13 / 28
12_クリスの問い
しおりを挟む
「陛下、軍所から神前試合に関する書類を預かって参りました」
ミュラメント聖国との調印式を行うと発表した日から一か月後、朝日が持ってきた山の様な書類を見て、執務室にいた祈里は思わず持っていた万年筆を落としそうになった。祈里の机は既に書類と様々な資料であふれ返っており、祈里からは机の向こうにいる朝日の姿が何とか目視できるといった程である。そんな祈里の様子に、朝日も申し訳なさそうな顔をして持ってきた書類を机に置いた。
ミュラメント聖国との条約を結びなおすと公式に発表した日から、宮内は火が点いた様な慌ただしさだった。文官は調印式の準備に追われ、武官はその警護と神前試合の準備に奔走している。勿論神帝である祈里の下にも、毎日のように式の確認やら指示が欲しいやらの書類が山の様に届き、目が回るような忙しさであった。神帝の副官として傍に仕えてくれている柊にもその一部を任せてはいるが、幾ら彼が優秀であったとしても二人だけでとてもこなせる量ではない。祈里はこの一ヶ月で信頼のおける文官をもっと傍に置いておくべきだったと何度も後悔した。
「お顔の色が悪いように見えますが、少しお休みになっては如何ですか」
書類を置いた朝日が心配そうに声をかけてくれたが、祈里は弱々しく微笑んで首を振った。ここ最近の激務で確かに憔悴しきっていたが、だからと言って今自分が休むわけにはいかなかった。
「ありがとう。だが、これはこの国が大きく変わる転機になるんだ。私も神帝として出来る限りのことをしないと」
祈里の言葉に、朝日は何かを言いかけたが、一瞬の逡巡の後に言葉を飲み込んだ。ここ二カ月余りの時間を祈里の傍で過ごした朝日は、祈里が意外と頑固なことを知っているのだ。
朝日が祈里に忠誠を誓ったあの日から、朝日は警護武官として祈里の傍にいることになった。神性の力によってあらゆる攻撃を受け付けない神帝には、通常警護の武官が付くことはない。だが、また祈里が一人で無茶をしないようにと柊が朝日を傍に置くよう進言してきたのだ。その柊の提案を、朝日は願ってもないことだと嬉々として受け入れた。
誰にも知られないよう隠しているが、「神殺しの聖剣」に貫かれ神性を失っている祈里にとってそれはありがたいことであった。だが朝日は先日の襲撃事件により左腕を負傷していた為、祈里はせめて腕の傷が治るまでは休暇を取ってはどうかと朝日に伝えた。しかし朝日は『仕事をしていない方がストレスで治りが遅くなります』とかたくなに首を縦に振ろうとはしなかった。実際に彼の回復力は凄まじく、今では腕を吊っていた包帯もせずに過ごせる程になっていた。
祈里が再び目の前の書類たちと格闘していると、ノック音の後に夜月が「失礼いたします」と執務室に入ってきた。
「約束の方が参りました」
「ああ、入れてくれ」
この執務室を訪れることが出来るのは、祈里が呼び出した者かごく一部の信頼が置ける者だけだ。今日約束をしているのは一人しかいない。祈里が返事をすると、夜月に連れられて一人の男が入ってくる。青と銀の騎士服に身を包んだ美丈夫――クリスだ。
「失礼いたします」
クリスは流れるような動作で騎士の略礼をした。相変わらず所作の一つ一つまで洗練された動きだ。祈里が思わず見惚れていると、祈里の傍に立っていた朝日の腕が僅かに動いて外套を揺らした。朝日の表情は僅かに強張っているように見える。目で確認することは出来ないが、恐らく外套の中では刀に手を添えているのだろう。帝国に忠節を尽くす朝日にとって、クリスは敵とまでは言わなくとも警戒の対象なのだ。
「来てくれてありがとう。私から出向こうとも思ったんだが、この通り色々と手が離せなくて」
祈里がそう言うと、クリスは「いいえ」と首を振った。素っ気ない返事だが、特に祈里に対して嫌悪を抱いている様子ではない。クリスの穏やかな表情に、祈里は人知れずホッとした。
「朝日、少し二人にしてくれ」
祈里が朝日に向かってそう言うと、朝日は「ですが……」と戸惑った表情をした。朝日は横目でクリスが腰に下げている二本の剣を見る。一本は大陸で一般的に使われている鋼製の直剣。そしてもう一本は銀製の『神殺しの聖剣』である。神帝に致命傷を与えられる、この世で唯一の武器だ。朝日がクリスを警戒するのも無理はない。
「朝日、彼は大丈夫だ」
祈里が朝日に向かってそう言うと、朝日は一瞬驚いた表情をして、静かな声で「分かりました」と返事をした。
祈里にはそう言える確信があった。クリスが祈里に剣を向けるのは、祈里が暴君として道を違えた時だけだ。祈里が誠実である限り、クリスはそれに答えてくれる。この間の襲撃事件で、クリスが祈里に助太刀をしてくれたことがそれを証明していた。
