学園都市とエレメント

はすなり

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第1章

エレメントと初日

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エレメントという力がある。その名が示す通り自然界の成分を自分の意のままに操れる力である。

例えば火を生み出し操ったり、水を生み出し操ったり。
程度は十人十色じゅうにんといろであり、同じ火を扱う力でも、肉を焼く程度の火も起こせない者もいれば、一瞬で山を焼き尽くしてしまう程の火を扱う者もいる。

この現代では、エレメントを少しでも扱えるものは全人類の8割を超え、世間的には日常生活において便利な力、という認識がされている。
しかしその中でも特にエレメントの扱いにけている上級者、そしてエレメントを用いて戦う者を『成分保持者エレメントホルダー』と呼ぶー。

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学園長と話した翌日の朝、オレは学園へ向かう準備をしていた。
島に到着した2日後には新学期が始まるというギリギリのスケジュールを組まされていたのだ。
ある程度地形の把握などの視察もしたかったのだが、文句を言ってもしょうがないだろう。

「寮なら学園の生徒の誰かとすれ違うかと思ったが…」

学園の寮はいくつかあり、オレが住んでいるところはその一つなのだが、どうやら他に生徒は住んでいないようだ。
この辺りは景子けいこの配慮なのかもしれない。部屋自体も4部屋程しかない小さめの寮である。

「さて、行くか」

真新しい制服に身を通したオレは、これから始まる生活に胸を弾ませー。と言いたいところだが、そうも言ってられない状況に若干憂鬱になりながら自宅を出るのだった。


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「オレのクラスは2年Aクラスか」

景子けいこから事前に聞いていたクラスへ学園内の地図を頼りに向かう。
オレのイメージでは、このような編入はまず職員室へ行き、担任と合流し一緒に入場…のような流れかと思っていたがどうやら違うようだ。

クラスへ到着し教室に入ると、既にある程度の生徒が揃っており、各々おのおの友人達と雑談をしているようだった。
この謎にアウェーな空気を勝手に感じつつ、自分の席を探していると、自由に座って待っていろ。と書いてある黒板が目に入った。
これが常識なのか、それともとても攻撃的な担任の仕業なのか判断しかねるところだ。

(自由に座れ、という事なら一番近い適当な席に座るか)

席についたオレはホームルーム開始までまだ多少の猶予ゆうよがあったため、その時間を使い辺りを観察してみることにした。
如何いかなるところでも情報収集は基本である。
初めは、転入生ということもあり、教室に入った時は物珍しい目で見られると思っていたがそんなことは全くなかった。
各学年の人数などは聞いていないが、これだけの規模の土地だ。恐らく一年間という短い間では未だ知らない顔がいても不思議ではないのだろう。
この様子だと転入生がいることすら知らされていなさそうだ。

一通り見回していると、オレと同じように1人で席に座り、物憂げそうに窓の外を見つめる少女が目に入った。
1つ違うのは周りから好奇の様な目で見られているという事だろうか。
内容までは聞き取れないが各方面から噂話をしているような雰囲気も漂っていた。

(あまり気持ちのいい光景じゃないが…)

しかし、少女はそんなことはつゆ知らずといった態度をしていた。
改めて目を向けてみると、日系…のような顔立ちにも見えなくもないが、明らかに外国籍の血が入っているだろうという、ボブくらいの長さで少し明るめの綺麗なブロンズ色の髪の毛が目立っていた。
ハーフか、もしかするとクォーターとかなのだろうか。
オレからの角度では横顔しか見えないが、綺麗と可愛いは共存できるのか、と思わせるような顔立ちで、成程、この容姿では良い意味で噂されるには充分だろうと感じさせられてしまった。

なんてことを考えていると、ふと少女の視線がこちらに向けられた。

(しまった、ジロジロ見ていて気持ち悪がられただろうか。申し訳ない。オレも人のことは言えないな)

実際にはまじまじと見つめていたわけでもなく視界の端に捉える程度(既にその時点で若干気持ち悪いのだが)だった為、気づかれるとは思っていなかった。
とはいえ、不快感を与えてしまったなら謝罪と反省は必要だ。心の中で。
ここで話しかける勇気なんてものはオレには無い。

そんなことを少女は知ってか知らずか、不快感も笑顔も表すことなく、数瞬だけこちらを見た後再び視線を窓の外に戻した。

(なんだったんだ?)

少女の行動に納得できる答えを導こうとしたが、その思考は始業のチャイムに遮られた。
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