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披露宴会場となった中庭は、もはや貴族の集まりとは思えない熱気に包まれていました。
ドレスの裾をまくり上げた令嬢たちが、口の周りをテカテカに光らせて唐揚げを競り合い、老侯爵たちが「この脂身こそが人生の深みだ」と熱弁を振るっています。
そんな中、会場の中央に、ついに「それ」が運ばれてきました。
「皆様、ご注目ください! これぞノースランド公国が世界に誇る、究極位のウェディング・ポテトケーキですわ!」
私の宣言とともに、布が取り払われました。
そこに現れたのは、甘いクリームのデコレーションではなく、幾層にも積み上げられた黄金色のハッシュドポテトの土台。
その周囲を、カリカリに揚げられた一口サイズのメンチカツが囲み、頂点にはリュカオンから届いたジャガイモの最高級マッシュポテトで作られた「新郎新婦の像」が鎮座していました。
仕上げに、上から濃厚なチーズソースが滝のように流し込まれています。
最初に叫んだのは、なんと大公妃ヒルデガルド様でした。
彼女は手に持ったジョッキ(中身は強炭酸の果実水)を高く掲げ、頬を赤らめてこちらへ歩み寄ってきました。
「カナタさん、貴女って人は……! これよ、これこそが私が失いかけていた情熱の形だわ!」
「ヒルデガルド様、もしや少し飲みすぎでは……?」
「実はね、白状するわ。私も若い頃、王宮の裏門を抜け出しては、下町の串焼き屋に通い詰めていたのよ」
「ええっ!?」
オズワルド様と私、そして周囲の貴族たちが一斉に驚愕の声を上げました。
「あだ名は『串打ちのヒルダ』。当時は、一度に五本の串を同時に食べるのが特技だったの。でも、大公妃という立場になって、その過去を封印して、味のしないスープで自分を偽ってきたわ」
ヒルデガルド様は、どこか遠い目をして笑いました。
「でも、今日確信したわ。油は、世代を超えるのね。さあ、カナタ。そのケーキ、早く切りなさい! 私の胃袋が、もう我慢の限界よ!」
「承知いたしました、お義母様!」
私はオズワルド様と手を取り合い、大きなナイフではなく、特製の「特大フライ返し」を手に取りました。
「オズワルド様、準備はいいですか? 一番下の、一番カリカリしている部分を狙ってください!」
「任せてくれ。我が家の伝統は、今日からこの油の熱と共に刻まれる」
二人の力が合わなり、ハッシュドポテトの城壁にフライ返しが突き立てられました。
サクッ、ザクッ!!
耳に心地よい破壊音が響き、中から熱々の肉汁とチーズが溢れ出しました。
「「「おおおおおおおっ!!!」」」
沸き起こる歓声。
私たちは最初の一切れを皿に取り、お互いの口へと運びました。
「美味しい……。」
「ああ、最高だ。」
口の中に広がる、ジャガイモの素朴な甘みと、暴力的なまでの脂の旨味。
かつての私が妃教育で学んだ「上品なデザート」の味なんて、もう思い出せません。
今、この瞬間を共有している全員の笑顔が、何よりも輝いて見えました。
「カナタ。」
オズワルド様が、私の耳元で囁きました。
「明日から、私たちの人生は、もっともっと脂っこくなるぞ。覚悟はいいか?」
「ええ。胃薬の準備なら、一生分済ませてありますわ!」
私は彼の胸に飛び込み、油の匂いが染み付いたドレスと共に、幸せな笑い声を上げました。
披露宴は夜更けまで続き、城下町までニンニクの香りが漂ったその日は、後に「ノースランド黄金の夜」として、歴史に深く刻まれることになったのでした。
ドレスの裾をまくり上げた令嬢たちが、口の周りをテカテカに光らせて唐揚げを競り合い、老侯爵たちが「この脂身こそが人生の深みだ」と熱弁を振るっています。
そんな中、会場の中央に、ついに「それ」が運ばれてきました。
「皆様、ご注目ください! これぞノースランド公国が世界に誇る、究極位のウェディング・ポテトケーキですわ!」
私の宣言とともに、布が取り払われました。
そこに現れたのは、甘いクリームのデコレーションではなく、幾層にも積み上げられた黄金色のハッシュドポテトの土台。
その周囲を、カリカリに揚げられた一口サイズのメンチカツが囲み、頂点にはリュカオンから届いたジャガイモの最高級マッシュポテトで作られた「新郎新婦の像」が鎮座していました。
仕上げに、上から濃厚なチーズソースが滝のように流し込まれています。
最初に叫んだのは、なんと大公妃ヒルデガルド様でした。
彼女は手に持ったジョッキ(中身は強炭酸の果実水)を高く掲げ、頬を赤らめてこちらへ歩み寄ってきました。
「カナタさん、貴女って人は……! これよ、これこそが私が失いかけていた情熱の形だわ!」
「ヒルデガルド様、もしや少し飲みすぎでは……?」
「実はね、白状するわ。私も若い頃、王宮の裏門を抜け出しては、下町の串焼き屋に通い詰めていたのよ」
「ええっ!?」
オズワルド様と私、そして周囲の貴族たちが一斉に驚愕の声を上げました。
「あだ名は『串打ちのヒルダ』。当時は、一度に五本の串を同時に食べるのが特技だったの。でも、大公妃という立場になって、その過去を封印して、味のしないスープで自分を偽ってきたわ」
ヒルデガルド様は、どこか遠い目をして笑いました。
「でも、今日確信したわ。油は、世代を超えるのね。さあ、カナタ。そのケーキ、早く切りなさい! 私の胃袋が、もう我慢の限界よ!」
「承知いたしました、お義母様!」
私はオズワルド様と手を取り合い、大きなナイフではなく、特製の「特大フライ返し」を手に取りました。
「オズワルド様、準備はいいですか? 一番下の、一番カリカリしている部分を狙ってください!」
「任せてくれ。我が家の伝統は、今日からこの油の熱と共に刻まれる」
二人の力が合わなり、ハッシュドポテトの城壁にフライ返しが突き立てられました。
サクッ、ザクッ!!
耳に心地よい破壊音が響き、中から熱々の肉汁とチーズが溢れ出しました。
「「「おおおおおおおっ!!!」」」
沸き起こる歓声。
私たちは最初の一切れを皿に取り、お互いの口へと運びました。
「美味しい……。」
「ああ、最高だ。」
口の中に広がる、ジャガイモの素朴な甘みと、暴力的なまでの脂の旨味。
かつての私が妃教育で学んだ「上品なデザート」の味なんて、もう思い出せません。
今、この瞬間を共有している全員の笑顔が、何よりも輝いて見えました。
「カナタ。」
オズワルド様が、私の耳元で囁きました。
「明日から、私たちの人生は、もっともっと脂っこくなるぞ。覚悟はいいか?」
「ええ。胃薬の準備なら、一生分済ませてありますわ!」
私は彼の胸に飛び込み、油の匂いが染み付いたドレスと共に、幸せな笑い声を上げました。
披露宴は夜更けまで続き、城下町までニンニクの香りが漂ったその日は、後に「ノースランド黄金の夜」として、歴史に深く刻まれることになったのでした。
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