朝日は部屋から出ていく時に一瞬警戒するようにクリスを見たが、そのまま何も言わずに部屋から出ていった。夜月もそれに続いて、礼をした後に静かに退室した。
祈里はクリスに「座ってくれ」とソファを指した。祈里もクリスの正面に腰を下ろす。透き通るような碧眼にじっと見詰められ、祈里は思わず目を逸らした。二人きりになったことを意識すると、急に緊張してしまう。祈里は出来るだけ冷静に喋ることを意識して口を開いた。
「もう知っていると思うが、ミュラメント聖国と調印式を行うことになった。式の時にはクリスにも協力して欲しい」
祈里の言葉に、クリスは「勿論です」と頷いた。
この願いは、ミュラメント聖国から訪れる使者との会談や、調印式ではクリスも同席していた方が相手も安心するだろうと思ってのことであった。協力的なクリスの返事に安堵しつつ、祈里はクリスをこの場に呼んだ本当の目的を伝えた。
「それと調印式に合わせて行われる神前試合だが、クリスも参加して欲しい」
祈里がそう言うと、クリスは少し意外そうな表情をした。
「私が参加してもよろしいのですか?」
「ああ、神の前ではみな平等で、国籍も身分も問わず戦うことが出来る。それに神前試合は神の前で宣誓を行う神聖なものだ。勝者には願いを叶える権利が与えられる。どんな望みであろうと、神帝である私はその願いを実現させる義務を負う。勿論――」
一度言葉を切った祈里は、クリスを見詰めて強調するように言葉を続けた。
「その願いがどんなものでも、帝国は決して宣誓を破らない。例えその願いが、帝国にとって不利になるものだとしても」
遠回りな言い方だが、敏いクリスはきっと祈里の言葉の意味を分かってくれるだろうと思った。祈里はクリスにこう言いたかったのだ。『もしクリスが勝者となり、その願いとしてミュラメント聖国に帰ることを望んでも、帝国はそれを全面的に認める』と。
時間が巻き戻ってから、祈里はずっとクリスを母国に帰してあげる方法を探していた。クリスは表向きには帝国に滞在している聖国の使者だが、実質は聖国に条約を守らせるための人質である。それは今回の調印式で条約を結びなおしても、覆すことは出来ない絶対的な条件として定められていることであった。だが、この神前試合でクリスが勝利し国に帰ることを望めば、条約は守られつつも、クリスは国に帰ることが出来る。
祈里が出来るだけ距離を置こうとしているクリスをわざわざ執務室まで呼び出したのは、クリスにそのことを伝えるためであった。
「……分かりました」
祈里の言葉に、クリスは短く返事をした。納得したようなクリスの表情に、祈里は言いたかったことが伝わったらしいことを知って胸を撫で下ろした。帝国にも優秀な武人が多くいるが、クリスも伊達に聖剣に選ばれた清廉の騎士と呼ばれている訳ではない。大局的にミュラメント聖国は帝国に敗れたが、クリスが率いていた部隊だけは無敗を謳われるほどの強さであり、その武勇は大陸中に知れ渡っている。そのクリスならば、この神前試合でも十分に勝機はあるはずだ。
「話は以上だ。来てくれて助かったよ」
祈里がそう言うと、クリスは静かに立ち上がった。祈里もクリスを送ろうと立ち上がったが、その刹那に目の前が真っ白になった。祈里がバランスを崩して倒れそうになると、横から力強い腕に引っ張られた。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ。すまない」
祈里が礼を言いながら瞬きをすると、視界が少しずつ色付いてくる。クリスに抱きかかえられるように支えられていることに気付いた祈里は、思わずさっと身を引いた。
「また、あまり眠れていないのですか」
クリスの言葉に、祈里は曖昧な笑みを浮かべた。クリスの言う通りだったのだ。ここ最近祈里が憔悴していたのは、激務に追われていたことだけが理由ではない。再びあの悪夢を見るようになってきたのだ。天門結界を維持する代わりに命を削られていく、あの悪夢を。
祈里の笑みを見たクリスは、不意に自分の首の後ろに手を回し、その手を祈里に差し出した。その手に乗っていたのは、銀で出来ている細かい装飾の施されたネックレスだった。星のような形の小さな飾りがついており、よく見るとその内側が網の様になっていた。
「私の国のお守りです。悪い夢を捕まえる力があると言われています」
祈里は差し出されたネックレスとクリスの顔を交互に見詰めた。祈里にくれるということなのかもしれないが、そのまま受け取るにも気が引けた。
「でも、クリスの大切なものじゃないのか」
「今は私より、貴方に必要なものでしょうから」
そう言ったクリスは差し出した手を引く様子がない。祈里はいつになく頑固な様子のクリスに戸惑ったが、ここで断るのも違う気がしたので受け取ることにした。
「ありがとう」
祈里がネックレスを受け取ると、クリスはほんの少しだけ微笑んだ。手に持ったネックレスは、ついさっきまで身に付けていたクリス温もりが微かに残っており、祈里は頬が熱くなった。クリスが身に付けていたものを貰えるなんて、悪夢を捕まえるだけではなく色々なお守りになってくれそうだ。
大切にしようと祈里がネックレスを眺めていると、その様子を見ていたクリスが不意に言った。
「陛下は、私のどこが好きなのですか?」
「え……、えっ!?」
クリスの突然の質問に、祈里は熱くなった頬を更に赤く染めた。どうしてそんな質問をという疑問と、自分の好意を知られている羞恥心が頭を駆け巡る。混乱して上手く返事が出来ない祈里は、真っ赤な顔でもごもごと口を動かすことしか出来なかった。
「ど、どこって……」
「よく考えてみて下さい」
返事が出来ない祈里とは対照的に、クリスは至って冷静な表情をしていた。祈里が答えられないことも気にしていない様子で、言葉を続ける。
「私の何が好きだったのか、今の貴方に答えられますか」
「……?」
クリスの言葉に、祈里は首を傾げた。クリスが何を言いたいのか、祈里には全く分からなかった。
「どういう……意味?」
クリスの言葉は、まるで祈里のクリスへの恋情が偽物だとでも言っているようだった。祈里にはクリスが祈里の気持ちを諭す理由も、どんな意図で祈里にこんなことを聞いたのかも、全く分からなかった。
聞き返した祈里にクリスは何も言わず、どこか寂し気に微笑んだだけだった。
***
執務室から出てきた朝日は、そのまま扉の前を塞ぐようにして待機していた。同室することは許されずとも、神帝の護衛として傍を離れる訳にいかない。
朝日とて、神帝と騎士の噂を知らない訳ではない。戦うことにしか眼中になかったあの神帝が、唯一興味を持った人間だと。しかも、毎夜部屋に呼ぶほどの執着ぶりだったという。神帝が執着という如何にも人間的感情を持っていたことに、みな驚愕したであろう。そして、神の肉体に肉欲があった事にも。だが、神帝が敵国の人間と共に夜を過ごしても、誰も神帝の行いに異議を唱えることはしない。何故なら、神の行いは全て正しいからだ。
朝日もずっとそう考えていた。きっと神帝には自分たちには理解できない理由で、あの騎士に執着する必要があるのだろうと。だが、先ほどの光景を見てしまった朝日は、そんな自分の考えは間違っていたのかもしれないと気付いた。
騎士が入ってきた瞬間、神帝の雰囲気が一瞬変わったことに朝日は気付いていた。神帝の表情は変わらずとも、あの青い騎士を見る目には熱が籠っていた。まるで、その男に恋をしているかのように。確かに、あの騎士には惹かれるところは多いだろう。あまり話したこのない朝日でも、彼の話し方や身のこなしから「清廉の騎士」という名に恥じない人物だということは分かっていた。第二師団が襲撃された時も、かの騎士が神帝と共に助けに来てくれたことも知っている。だが、いくら魅力的な人間であったとしても、敵国の人間を、それも自分を唯一殺すことが出来る「神殺しの聖剣」の使い手を、無垢に愛せるものだろうか。
「お久ぶりです、朝日大佐。いえ、今は少将でしたか」
聞いたことのある声に朝日が我に返ると、軍服を纏った男がこちらに歩いてくるのが見えた。男は自分の同じ少将の軍服を身に付けており、手入れされた長い藍色の髪が歩くたびに揺れている。その深い群青を目にした事で、朝日は外征部隊として長い間宮に戻ってなかったためあやふやだった記憶が一気に蘇った。
「お久しぶりです。夏生少将」
朝日が敬礼をすると、夏生もにっこりと微笑んで敬礼を返した。
夏生と朝日は同期であり、軍学校でも共に机を囲んだ中である。代々優秀な将校を輩出してきた軍人華族である夏生と、ほぼ平民と変わらない弱小華族の出である朝日はそこまで親交があったわけではないが、長い付き合いがある分お互いのことは知っていた。
「陛下にお会いしたいのだが……会えないようですね」
「陛下は今他の方とお会いしております。出直して頂ければ」
朝日の言葉に、夏生は「いや、大丈夫ですよ」と気分を害した様子もなく朗らかに答えた。端正な顔立ちに甘い微笑みを浮かべる夏生は、とても軍人とは思えない柔和な雰囲気をしている。実際、華族の夜会で見かける夏生は、常に多くの女性に囲まれていることを朝日は知っていた。だが、その柔らかい笑みが夏生の本質ではないことも、付き合いの長い朝日は理解していた。
「この前は大変だったようですね。道中を襲われたと聞きましたが」
「ええ。ですが陛下に助けて頂きましたので。私も、私の部下たちも命は助かりました」
神帝に救われた日の光景は、今でも鮮烈に朝日の瞼に焼き付いている。死の眼前に現れた救いの天使の後ろ姿を、心を溶かすように微笑んだあの美しい横顔を、朝日は生涯忘れないだろう。
「それはよかった」と返事をした夏生の瞳に、一瞬剣呑な光が宿ったことに朝日は気付かなかった。
「そういえば、朝日大佐は神前試合には出るのですか」
「いえ、出たいのは山々なのですが、私はまだ腕の傷が完治しておりませんので。夏生少将こそ、神前試合に出られないのですか」
先程執務室に届けた書類は神前試合に出場する軍人をまとめたものだったが、その中には夏生の名前はなかった気がする。朝日の問いに、夏生は再び笑みを浮かべて頷いた。
「ええ、私の部隊は宮内の警護を任されていますし。それに――」
夏生は不意に朝日に顔を寄せると、小声で耳打ちした。
「私の願いは、神帝でも叶えられないものですから」
夏生の言葉に、一瞬朝日は背筋が冷える感覚を覚えた。
朝日は昔から夏生のことが苦手だった。この男の恐ろしい本質を、戦場を共にしたことのある朝日は知っている。人好きのする笑み優し気な話し方をするこの男は、その笑みを崩さなまいまま刀を振るう。何時通りに、当然のことのように、この男は他人の血を流せる。返り血だらけで微笑を浮かべるこの男を見た時、朝日は彼の本質を知ったのだ。
微かな恐怖を覚えた朝日の気持ちを知ってか知らずか、夏生はそのまま言葉を続ける。
「貴方は少し自分を律しすぎるところがある。せっかくの機会ですし、今回の神前試合でもう少しご自身の望みに素直になってみては如何ですか」
そう言った夏生は、励ます様に朝日の肩に手を置いた。朝日がその言葉に返答を返す前に、夏生は「それでは」と言って去っていく。遠ざかる夏生の背中を見送りながら、朝日はゆっくりと息を吐きだした。相変わらず捉えどころのない男だと思った。優し気な笑みの裏側で何を考えているのか、朝日には全く分からない。だが、彼の言葉は朝日という男をよく理解しているからこその言葉なのだろう。
自分の望み――
一瞬脳裏をよぎった美しい横顔を、振り払うように朝日は頭を振った。
ミュラメント聖国との調印式を行うと発表した日から一か月後、朝日が持ってきた山の様な書類を見て、執務室にいた祈里は思わず持っていた万年筆を落としそうになった。祈里の机は既に書類と様々な資料であふれ返っており、祈里からは机の向こうにいる朝日の姿が何とか目視できるといった程である。そんな祈里の様子に、朝日も申し訳なさそうな顔をして持ってきた書類を机に置いた。
ミュラメント聖国との条約を結びなおすと公式に発表した日から、宮内は火が点いた様な慌ただしさだった。文官は調印式の準備に追われ、武官はその警護と神前試合の準備に奔走している。勿論神帝である祈里の下にも、毎日のように式の確認やら指示が欲しいやらの書類が山の様に届き、目が回るような忙しさであった。神帝の副官として傍に仕えてくれている柊にもその一部を任せてはいるが、幾ら彼が優秀であったとしても二人だけでとてもこなせる量ではない。祈里はこの一ヶ月で信頼のおける文官をもっと傍に置いておくべきだったと何度も後悔した。
「お顔の色が悪いように見えますが、少しお休みになっては如何ですか」
書類を置いた朝日が心配そうに声をかけてくれたが、祈里は弱々しく微笑んで首を振った。ここ最近の激務で確かに憔悴しきっていたが、だからと言って今自分が休むわけにはいかなかった。
「ありがとう。だが、これはこの国が大きく変わる転機になるんだ。私も神帝として出来る限りのことをしないと」
祈里の言葉に、朝日は何かを言いかけたが、一瞬の逡巡の後に言葉を飲み込んだ。ここ二カ月余りの時間を祈里の傍で過ごした朝日は、祈里が意外と頑固なことを知っているのだ。
朝日が祈里に忠誠を誓ったあの日から、朝日は警護武官として祈里の傍にいることになった。神性の力によってあらゆる攻撃を受け付けない神帝には、通常警護の武官が付くことはない。だが、また祈里が一人で無茶をしないようにと柊が朝日を傍に置くよう進言してきたのだ。その柊の提案を、朝日は願ってもないことだと嬉々として受け入れた。
誰にも知られないよう隠しているが、「神殺しの聖剣」に貫かれ神性を失っている祈里にとってそれはありがたいことであった。だが朝日は先日の襲撃事件により左腕を負傷していた為、祈里はせめて腕の傷が治るまでは休暇を取ってはどうかと朝日に伝えた。しかし朝日は『仕事をしていない方がストレスで治りが遅くなります』とかたくなに首を縦に振ろうとはしなかった。実際に彼の回復力は凄まじく、今では腕を吊っていた包帯もせずに過ごせる程になっていた。
祈里が再び目の前の書類たちと格闘していると、ノック音の後に夜月が「失礼いたします」と執務室に入ってきた。
「約束の方が参りました」
