じゅっ…、いやらしく腰振れよおら!」
「んんんんっ!!」
「おい!!そこで何をしている!」
その時だった。
近くを通った小間使いの人が異変に気づいて様子を見に来てくれたのだ。
無事に助けられ、色々と追及をされたがトイは終始震えそうになる足に力を入れて平然を装ったのが功となったのか…ちょっとした小競り合いとして片付けられた。
『お前達、すぐにそいつらを連れて行け。』
「……」
早く帰りたい。
すぐにでも身体を洗いたい、おぞましいあの感触を忘れたい。
身体が震えている、でも我慢しなきゃ。
一時の、我慢だ。
『トイ、寝ろ』
「え…な、…」
しかしアークに問いかける前に瞼が重くなり、そのまま意識が朧気になっていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『………ちっ』
俺はトイを眠らせた水球を浮かべ、足早に自室へと向かいながら先程の光景を思い出しては舌打ちをした。
トイを集団で襲った男達は、軽い刑罰に処す事となっている。表向きは。
だが実際はムルークの手によって処刑された。
例え番人だろうとムルークの所有物であり、魔神の加護を持っている奴に手を出したのだ。
当然の報いである。
そう考えていると、ウイルスが風に乗って現れた。
『アーク、彼は大丈夫ですか?』
『今は眠られておいた、このまま部屋に戻り寝かせておく』
『……』
『言いたいことはそれだけか?
俺はこの通り忙しい、さっさと用件を言え』
『…では、単刀直入に申し上げます。
突然の訪問についての報告、彼の詳細な情報の開示をされていないのは何故ですか?
しかも彼の魔法適性は風属性であるにも関わらず、何故彼を適任者にしたのですか?』
『…必要なことだからだ』
『ならば尚更報告の義務があります。
貴方の突然な訪問に驚き、しかも彼についての詳細もないままムルークの前に引っ張り…。
ー何を隠されているのですか?』
真剣な眼差しで俺を見る。
『…ここでは話せん。
部屋まで来い。』
『分かりました。
彼の容態も気になります、ここは私がー』
一瞬で景色が変わった。
『転移か』
特に驚きもせず俺はトイをベッドへ寝かせ、魔力の波長を穏やかにさせる。
『左様です。
それで、ここでしか話せないと言うのは一体?』
『こいつを一目見て何か珍しいと思わなかったか?』
『質問を質問で返さないで下さい。
…確かにあまり見慣れない容姿でありますが…それが何か?』
俺はトイにかけた幻術を解く。
本来の姿へと戻ったトイを見てウイルスは目を見開いた。
『な…』
『これが答えだ。』
分かっただろう?と促せば、奴はこめかみを抑え考え込む。
『この世界の人種ではありませんよね、なるほど…まさか異世界人だったとは……しかも、女性…。
貴方が真実を隠していた理由を理解しました。ですが何故ここへ…?』
『トイは元の世界へ帰りたいと願っている。
帰るためにはこの王宮で情報を得るのが近道だと判断したからだ、それにここならまだ守られるからな。
しかし女と知られてしまえば今度はムルークが黙っていないだろう』
『ー王の花嫁へと無理矢理召し遣わされ、務めを果たせと迫られるでしょう。
異世界人の彼女からしてみればここは人権など無いようなものですから…』
『そういうことだ。分かるな?』
『はい、私の名にかけて誓いましょう。
そこでアークに一つお願いがあります。今回の騒動を再び起こさない為に、風を守護する私が彼女の魔法錬成の指導を行いたい』
『あい分かった、もとよりそのつもりだ』
トイが穏やかな眠りについている間、
魔神達が秘密裏に動いていたことを彼女は知らない。
アークは他の魔神達との話し合いでトイが1人で警護をしていた時にそれは起こった。
(やっと…、解放された…。)
姫達の相手をし終えたトイは、昼休憩のためアークを迎えに行く。
その途中、見知らぬ男に声をかけられたのだ。
「よぅ、お前が最近入った新入りか?」
「はい、そうですが何か?」
「その様子じゃ休憩か?暇なら俺に付き合えよ。」
ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべ近づいてくる男に嫌な予感がし、踵を返そうと後ろを向けば、別の男に道を塞がれていた。
「…。」
「な?俺に付き合えよ。」
ぐいぐい背中を押され強制的に前を歩かされる。
トイは黙って男の示す行き先を歩いていくと、そこは人気のない場所で、奥に数人の男らがたむろっていた。
その内の一人と目が合う。
「おいおいこれが男なのかよ、勿体ねぇ。」
「俺もそう思うぜ。
けどこれが男とか言ってやるな、泣くかも知れないだろ??」
「仕方ない、俺達が特別にお前を男らしくしてやるよ。」
「俺も手伝ってやんよ。」
などと、皆口々に言いたい放題言っている。
「……。」
「おい…何とか言えよ。」
1人の男がトイにしびれを切らし、肩に触れようとしたその時。
トイが瞬時に相手の腕を掴み前に重心を傾け足を払い、男を地面に叩きつけた。
「あがっ……」
「俺に触らないでくれる?気持ち悪。」
「この…っ、調子に乗んなよ。
てめぇなんかボコボコにしてやんよ!」
別の男がトイの顔面を狙うも、トイはそれを受け流し腕を握りしめる。
「で?」
「な…っいでででででぇー!!」
「そっちから喧嘩売ったんだからな?」
そのまま男共を殴って蹴散らし鎮圧させた…筈だった。
「はっ、捕まえたぜ!!」
隙を狙って隠れていた男に後ろへ回り込まれ羽交い締めにされる。すると男はあろうことか、服の中に手を入れてきた。
「このっ、変態野郎が!いい加減にしろ!!」
「可愛い顔してえげつねぇなお前。
けど放すわけねーだろが、諦めて大人しく俺に犯されていろよ…」
瞬間、首筋に生暖かい感触が這う。
しかも大きな手が上から下へと、形を確かめるかのように往復している。
「やめっ…う……あ…」
「っ…すげぇそそるな………お前…」
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いっ!!!
「ふっざけるな!!」
トイは思い切り頭を振り上げ相手の顔面に命中。拘束が緩み、すかさず横腹に蹴りをお見舞いさせる…はずだった。
男は蹴りを交わし、トイの服を後ろへ引っ張りバランスを崩させたのだ。
「甘いんだよっ」
バランスを崩したトイは手首を掴まれ羽交い締めにされる。
「放せっ、この!、!やめっ嫌!!!」
「ハァっ…ハァハァ…」
男の荒い息づかいに背筋が凍る。
その間に男の手がトイのズボンの中へと滑り込む。
「誰かっ、、助け、んっ!!」
口を覆われ、暴れようにも押さえつけられたトイは恐怖によりパニックへと陥った。
それでも男は手を止めようしない。
「男に襲われてるのを見られてぇのかよ…じゅっ…、いやらしく腰振れよおら!」
「んんんんっ!!」
「おい!!そこで何をしている!」
その時だった。
近くを通った小間使いの人が異変に気づいて様子を見に来てくれたのだ。
無事に助けられ、色々と追及をされたがトイは終始震えそうになる足に力を入れて平然を装ったのが功となったのか…ちょっとした小競り合いとして片付けられた。
『お前達、すぐにそいつらを連れて行け。』
「……」
早く帰りたい。
すぐにでも身体を洗いたい、おぞましいあの感触を忘れたい。
身体が震えている、でも我慢しなきゃ。
一時の、我慢だ。
『トイ、寝ろ』
「え…な、…」
しかしアークに問いかける前に瞼が重くなり、そのまま意識が朧気になっていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『………ちっ』
俺はトイを眠らせた水球を浮かべ、足早に自室へと向かいながら先程の光景を思い出しては舌打ちをした。
トイを集団で襲った男達は、軽い刑罰に処す事となっている。表向きは。
だが実際はムルークの手によって処刑された。
例え番人だろうとムルークの所有物であり、魔神の加護を持っている奴に手を出したのだ。
当然の報いである。
そう考えていると、ウイルスが風に乗って現れた。
『アーク、彼は大丈夫ですか?』
『今は眠られておいた、このまま部屋に戻り寝かせておく』
『……』
『言いたいことはそれだけか?
俺はこの通り忙しい、さっさと用件を言え』
『…では、単刀直入に申し上げます。
突然の訪問についての報告、彼の詳細な情報の開示をされていないのは何故ですか?
しかも彼の魔法適性は風属性であるにも関わらず、何故彼を適任者にしたのですか?』
『…必要なことだからだ』
『ならば尚更報告の義務があります。
貴方の突然な訪問に驚き、しかも彼についての詳細もないままムルークの前に引っ張り…。
ー何を隠されているのですか?』
真剣な眼差しで俺を見る。
『…ここでは話せん。
部屋まで来い。』
『分かりました。
彼の容態も気になります、ここは私がー』
一瞬で景色が変わった。
『転移か』
特に驚きもせず俺はトイをベッドへ寝かせ、魔力の波長を穏やかにさせる。
『左様です。
それで、ここでしか話せないと言うのは一体?』
『こいつを一目見て何か珍しいと思わなかったか?』
『質問を質問で返さないで下さい。
…確かにあまり見慣れない容姿でありますが…それが何か?』
俺はトイにかけた幻術を解く。
本来の姿へと戻ったトイを見てウイルスは目を見開いた。
『な…』
『これが答えだ。』
分かっただろう?と促せば、奴はこめかみを抑え考え込む。
『この世界の人種ではありませんよね、なるほど…まさか異世界人だったとは……しかも、女性…。
貴方が真実を隠していた理由を理解しました。ですが何故ここへ…?』
『トイは元の世界へ帰りたいと願っている。
帰るためにはこの王宮で情報を得るのが近道だと判断したからだ、それにここならまだ守られるからな。
しかし女と知られてしまえば今度はムルークが黙っていないだろう』
『ー王の花嫁へと無理矢理召し遣わされ、務めを果たせと迫られるでしょう。
異世界人の彼女からしてみればここは人権など無いようなものですから…』
『そういうことだ。分かるな?』
『はい、私の名にかけて誓いましょう。
そこでアークに一つお願いがあります。今回の騒動を再び起こさない為に、風を守護する私が彼女の魔法錬成の指導を行いたい』
『あい分かった、もとよりそのつもりだ』
トイが穏やかな眠りについている間、
魔神達が秘密裏に動いていたことを彼女は知らない。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる