攻め語り

狩野

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「経験あるからっていい気になるなよ」

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 そんなふうに見えてたんですか、心外だなあ。

 別にセックスの経験をひけらかしたつもりはありませんよ。周囲に比べて特別早かったってわけでもありませんしね。

 ああ、もう、また怒る。

 僕はなにもしてません。あなたのほうが勝手に劣等感を感じているんじゃないですか?

 …………図星?

 ははっ。

 ああ、落ち込んじゃって。ほら、泣かない泣かない。

 別に悪いって言ってないです。人それぞれでいいんじゃないですか。

 ははぁ、振られた。

 そうでしょうね……。

 いやいや、あなたがあまりに手を出さないから、相手が焦れちゃったんだろうなって。

 女の子にだって性欲はあるんですよ。でも女の方から誘うのはみっともないみたいな風潮があるでしょう。だから、こっちから誘ってあげないと。

 まさか、性欲ないってわけじゃないですよね?
 
 さっき前屈みになってましたもんね。

 ははは。

 つまり自信がないんでしょう、あなたは。

 言い寄ってきた相手を失望させたくなくて、だからなにもしない。

 相手が何か自分に要求してくれるのを待っている。それに応えていれば失望されないからと思って。

 つまり、勇気がないんですよ。それが結局一番失望されることなのにね。

 …………あ。また泣いちゃった。

 ほらほら、涙拭いて。ああ、それ、僕の服ですよ。困った人だなあ。

 まあ、誰でも初めは怖いものですよ。あなただけじゃありません。そうそう。やってしまえば大したことじゃないんですけどね。

 ……………………。

 ほら、今、キスしたでしょう。これがファーストキスかな? 大したものじゃなかったでしょ。

 そうそう、目を閉じるほうがいい、って、本には書いてあるそうですね。そういうところでも勉強熱心なんですね、ふふふふっ。でも別にいいんですよ、開きたかったら開いてて。目を開いたままでも、キスはできたでしょう?

 まつ毛が当たった? そうですね。当たるんです。くすぐったいと思ったら、少し場所をずらすといいですよ。

 ……………………。

 そうそう、そういうことです。上手。今度は目も閉じられましたね。

 もう一度練習します?

 ここですか? ラブホ。

 バーでしこたま飲みまくって酔っ払ったの覚えてます? まっすぐ歩くことすらできなかったから、一番近くの休めるところに入ったんですよ。

 わかりました?

 わかったならもう一度キスして。

 …………ん、そうそう、上手。今度は顔離しちゃダメ。そのまま少し口開いて。舌、入れますね。

 ……………………。

 ……ふふ、へたくそ。本当に初めてなんですね。トロけた顔しちゃって。気持ちよかったですか?

 ん、もう一回?

 ……………………。

 ……はいはい、さっきよりは上手ですよ。さすがですね。もう一回して?

 ……………………。

 あはは、今度は僕も少し本気を出しました。キスだけで下半身まで気持ち良くなっちゃうのって思えば不思議ですよねえ。

 え? ここ、勃ってるじゃないですか。

 ほら、逃げないの。僕の足にめちゃくちゃ当たってますよ。ぐりぐりしてあげるとどんどん固くなってる。

 ……ラブホって、何するところか知ってます?

 そんなに慌てるってことは知ってるんですね。オトナですねえ。

 僕はよく知らなかったんですよ。ふふふ、ええ、嘘です。

 ちょっとここで勉強でもしていきましょうか。セックスの。

 ……ん?

 はい、僕も男ですけど。

 別に男同士でもできますよ、大丈夫です。僕のいう通りにして、まずは力を抜いて……
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