「ああ、入れてくれ」
この執務室を訪れることが出来るのは、祈里が呼び出した者かごく一部の信頼が置ける者だけだ。今日約束をしているのは一人しかいない。祈里が返事をすると、夜月に連れられて一人の男が入ってくる。青と銀の騎士服に身を包んだ美丈夫――クリスだ。
「失礼いたします」
クリスは流れるような動作で騎士の略礼をした。相変わらず所作の一つ一つまで洗練された動きだ。祈里が思わず見惚れていると、祈里の傍に立っていた朝日の腕が僅かに動いて外套を揺らした。朝日の表情は僅かに強張っているように見える。目で確認することは出来ないが、恐らく外套の中では刀に手を添えているのだろう。帝国に忠節を尽くす朝日にとって、クリスは敵とまでは言わなくとも警戒の対象なのだ。
「来てくれてありがとう。私から出向こうとも思ったんだが、この通り色々と手が離せなくて」
祈里がそう言うと、クリスは「いいえ」と首を振った。素っ気ない返事だが、特に祈里に対して嫌悪を抱いている様子ではない。クリスの穏やかな表情に、祈里は人知れずホッとした。
「朝日、少し二人にしてくれ」
祈里が朝日に向かってそう言うと、朝日は「ですが……」と戸惑った表情をした。朝日は横目でクリスが腰に下げている二本の剣を見る。一本は大陸で一般的に使われている鋼製の直剣。そしてもう一本は銀製の『神殺しの聖剣』である。神帝に致命傷を与えられる、この世で唯一の武器だ。朝日がクリスを警戒するのも無理はない。
「朝日、彼は大丈夫だ」
祈里が朝日に向かってそう言うと、朝日は一瞬驚いた表情をして、静かな声で「分かりました」と返事をした。
祈里にはそう言える確信があった。クリスが祈里に剣を向けるのは、祈里が暴君として道を違えた時だけだ。祈里が誠実である限り、クリスはそれに答えてくれる。この間の襲撃事件で、クリスが祈里に助太刀をしてくれたことがそれを証明していた。
朝日は部屋から出ていく時に一瞬警戒するようにクリスを見たが、そのまま何も言わずに部屋から出ていった。夜月もそれに続いて、礼をした後に静かに退室した。
祈里はクリスに「座ってくれ」とソファを指した。祈里もクリスの正面に腰を下ろす。透き通るような碧眼にじっと見詰められ、祈里は思わず目を逸らした。二人きりになったことを意識すると、急に緊張してしまう。祈里は出来るだけ冷静に喋ることを意識して口を開いた。
「もう知っていると思うが、ミュラメント聖国と調印式を行うことになった。式の時にはクリスにも協力して欲しい」
祈里の言葉に、クリスは「勿論です」と頷いた。
この願いは、ミュラメント聖国から訪れる使者との会談や、調印式ではクリスも同席していた方が相手も安心するだろうと思ってのことであった。協力的なクリスの返事に安堵しつつ、祈里はクリスをこの場に呼んだ本当の目的を伝えた。
「それと調印式に合わせて行われる神前試合だが、クリスも参加して欲しい」
祈里がそう言うと、クリスは少し意外そうな表情をした。
「私が参加してもよろしいのですか?」
「ああ、神の前ではみな平等で、国籍も身分も問わず戦うことが出来る。それに神前試合は神の前で宣誓を行う神聖なものだ。勝者には願いを叶える権利が与えられる。どんな望みであろうと、神帝である私はその願いを実現させる義務を負う。勿論――」
一度言葉を切った祈里は、クリスを見詰めて強調するように言葉を続けた。
「その願いがどんなものでも、帝国は決して宣誓を破らない。例えその願いが、帝国にとって不利になるものだとしても」
遠回りな言い方だが、敏いクリスはきっと祈里の言葉の意味を分かってくれるだろうと思った。祈里はクリスにこう言いたかったのだ。『もしクリスが勝者となり、その願いとしてミュラメント聖国に帰ることを望んでも、帝国はそれを全面的に認める』と。
時間が巻き戻ってから、祈里はずっとクリスを母国に帰してあげる方法を探していた。クリスは表向きには帝国に滞在している聖国の使者だが、実質は聖国に条約を守らせるための人質である。それは今回の調印式で条約を結びなおしても、覆すことは出来ない絶対的な条件として定められていることであった。だが、この神前試合でクリスが勝利し国に帰ることを望めば、条約は守られつつも、クリスは国に帰ることが出来る。
祈里が出来るだけ距離を置こうとしているクリスをわざわざ執務室まで呼び出したのは、クリスにそのことを伝えるためであった。
「……分かりました」
祈里の言葉に、クリスは短く返事をした。納得したようなクリスの表情に、祈里は言いたかったことが伝わったらしいことを知って胸を撫で下ろした。帝国にも優秀な武人が多くいるが、クリスも伊達に聖剣に選ばれた清廉の騎士と呼ばれている訳ではない。大局的にミュラメント聖国は帝国に敗れたが、クリスが率いていた部隊だけは無敗を謳われるほどの強さであり、その武勇は大陸中に知れ渡っている。そのクリスならば、この神前試合でも十分に勝機はあるはずだ。
「話は以上だ。来てくれて助かったよ」
祈里がそう言うと、クリスは静かに立ち上がった。祈里もクリスを送ろうと立ち上がったが、その刹那に目の前が真っ白になった。祈里がバランスを崩して倒れそうになると、横から力強い腕に引っ張られた。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ。すまない」
祈里が礼を言いながら瞬きをすると、視界が少しずつ色付いてくる。クリスに抱きかかえられるように支えられていることに気付いた祈里は、思わずさっと身を引いた。
「また、あまり眠れていないのですか」
クリスの言葉に、祈里は曖昧な笑みを浮かべた。クリスの言う通りだったのだ。ここ最近祈里が憔悴していたのは、激務に追われていたことだけが理由ではない。再びあの悪夢を見るようになってきたのだ。天門結界を維持する代わりに命を削られていく、あの悪夢を。
祈里の笑みを見たクリスは、不意に自分の首の後ろに手を回し、その手を祈里に差し出した。その手に乗っていたのは、銀で出来ている細かい装飾の施されたネックレスだった。星のような形の小さな飾りがついており、よく見るとその内側が網の様になっていた。
「私の国のお守りです。悪い夢を捕まえる力があると言われています」
祈里は差し出されたネックレスとクリスの顔を交互に見詰めた。祈里にくれるということなのかもしれないが、そのまま受け取るにも気が引けた。
「でも、クリスの大切なものじゃないのか」
「今は私より、貴方に必要なものでしょうから」
そう言ったクリスは差し出した手を引く様子がない。祈里はいつになく頑固な様子のクリスに戸惑ったが、ここで断るのも違う気がしたので受け取ることにした。
「ありがとう」
祈里がネックレスを受け取ると、クリスはほんの少しだけ微笑んだ。手に持ったネックレスは、ついさっきまで身に付けていたクリス温もりが微かに残っており、祈里は頬が熱くなった。クリスが身に付けていたものを貰えるなんて、悪夢を捕まえるだけではなく色々なお守りになってくれそうだ。
大切にしようと祈里がネックレスを眺めていると、その様子を見ていたクリスが不意に言った。
「陛下は、私のどこが好きなのですか?」
「え……、えっ!?」
クリスの突然の質問に、祈里は熱くなった頬を更に赤く染めた。どうしてそんな質問をという疑問と、自分の好意を知られている羞恥心が頭を駆け巡る。混乱して上手く返事が出来ない祈里は、真っ赤な顔でもごもごと口を動かすことしか出来なかった。
「ど、どこって……」
「よく考えてみて下さい」
返事が出来ない祈里とは対照的に、クリスは至って冷静な表情をしていた。祈里が答えられないことも気にしていない様子で、言葉を続ける。
「私の何が好きだったのか、今の貴方に答えられますか」
「……?」
クリスの言葉に、祈里は首を傾げた。クリスが何を言いたいのか、祈里には全く分からなかった。
「どういう……意味?」
クリスの言葉は、まるで祈里のクリスへの恋情が偽物だとでも言っているようだった。祈里にはクリスが祈里の気持ちを諭す理由も、どんな意図で祈里にこんなことを聞いたのかも、全く分からなかった。
聞き返した祈里にクリスは何も言わず、どこか寂し気に微笑んだだけだった。
***
執務室から出てきた朝日は、そのまま扉の前を塞ぐようにして待機していた。同室することは許されずとも、神帝の護衛として傍を離れる訳にいかない。
朝日とて、神帝と騎士の噂を知らない訳ではない。戦うことにしか眼中になかったあの神帝が、唯一興味を持った人間だと。しかも、毎夜部屋に呼ぶほどの執着ぶりだったという。神帝が執着という如何にも人間的感情を持っていたことに、みな驚愕したであろう。そして、神の肉体に肉欲があった事にも。だが、神帝が敵国の人間と共に夜を過ごしても、誰も神帝の行いに異議を唱えることはしない。何故なら、神の行いは全て正しいからだ。
朝日もずっとそう考えていた。きっと神帝には自分たちには理解できない理由で、あの騎士に執着する必要があるのだろうと。だが、先ほどの光景を見てしまった朝日は、そんな自分の考えは間違っていたのかもしれないと気付いた。
騎士が入ってきた瞬間、神帝の雰囲気が一瞬変わったことに朝日は気付いていた。神帝の表情は変わらずとも、あの青い騎士を見る目には熱が籠っていた。まるで、その男に恋をしているかのように。確かに、あの騎士には惹かれるところは多いだろう。あまり話したこのない朝日でも、彼の話し方や身のこなしから「清廉の騎士」という名に恥じない人物だということは分かっていた。第二師団が襲撃された時も、かの騎士が神帝と共に助けに来てくれたことも知っている。だが、いくら魅力的な人間であったとしても、敵国の人間を、それも自分を唯一殺すことが出来る「神殺しの聖剣」の使い手を、無垢に愛せるものだろうか。
「お久ぶりです、朝日大佐。いえ、今は少将でしたか」
聞いたことのある声に朝日が我に返ると、軍服を纏った男がこちらに歩いてくるのが見えた。男は自分の同じ少将の軍服を身に付けており、手入れされた長い藍色の髪が歩くたびに揺れている。その深い群青を目にした事で、朝日は外征部隊として長い間宮に戻ってなかったためあやふやだった記憶が一気に蘇った。
「お久しぶりです。夏生少将」
朝日が敬礼をすると、夏生もにっこりと微笑んで敬礼を返した。
夏生と朝日は同期であり、軍学校でも共に机を囲んだ中である。代々優秀な将校を輩出してきた軍人華族である夏生と、ほぼ平民と変わらない弱小華族の出である朝日はそこまで親交があったわけではないが、長い付き合いがある分お互いのことは知っていた。
「陛下にお会いしたいのだが……会えないようですね」
「陛下は今他の方とお会いしております。出直して頂ければ」
朝日の言葉に、夏生は「いや、大丈夫ですよ」と気分を害した様子もなく朗らかに答えた。端正な顔立ちに甘い微笑みを浮かべる夏生は、とても軍人とは思えない柔和な雰囲気をしている。実際、華族の夜会で見かける夏生は、常に多くの女性に囲まれていることを朝日は知っていた。だが、その柔らかい笑みが夏生の本質ではないことも、付き合いの長い朝日は理解していた。
「この前は大変だったようですね。道中を襲われたと聞きましたが」
「ええ。ですが陛下に助けて頂きましたので。私も、私の部下たちも命は助かりました」
神帝に救われた日の光景は、今でも鮮烈に朝日の瞼に焼き付いている。死の眼前に現れた救いの天使の後ろ姿を、心を溶かすように微笑んだあの美しい横顔を、朝日は生涯忘れないだろう。
「それはよかった」と返事をした夏生の瞳に、一瞬剣呑な光が宿ったことに朝日は気付かなかった。
「そういえば、朝日大佐は神前試合には出るのですか」
「いえ、出たいのは山々なのですが、私はまだ腕の傷が完治しておりませんので。夏生少将こそ、神前試合に出られないのですか」
先程執務室に届けた書類は神前試合に出場する軍人をまとめたものだったが、その中には夏生の名前はなかった気がする。朝日の問いに、夏生は再び笑みを浮かべて頷いた。
「ええ、私の部隊は宮内の警護を任されていますし。それに――」
夏生は不意に朝日に顔を寄せると、小声で耳打ちした。
「私の願いは、神帝でも叶えられないものですから」
夏生の言葉に、一瞬朝日は背筋が冷える感覚を覚えた。
朝日は昔から夏生のことが苦手だった。この男の恐ろしい本質を、戦場を共にしたことのある朝日は知っている。人好きのする笑み優し気な話し方をするこの男は、その笑みを崩さなまいまま刀を振るう。何時通りに、当然のことのように、この男は他人の血を流せる。返り血だらけで微笑を浮かべるこの男を見た時、朝日は彼の本質を知ったのだ。
微かな恐怖を覚えた朝日の気持ちを知ってか知らずか、夏生はそのまま言葉を続ける。
「貴方は少し自分を律しすぎるところがある。せっかくの機会ですし、今回の神前試合でもう少しご自身の望みに素直になってみては如何ですか」
そう言った夏生は、励ます様に朝日の肩に手を置いた。朝日がその言葉に返答を返す前に、夏生は「それでは」と言って去っていく。遠ざかる夏生の背中を見送りながら、朝日はゆっくりと息を吐きだした。相変わらず捉えどころのない男だと思った。優し気な笑みの裏側で何を考えているのか、朝日には全く分からない。だが、彼の言葉は朝日という男をよく理解しているからこその言葉なのだろう。
自分の望み――
一瞬脳裏をよぎった美しい横顔を、振り払うように朝日は頭を振った。
0
あなたにおすすめの小説
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
【完結】下級悪魔は魔王様の役に立ちたかった
ゆう
BL
俺ウェスは幼少期に魔王様に拾われた下級悪魔だ。
生まれてすぐ人との戦いに巻き込まれ、死を待つばかりだった自分を魔王様ーーディニス様が助けてくれた。
本当なら魔王様と話すことも叶わなかった卑しい俺を、ディニス様はとても可愛がってくれた。
だがそんなディニス様も俺が成長するにつれて距離を取り冷たくなっていく。自分の醜悪な見た目が原因か、あるいは知能の低さゆえか…
どうにかしてディニス様の愛情を取り戻そうとするが上手くいかず、周りの魔族たちからも蔑まれる日々。
