14 / 23
姉として
しおりを挟む
東の空から、うっすらと朝日が昇り始めている。
あんな話を聞いてしまったせいで、結局この日はあまり眠れなかった。
嫁入りってことは……いよいよ、私はあの織田信長の妻になるのか。
おいおいそうなるってことは分かっちゃいたけど、まさかこんなに早いとは……この斎藤家の家族と、もう離ればなれになるのは寂しいなぁ……
「……姉上? もう起きていたのですか?」
「……お蜜ちゃん。ごめんね、起こしちゃった?」
「いえ、私も朝は早いので……皆が起きる前に、軽く運動するのが日課になっていまして」
お蜜ちゃんは軽く伸びをしてから、寝巻姿のまま庭に出て軽い運動をはじめた。
「……やはり、落ち着いてはいられないんです。殿方達が戦場で、この美濃を守るために戦っていることを思うと……私がこんなことをしたところで、自己満足以外の何も得られないのが歯痒いのですが……」
「……大丈夫、きっと皆無事に帰ってくるよ。だからさ、私達は帰ってきた人を笑顔で出迎えてあげよう」
お蜜ちゃんは、優しい子だ。だから戦に出た人達のことが心配で心配でたまらないんだろう。
私が嫁入りすることでこの戦を終わらせられるなら……私は、喜んで『駒』になるよ。
「おはようございます、帰蝶おねえさま」
「おはよーございます! きちょうねーさま!」
「うん、お早う。お貴ちゃん、お幸ちゃん。今日も1日頑張ろうね?」
「「はーい!」」
あぁ……可愛い妹達と会えるのも、もう今日が最後なのかなぁ……こっちに来てまだ1ヶ月も経ってないけど、心が折れずに過ごす事が出来たのは、小見さんやこの子達が支えてくれたからだし……もし、嫁入りして皆と離ればなれになったら私……
「……おねえさま? どうしたのですか?」
「……へ? どうって……」
「ねーさま、泣きそうだよ? 泣かないで?」
……ホントだ。いつの間にか涙目になってる。
いや、だってしょうがないじゃん。1ヶ月かけてようやく斎藤家の皆と仲良くなれて、ここから本当の家族みたいになれたらって時に……誰も知り合いがいない場所に行かされるなんて……
「……ダメだなぁ、私。いつまでもこんな調子じゃこの時代で生き残れるわけないのに……」
畜生、今まで大好きだった戦国時代が大嫌いになりそうだ。自分の生き方を好きに決められる現代が、どれだけ恵まれた世界かを思い知るよ。
「おねえさま……なかないでください」
「……お貴ちゃん? どうしたの、急に抱きついてきて……」
「……わたしも」
「……お幸ちゃんまで……」
「……わたしたちがないてたとき、かあさまはこうしてくれました」
「だからわたしたちも、ねーさまにこうしてあげる。……だからなきやんで?」
……あぁ、本当にこの子達はいい子だ。体は私よりもずっと小さいのに、その懐はとても大きくて……暖かいや。
「……ありがと、もう泣かないよ。私はお姉ちゃんだもん、いつまでも妹に慰められるわけにはいかないよね」
「……はいっ、おねえさまはわたしたちのじまんのねえさまです!」
「ちょっとおばかだけど、いっつもあかるくてやさしいねーさまがわたしたちだいすきだよ!」
「うん。お馬鹿はちょっと傷つくかな? でもありがとね、2人も私の自慢の妹だよ」
その私の言葉に、2人は満面の笑みを返してくれた。
この2人にとって、帰蝶はちょっとお馬鹿でも自慢の姉なんだ。
それなら私も、この2人の自慢の姉であり続けなきゃいけない。
私はもう『帰蝶』なんだから、その立場に応じた責任を背負わなきゃいけないんだ。
「……姉上、父上と母上がお呼びのようです」
「お蜜ちゃん……うん、分かったよ」
「姉上……さっき泣いていたのは、もしかしてこのことを」
「お蜜ちゃん、妹達を宜しくね」
「……はい……」
お蜜ちゃんは、なんとなく察しちゃったか。
それでも、最後は笑って送り出してくれているあたりは流石だなぁ。
きっとあの子はいいお嫁さんになるよ、間違いないね。
……さて、3人の妹に笑顔で見送られた以上、私も逃げるわけにはいかない。
この家の長女としての責任は、果たさなきゃいけないんだ。
あんな話を聞いてしまったせいで、結局この日はあまり眠れなかった。
嫁入りってことは……いよいよ、私はあの織田信長の妻になるのか。
おいおいそうなるってことは分かっちゃいたけど、まさかこんなに早いとは……この斎藤家の家族と、もう離ればなれになるのは寂しいなぁ……
「……姉上? もう起きていたのですか?」
「……お蜜ちゃん。ごめんね、起こしちゃった?」
「いえ、私も朝は早いので……皆が起きる前に、軽く運動するのが日課になっていまして」
お蜜ちゃんは軽く伸びをしてから、寝巻姿のまま庭に出て軽い運動をはじめた。
「……やはり、落ち着いてはいられないんです。殿方達が戦場で、この美濃を守るために戦っていることを思うと……私がこんなことをしたところで、自己満足以外の何も得られないのが歯痒いのですが……」
「……大丈夫、きっと皆無事に帰ってくるよ。だからさ、私達は帰ってきた人を笑顔で出迎えてあげよう」
お蜜ちゃんは、優しい子だ。だから戦に出た人達のことが心配で心配でたまらないんだろう。
私が嫁入りすることでこの戦を終わらせられるなら……私は、喜んで『駒』になるよ。
「おはようございます、帰蝶おねえさま」
「おはよーございます! きちょうねーさま!」
「うん、お早う。お貴ちゃん、お幸ちゃん。今日も1日頑張ろうね?」
「「はーい!」」
あぁ……可愛い妹達と会えるのも、もう今日が最後なのかなぁ……こっちに来てまだ1ヶ月も経ってないけど、心が折れずに過ごす事が出来たのは、小見さんやこの子達が支えてくれたからだし……もし、嫁入りして皆と離ればなれになったら私……
「……おねえさま? どうしたのですか?」
「……へ? どうって……」
「ねーさま、泣きそうだよ? 泣かないで?」
……ホントだ。いつの間にか涙目になってる。
いや、だってしょうがないじゃん。1ヶ月かけてようやく斎藤家の皆と仲良くなれて、ここから本当の家族みたいになれたらって時に……誰も知り合いがいない場所に行かされるなんて……
「……ダメだなぁ、私。いつまでもこんな調子じゃこの時代で生き残れるわけないのに……」
畜生、今まで大好きだった戦国時代が大嫌いになりそうだ。自分の生き方を好きに決められる現代が、どれだけ恵まれた世界かを思い知るよ。
「おねえさま……なかないでください」
「……お貴ちゃん? どうしたの、急に抱きついてきて……」
「……わたしも」
「……お幸ちゃんまで……」
「……わたしたちがないてたとき、かあさまはこうしてくれました」
「だからわたしたちも、ねーさまにこうしてあげる。……だからなきやんで?」
……あぁ、本当にこの子達はいい子だ。体は私よりもずっと小さいのに、その懐はとても大きくて……暖かいや。
「……ありがと、もう泣かないよ。私はお姉ちゃんだもん、いつまでも妹に慰められるわけにはいかないよね」
「……はいっ、おねえさまはわたしたちのじまんのねえさまです!」
「ちょっとおばかだけど、いっつもあかるくてやさしいねーさまがわたしたちだいすきだよ!」
「うん。お馬鹿はちょっと傷つくかな? でもありがとね、2人も私の自慢の妹だよ」
その私の言葉に、2人は満面の笑みを返してくれた。
この2人にとって、帰蝶はちょっとお馬鹿でも自慢の姉なんだ。
それなら私も、この2人の自慢の姉であり続けなきゃいけない。
私はもう『帰蝶』なんだから、その立場に応じた責任を背負わなきゃいけないんだ。
「……姉上、父上と母上がお呼びのようです」
「お蜜ちゃん……うん、分かったよ」
「姉上……さっき泣いていたのは、もしかしてこのことを」
「お蜜ちゃん、妹達を宜しくね」
「……はい……」
お蜜ちゃんは、なんとなく察しちゃったか。
それでも、最後は笑って送り出してくれているあたりは流石だなぁ。
きっとあの子はいいお嫁さんになるよ、間違いないね。
……さて、3人の妹に笑顔で見送られた以上、私も逃げるわけにはいかない。
この家の長女としての責任は、果たさなきゃいけないんだ。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる