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17.夢だとしても*
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大賢者との行為が記憶に残らない代わりに、なぜかヴィルヘルムに抱かれる夢を見るこの謎のメカニズムは、まだ解明できていない。
湯を浴びて、塔の上階にある大賢者の部屋に案内される途中で、俺の記憶は消える。
そこからは、夢の始まりだ。
「あぁ……やだ……ヴィル……っ」
荒い息遣いだけが響く部屋で、僅かな灯りが照らし出すふたつの身体は、ぴったりと重なり横たわっていた。
さきほどまで激しく揺さぶられていた俺にようやく与えられた休息、のはずなのだが、ヴィルヘルムの腕に抱かれ身動きがとれないまま、わけもわからずイきっぱなしになっている。
「嫌、はもう言わないのではなかったか?」
獰猛な色を失わない碧が、低く笑う。同時に、俺の胎に埋まったままの熱い杭が、ぐじゅりとナカをかき回した。
「や、あ……! これ……こ、れが、むり……ぃッ、ああ!」
びくびくと背をそらして、俺はまた果てる。
「激しくされるのが辛いから少しの間ゆっくり動いてほしい――君が強請った通りだが」
そう。
ヴィルヘルムの動きは小さいもので、俺の願いはちゃんと聞き届けられている。それなのに。
「あっ、あ、あ、あ……やぁあずっとイ、って、る……!」
ヴィルヘルムのものを奥まで飲み込んで、小刻みに揺らされているだけだ。それだけなのに、燃えるような剛直で奥を捏ねられるたびに、達するのを止められない。
「やだ、出ない、もう出ない……ッ」
ふたりの身体に挟まれた俺の先端からはもう、透明なものすら出ていなかった。
「胎内でイけるなら問題ない。君の魔力はまだこんなにも溢れてくるのだから」
首筋に歯を立てられ、その微かな痛みにすら俺の喉は甘い声を上げる。
この強く美しい捕食者に媚びるように。
「ヴィル……ッあ、あ……」
食われている。
魔力ごと、身体ごと。
「さあ、もっとだ。愛しい私のアンリ」
そう囁かれるとナカがきゅうっと締まるのは、どうしてだろう。絡みつく俺の襞に、ヴィルヘルムがかすかに息を詰めるのも、うれしい。
「ん……いい子だ。上手に魔力をひらいている」
魔力。
そうだ、魔力をたくさん、渡さなければ。
「魔法がなくともここまで解れるようになったが、辛くはないか?」
つらくなんか、ない。
案じるように太ももに這わされた手のひらの、その熱さも気持ちいい。
俺は返事の代わりにナカにいるヴィルヘルムを、意識して、きゅ、きゅと食い締めた。
「……ッ、そうか。ゆっくり、では物足りないものな」
上ずったヴィルヘルムの声にぞくぞくして、俺は言われた意味も考えずに笑む。
逞しい腕に捉えられた身体と、視界が回った。
「や……あっ、あ、あ、あ、っ、あっあ……ッ!」
腰を高く持ち上げられたあられもない格好で、後ろから激しい抽挿が再開された。衝撃に耐えきれず、必死に握りしめたシーツに顔を埋める。
弱いところを集中的に擦り上げられ、前立腺を力強く潰され、俺は快感に呻く。
「ふ、ぅ……ッう、んん、ん……んんんん!」
剛直は、隘路を慣らしながらやがて容赦なく奥へと進んだ。
「ほら、これで全部、だ」
ずぐん、と奥の奥を抉られた、その強すぎる快楽に息が止まる。痙攣する俺の身体を押しつぶすように、ヴィルヘルムが俺の背に覆いかぶさった。その身体も、熱い。
「ん、ッふ、ぅ、ッう――……!」
おく、ふかい……ふか、ぃッ……!
歯がかちかちと鳴る。声が出ない。
ぎゅっとつむったまぶたの裏にちかちかと光が弾ける。
そのまま小刻みに突かれて、呼吸とともに悲鳴が押し出された。
「っぁ、あ……あ……!」
「そうだ。声を、聴かせてくれ」
耳元で低く囁かれる。
「私を、求めて啼く声を」
「――ッあ、あ、ヴィ、ル……!」
ヴィルヘルムの艶を含んだ声に性感を煽られた俺は、がくがくと震えながら彼の屹立を締め付けた。
萎えることを知らない熱の塊から、熱いものがほとばしるのを、ナカで受け止める。湧き上がる多幸感に全身の毛穴が開く感覚がして、涙があふれた。
なんだこれ。
すごく気持ちよくて、それ以外なにもわからなくなる。
意識が遠のく。
夢なのに。
「――アンリ」
「んッ、あ……」
唇が合わさる感触に、瞳を開ける。
気付けば、俺は正常位で揺らされていた。
たん、たん、と肌がぶつかる音が聞こえる。
快楽が振り切れてばかになっているのか、突かれるごとに意識が軽く飛んで、俺の口はただずっと「あ」と「ん」を漏らしていた。
ああ、こんな、場面が飛ぶの、夢っぽいな。
「すご、い……きもち、いくて……」
思考も視界も霞んでいく。しっかり目を開けていられない。
俺は、目の前にある金の髪に手を伸ばした。
ヴィルヘルムは、いま、どんな顔をしているんだろう。
どんな気持ちで、俺を抱いているんだろう。
「ヴィ、ル……きもち……ぃ?」
「ん?」
ヴィルヘルムの声に、さっきまでの激しさはもうなかった。
「ヴィル、も……俺の、ナカ……きもち、い?」
いまだ抽挿をやめないおおきくてかたいもの、それこそが答えだと、同性としてはわかっているけども。
「……ああ、とてもいい」
柔らかい笑みを含んだ声。
ああ。
それならよかった。
笑った俺に、目の前の騎士がなぜか息を呑む気配がした。胎の中の質量が更に増して、その刺激に俺はまた喘ぐ。
もう焦点の合わない閉じかけの目元を、長い指がなぜた。きもちいい。
「アンリ……?」
様子をうかがうような声に、だって、と、ちゃんと返せているのかはわからない。
まあ、伝わらなくてもいいよな。夢だし。
ヴィル、ずっと頑張ってくれてるからさ。
この頃は難しい顔をしてることが増えたし。
だから、夢でも。
夢だとしても。
俺がヴィルを喜ばせられるなら、それは。
うれしい。と思ったんだ。
今回の夢はここまでだ。
湯を浴びて、塔の上階にある大賢者の部屋に案内される途中で、俺の記憶は消える。
そこからは、夢の始まりだ。
「あぁ……やだ……ヴィル……っ」
荒い息遣いだけが響く部屋で、僅かな灯りが照らし出すふたつの身体は、ぴったりと重なり横たわっていた。
さきほどまで激しく揺さぶられていた俺にようやく与えられた休息、のはずなのだが、ヴィルヘルムの腕に抱かれ身動きがとれないまま、わけもわからずイきっぱなしになっている。
「嫌、はもう言わないのではなかったか?」
獰猛な色を失わない碧が、低く笑う。同時に、俺の胎に埋まったままの熱い杭が、ぐじゅりとナカをかき回した。
「や、あ……! これ……こ、れが、むり……ぃッ、ああ!」
びくびくと背をそらして、俺はまた果てる。
「激しくされるのが辛いから少しの間ゆっくり動いてほしい――君が強請った通りだが」
そう。
ヴィルヘルムの動きは小さいもので、俺の願いはちゃんと聞き届けられている。それなのに。
「あっ、あ、あ、あ……やぁあずっとイ、って、る……!」
ヴィルヘルムのものを奥まで飲み込んで、小刻みに揺らされているだけだ。それだけなのに、燃えるような剛直で奥を捏ねられるたびに、達するのを止められない。
「やだ、出ない、もう出ない……ッ」
ふたりの身体に挟まれた俺の先端からはもう、透明なものすら出ていなかった。
「胎内でイけるなら問題ない。君の魔力はまだこんなにも溢れてくるのだから」
首筋に歯を立てられ、その微かな痛みにすら俺の喉は甘い声を上げる。
この強く美しい捕食者に媚びるように。
「ヴィル……ッあ、あ……」
食われている。
魔力ごと、身体ごと。
「さあ、もっとだ。愛しい私のアンリ」
そう囁かれるとナカがきゅうっと締まるのは、どうしてだろう。絡みつく俺の襞に、ヴィルヘルムがかすかに息を詰めるのも、うれしい。
「ん……いい子だ。上手に魔力をひらいている」
魔力。
そうだ、魔力をたくさん、渡さなければ。
「魔法がなくともここまで解れるようになったが、辛くはないか?」
つらくなんか、ない。
案じるように太ももに這わされた手のひらの、その熱さも気持ちいい。
俺は返事の代わりにナカにいるヴィルヘルムを、意識して、きゅ、きゅと食い締めた。
「……ッ、そうか。ゆっくり、では物足りないものな」
上ずったヴィルヘルムの声にぞくぞくして、俺は言われた意味も考えずに笑む。
逞しい腕に捉えられた身体と、視界が回った。
「や……あっ、あ、あ、あ、っ、あっあ……ッ!」
腰を高く持ち上げられたあられもない格好で、後ろから激しい抽挿が再開された。衝撃に耐えきれず、必死に握りしめたシーツに顔を埋める。
弱いところを集中的に擦り上げられ、前立腺を力強く潰され、俺は快感に呻く。
「ふ、ぅ……ッう、んん、ん……んんんん!」
剛直は、隘路を慣らしながらやがて容赦なく奥へと進んだ。
「ほら、これで全部、だ」
ずぐん、と奥の奥を抉られた、その強すぎる快楽に息が止まる。痙攣する俺の身体を押しつぶすように、ヴィルヘルムが俺の背に覆いかぶさった。その身体も、熱い。
「ん、ッふ、ぅ、ッう――……!」
おく、ふかい……ふか、ぃッ……!
歯がかちかちと鳴る。声が出ない。
ぎゅっとつむったまぶたの裏にちかちかと光が弾ける。
そのまま小刻みに突かれて、呼吸とともに悲鳴が押し出された。
「っぁ、あ……あ……!」
「そうだ。声を、聴かせてくれ」
耳元で低く囁かれる。
「私を、求めて啼く声を」
「――ッあ、あ、ヴィ、ル……!」
ヴィルヘルムの艶を含んだ声に性感を煽られた俺は、がくがくと震えながら彼の屹立を締め付けた。
萎えることを知らない熱の塊から、熱いものがほとばしるのを、ナカで受け止める。湧き上がる多幸感に全身の毛穴が開く感覚がして、涙があふれた。
なんだこれ。
すごく気持ちよくて、それ以外なにもわからなくなる。
意識が遠のく。
夢なのに。
「――アンリ」
「んッ、あ……」
唇が合わさる感触に、瞳を開ける。
気付けば、俺は正常位で揺らされていた。
たん、たん、と肌がぶつかる音が聞こえる。
快楽が振り切れてばかになっているのか、突かれるごとに意識が軽く飛んで、俺の口はただずっと「あ」と「ん」を漏らしていた。
ああ、こんな、場面が飛ぶの、夢っぽいな。
「すご、い……きもち、いくて……」
思考も視界も霞んでいく。しっかり目を開けていられない。
俺は、目の前にある金の髪に手を伸ばした。
ヴィルヘルムは、いま、どんな顔をしているんだろう。
どんな気持ちで、俺を抱いているんだろう。
「ヴィ、ル……きもち……ぃ?」
「ん?」
ヴィルヘルムの声に、さっきまでの激しさはもうなかった。
「ヴィル、も……俺の、ナカ……きもち、い?」
いまだ抽挿をやめないおおきくてかたいもの、それこそが答えだと、同性としてはわかっているけども。
「……ああ、とてもいい」
柔らかい笑みを含んだ声。
ああ。
それならよかった。
笑った俺に、目の前の騎士がなぜか息を呑む気配がした。胎の中の質量が更に増して、その刺激に俺はまた喘ぐ。
もう焦点の合わない閉じかけの目元を、長い指がなぜた。きもちいい。
「アンリ……?」
様子をうかがうような声に、だって、と、ちゃんと返せているのかはわからない。
まあ、伝わらなくてもいいよな。夢だし。
ヴィル、ずっと頑張ってくれてるからさ。
この頃は難しい顔をしてることが増えたし。
だから、夢でも。
夢だとしても。
俺がヴィルを喜ばせられるなら、それは。
うれしい。と思ったんだ。
今回の夢はここまでだ。
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