大好きなディニス様に冷たくされることが耐えきれず、せめて最後にもう一度微笑みかけてほしい…そう思った俺は彼のために勇者一行に挑むが…
白花の檻(はっかのおり)
AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。
その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。
この出会いは祝福か、或いは呪いか。
受け――リュシアン。
祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。
柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。
攻め――アーヴィス。
リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。
黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。
王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。
青龍将軍の新婚生活
蒼井あざらし
BL
犬猿の仲だった青辰国と涼白国は長年の争いに終止符を打ち、友好を結ぶこととなった。その友好の証として、それぞれの国を代表する二人の将軍――青龍将軍と白虎将軍の婚姻話が持ち上がる。
武勇名高い二人の将軍の婚姻は政略結婚であることが火を見るより明らかで、国民の誰もが「国境沿いで睨み合いをしていた将軍同士の結婚など上手くいくはずがない」と心の中では思っていた。
そんな国民たちの心配と期待を背負い、青辰の青龍将軍・星燐は家族に高らかに宣言し母国を旅立った。
「私は……良き伴侶となり幸せな家庭を築いて参ります!」
幼少期から伴侶となる人に尽くしたいという願望を持っていた星燐の願いは叶うのか。
中華風政略結婚ラブコメ。
※他のサイトにも投稿しています。
【完結】《BL》溺愛しないで下さい!僕はあなたの弟殿下ではありません!
白雨 音
BL
早くに両親を亡くし、孤児院で育ったテオは、勉強が好きだった為、修道院に入った。
現在二十歳、修道士となり、修道院で静かに暮らしていたが、
ある時、強制的に、第三王子クリストフの影武者にされてしまう。
クリストフは、テオに全てを丸投げし、「世界を見て来る!」と旅に出てしまった。
正体がバレたら、処刑されるかもしれない…必死でクリストフを演じるテオ。
そんなテオに、何かと構って来る、兄殿下の王太子ランベール。
どうやら、兄殿下と弟殿下は、密な関係の様で…??
BL異世界恋愛:短編(全24話) ※魔法要素ありません。※一部18禁(☆印です)
《完結しました》
ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!
ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!?
「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??
【8話完結】恋愛を諦めたおじさんは、異世界で運命と出会う。
キノア9g
BL
恋愛を諦め、ただ淡々と日々を過ごしていた笠原透(32)。
しかし、ある日突然異世界へ召喚され、「王の番」だと告げられる。
迎えたのは、美しく気高い王・エルヴェル。
手厚いもてなしと優しさに戸惑いながらも、次第に心を揺さぶられていく透。
これは、愛を遠ざけてきた男が、本当のぬくもりに触れる物語。
──運命なんて、信じていなかった。
けれど、彼の言葉が、ぬくもりが、俺の世界を変えていく。
全8話。
中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと
mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36)
低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。
諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。
冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。
その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。
語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる