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第3話 賢い女中
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「お前は女中として、あの若者に仕えなさい。何か気づいたことがあれば、すぐに知らせるのです」
「かしこまりました」
なんだ、そんなことか。
城に不慣れなお客様には世話をする者が必要だ。それが私の役目で、合わせて監視役もせよ、ということだと私は理解した。
奥様は畳みかけて言う。
「分かったのなら、今すぐに行きなさい」
「では、お部屋に水と飲み物をお持ちするようにします」
すぐにでも行こうとする私を奥様が引き留める。
「お前、本当に、分かったのでしょうね?」
「何でございましょう、奥様?」
「こんな夜更けに若い女中が一人で男の部屋に行くのよ? くれぐれもあの若者の相手を……よくお相手をして差し上げて、お望みの通りにね。分かったわね?」
「……」
そこまで言われると、何だか自分の理解に自信がなくなって来る。念のためにとお伺いを立てる。
「あの……では、お客様には何と申し上げたら御心にかないますか?」
「こう言うのよ。……、……とね」
奥様は親切にも私に物の言い方を教えてくれた。
「お前は賢い子なんだから。うまくやりなさい。さあ早く行って」
私は深々とお辞儀をして、その場を下がった。
困ったことに、奥様は誤解をしているのだ。私のことを賢くて頭の回る女中だと思っている。大いなる誤解。
なんでそんなことになったかというと、思い当たるのは、あの事件だ。それはジャンヌ様とリュシアン王子が初めて一緒に過ごした夜の事。
一年前、リュシアン王子は地方視察のためにヴァロン領を訪れ、この城に滞在していた。
王子は顔以外の評判のよくない人だから、ご両親は王子をジャンヌ様に近づけないよう警戒していた。そのはずなのに、ある晩、ジャンヌ様と王子は手を取り合ってしまった。
その晩は私が寝ずの番をすることになっていて、お嬢様のお部屋の外に控えていた。飼い猫を捕まえようと床に這いつくばっていたとき、お嬢様と王子がやって来た。
お二人はどこかただならぬ雰囲気。
驚きのあまり私はレグリスと一緒に床に伏したまま動けない。そしたら上から男の声が降ってきた。
「顔を見ないつもりか。賢いな」
あ。これは直接顔をみてはいけないのだ。そう直感した。
それで二人の衣服の裾を見つめながら答えた。
「……寝ずの番をいたします。控えておりますので、御用の時にお呼びください」
「よろしく頼む」
夜通し番をしていたけど、結局、朝まで声はかからなかった。
顔を見なかったし、二人のいる部屋に入らなかった。これが後で私の身を助けることになる。
翌日私は呼び出され、奥様に尋問された。
「昨晩ジャンヌの部屋に誰が来ていたか言いなさい」
これはまずい。答えても答えなくても、角が立つ。
リュシアン王子だと答えたならば、密告をしたみたいで後味が悪い。当人たちから恨まれるかもしれない。
でも答えなければ、奥様がお怒りになる。悪くすればお城の女中を解雇されるかもしれない。
必死に言い訳を考えていると、「顔を見ないつもりか」と言ったリュシアン王子の言葉を思い出した。
「分かりません。私は相手の方の顔を見ていないのです。恐れ多くて見ていなかったといいますか……」
今思えば、「恐れ多い」なんて言っている時点で、誰のことだか答えているようなもの。でも奥様は、この答えで許してくださった。
「なるほどね。……お前は賢いわね。ジャンヌもよい侍女を持ったと、ほめてあげましょう」
この一件が奥様の大層気に入ったらしい。あっという間に私は賢い女中になってしまった。
でも、処世術に長けていたのは王子であって私ではない。今回、あのお客様の監視役に任命されてしまったのは気が重い。うまくやり通せればいいのだけど。
◇◇◇
私は片手に葡萄酒の壺、もう一方の手には水の入った桶を提げる。城の大広間からは楽曲や人々の声が響いている。宴会はまだ続いているようだ。
先を急いでいると廊下でリュシアン王子にばったり出くわした。
やっぱり夜のうちに帰って来た。そして、思ったよりも早いお戻りだ。
王子はお城を抜け出した後、城下町で羽目を外して遊んできたらしい。そうとわかる独特の芳香が身体から漂っていた。
「お前、ベルタを知らないか」
リュシアン王子は一人の女中の名前を尋ねる。ベルタは数日前にお城の女中を解雇されて郷里に帰ったばかり。
王子と親密な仲になるというのはよく聞く話だけど、彼女の場合は誇らしげに周囲に言いふらしたのが良くなかったのだ。
「お里下がりさせていただきました」
「ふうん、そうか」
王子の反応は私の答えを予想していたかのよう。
「で、お前はどこへ行くんだ?」
「奥様のお言いつけでございます」
「ジャンヌの『婚約者』のところだな」
「それについては、私は存じません」
フェリックス様がジャンヌ様の婚約者になるかどうかは、まだ分からない。
それもあって私は知らんぷりを通そうとしたのだけど、王子は声を出して笑い出した。リュシアン王子は、こういうことには勘がいい。
「今日来たばかりの、得体の知れない男の部屋に通うのか。お前、俺の所には来ないくせに……」
「……」
用がないから行かないのだ。それにこの人は、あまり自分の部屋にいない。在室だとしても一人でない。誰と一緒か分からないから、うかつに踏み込みたくない。
今も廊下で女中にからんでくるだなんて、もしかして、部屋に一人で戻るのが嫌なのだろうか?
私は提案をしてみた。
「男手が必要でございますか?」
「?」
王子がまた面倒臭いことを言い出す前に、私は急いで言う。
「あの者がお手伝いできます。ジャンヌ様のお部屋にお戻りになる前に、お着替えを」
状況を察して、廊下で控えていた下男の一人が王子に駆け寄る。下男はこれ以上ないくらいに平身低頭して御用聞きをする。
王子はつまらなさそうな顔をして下男に用を言いつける。下男が先導して歩き出す。
リュシアン王子を見送って、私は王子とは逆の方向に歩き出した。
聞けばフェリックス様は、お城で二番目に良い部屋へ通されたとのこと。一番良い部屋は、もちろん、リュシアン王子がお使いになっている。二つの客間はそれぞれお城の東と西の端にあるから、滞在中、お二人が顔を合わせることはないはずだ。
フェリックス様の客間の前まで来ると、彼の従者が入り口で立ちふさがった。私は両手の水桶と酒壺を示して言った。
「手を洗う水と、飲む葡萄酒をお持ちしました」
「……」
従者は何も言わずに私の手から水の桶を奪い取る。従者は桶の水に指先を浸し、指についた水を舐めて何かを確かめる。そして危険はないと判断したのか、両手で桶を持ち上げると口をつけ、桶の中の水を二口分ほど飲んだ。
あー。あのですね、そっちは手洗い用の水で、飲むためのものではないのですが。
私が驚きあっけにとられていると、従者は無言のまま、通れ、と道を開ける。そして桶を私の手に返してくれた。
なんだ。一緒に水を運ぶのを手伝ってくれるのかと思ったのに、違った。それにしてもちょっと変わった人だ。
部屋の中は思いのほか明るかった。窓から差し込む月明りと吊りランプの光が室内を明るく照らしている。
フェリックス様は旅装を解いて部屋着の姿。窓の近くに立っていて外を見ている。彼は女中が入って来たのを見ると、その場を動かず言った。
「ありがとう、お願いします」
私はその一言ではっと我に返る。フェリックス様の姿に見とれてしまって、一瞬自分の仕事を忘れかけた。
リュシアン王子もだけど、フェリックス様もまた、惚れ惚れするようないい男なのだ。
私は水を手桶やたらいに移し、飲み物を台の上に揃える。調度を整えてもなかなか立ち去らない私に向かって、フェリックス様が言った。
「他に、何かご用でしたか?」
私は教わった通りに口上を述べる。
「あなた様のご用を承るために控えております。主人より、あなた様のお望みの通りにと、言いつかっております」
私は奥様からの言いつけの通りに答えたつもりだが、フェリックス様は考え込んでしまわれた。
やや間があき、思い切った様子で彼は私に近づいた。
「かしこまりました」
なんだ、そんなことか。
城に不慣れなお客様には世話をする者が必要だ。それが私の役目で、合わせて監視役もせよ、ということだと私は理解した。
奥様は畳みかけて言う。
「分かったのなら、今すぐに行きなさい」
「では、お部屋に水と飲み物をお持ちするようにします」
すぐにでも行こうとする私を奥様が引き留める。
「お前、本当に、分かったのでしょうね?」
「何でございましょう、奥様?」
「こんな夜更けに若い女中が一人で男の部屋に行くのよ? くれぐれもあの若者の相手を……よくお相手をして差し上げて、お望みの通りにね。分かったわね?」
「……」
そこまで言われると、何だか自分の理解に自信がなくなって来る。念のためにとお伺いを立てる。
「あの……では、お客様には何と申し上げたら御心にかないますか?」
「こう言うのよ。……、……とね」
奥様は親切にも私に物の言い方を教えてくれた。
「お前は賢い子なんだから。うまくやりなさい。さあ早く行って」
私は深々とお辞儀をして、その場を下がった。
困ったことに、奥様は誤解をしているのだ。私のことを賢くて頭の回る女中だと思っている。大いなる誤解。
なんでそんなことになったかというと、思い当たるのは、あの事件だ。それはジャンヌ様とリュシアン王子が初めて一緒に過ごした夜の事。
一年前、リュシアン王子は地方視察のためにヴァロン領を訪れ、この城に滞在していた。
王子は顔以外の評判のよくない人だから、ご両親は王子をジャンヌ様に近づけないよう警戒していた。そのはずなのに、ある晩、ジャンヌ様と王子は手を取り合ってしまった。
その晩は私が寝ずの番をすることになっていて、お嬢様のお部屋の外に控えていた。飼い猫を捕まえようと床に這いつくばっていたとき、お嬢様と王子がやって来た。
お二人はどこかただならぬ雰囲気。
驚きのあまり私はレグリスと一緒に床に伏したまま動けない。そしたら上から男の声が降ってきた。
「顔を見ないつもりか。賢いな」
あ。これは直接顔をみてはいけないのだ。そう直感した。
それで二人の衣服の裾を見つめながら答えた。
「……寝ずの番をいたします。控えておりますので、御用の時にお呼びください」
「よろしく頼む」
夜通し番をしていたけど、結局、朝まで声はかからなかった。
顔を見なかったし、二人のいる部屋に入らなかった。これが後で私の身を助けることになる。
翌日私は呼び出され、奥様に尋問された。
「昨晩ジャンヌの部屋に誰が来ていたか言いなさい」
これはまずい。答えても答えなくても、角が立つ。
リュシアン王子だと答えたならば、密告をしたみたいで後味が悪い。当人たちから恨まれるかもしれない。
でも答えなければ、奥様がお怒りになる。悪くすればお城の女中を解雇されるかもしれない。
必死に言い訳を考えていると、「顔を見ないつもりか」と言ったリュシアン王子の言葉を思い出した。
「分かりません。私は相手の方の顔を見ていないのです。恐れ多くて見ていなかったといいますか……」
今思えば、「恐れ多い」なんて言っている時点で、誰のことだか答えているようなもの。でも奥様は、この答えで許してくださった。
「なるほどね。……お前は賢いわね。ジャンヌもよい侍女を持ったと、ほめてあげましょう」
この一件が奥様の大層気に入ったらしい。あっという間に私は賢い女中になってしまった。
でも、処世術に長けていたのは王子であって私ではない。今回、あのお客様の監視役に任命されてしまったのは気が重い。うまくやり通せればいいのだけど。
◇◇◇
私は片手に葡萄酒の壺、もう一方の手には水の入った桶を提げる。城の大広間からは楽曲や人々の声が響いている。宴会はまだ続いているようだ。
先を急いでいると廊下でリュシアン王子にばったり出くわした。
やっぱり夜のうちに帰って来た。そして、思ったよりも早いお戻りだ。
王子はお城を抜け出した後、城下町で羽目を外して遊んできたらしい。そうとわかる独特の芳香が身体から漂っていた。
「お前、ベルタを知らないか」
リュシアン王子は一人の女中の名前を尋ねる。ベルタは数日前にお城の女中を解雇されて郷里に帰ったばかり。
王子と親密な仲になるというのはよく聞く話だけど、彼女の場合は誇らしげに周囲に言いふらしたのが良くなかったのだ。
「お里下がりさせていただきました」
「ふうん、そうか」
王子の反応は私の答えを予想していたかのよう。
「で、お前はどこへ行くんだ?」
「奥様のお言いつけでございます」
「ジャンヌの『婚約者』のところだな」
「それについては、私は存じません」
フェリックス様がジャンヌ様の婚約者になるかどうかは、まだ分からない。
それもあって私は知らんぷりを通そうとしたのだけど、王子は声を出して笑い出した。リュシアン王子は、こういうことには勘がいい。
「今日来たばかりの、得体の知れない男の部屋に通うのか。お前、俺の所には来ないくせに……」
「……」
用がないから行かないのだ。それにこの人は、あまり自分の部屋にいない。在室だとしても一人でない。誰と一緒か分からないから、うかつに踏み込みたくない。
今も廊下で女中にからんでくるだなんて、もしかして、部屋に一人で戻るのが嫌なのだろうか?
私は提案をしてみた。
「男手が必要でございますか?」
「?」
王子がまた面倒臭いことを言い出す前に、私は急いで言う。
「あの者がお手伝いできます。ジャンヌ様のお部屋にお戻りになる前に、お着替えを」
状況を察して、廊下で控えていた下男の一人が王子に駆け寄る。下男はこれ以上ないくらいに平身低頭して御用聞きをする。
王子はつまらなさそうな顔をして下男に用を言いつける。下男が先導して歩き出す。
リュシアン王子を見送って、私は王子とは逆の方向に歩き出した。
聞けばフェリックス様は、お城で二番目に良い部屋へ通されたとのこと。一番良い部屋は、もちろん、リュシアン王子がお使いになっている。二つの客間はそれぞれお城の東と西の端にあるから、滞在中、お二人が顔を合わせることはないはずだ。
フェリックス様の客間の前まで来ると、彼の従者が入り口で立ちふさがった。私は両手の水桶と酒壺を示して言った。
「手を洗う水と、飲む葡萄酒をお持ちしました」
「……」
従者は何も言わずに私の手から水の桶を奪い取る。従者は桶の水に指先を浸し、指についた水を舐めて何かを確かめる。そして危険はないと判断したのか、両手で桶を持ち上げると口をつけ、桶の中の水を二口分ほど飲んだ。
あー。あのですね、そっちは手洗い用の水で、飲むためのものではないのですが。
私が驚きあっけにとられていると、従者は無言のまま、通れ、と道を開ける。そして桶を私の手に返してくれた。
なんだ。一緒に水を運ぶのを手伝ってくれるのかと思ったのに、違った。それにしてもちょっと変わった人だ。
部屋の中は思いのほか明るかった。窓から差し込む月明りと吊りランプの光が室内を明るく照らしている。
フェリックス様は旅装を解いて部屋着の姿。窓の近くに立っていて外を見ている。彼は女中が入って来たのを見ると、その場を動かず言った。
「ありがとう、お願いします」
私はその一言ではっと我に返る。フェリックス様の姿に見とれてしまって、一瞬自分の仕事を忘れかけた。
リュシアン王子もだけど、フェリックス様もまた、惚れ惚れするようないい男なのだ。
私は水を手桶やたらいに移し、飲み物を台の上に揃える。調度を整えてもなかなか立ち去らない私に向かって、フェリックス様が言った。
「他に、何かご用でしたか?」
私は教わった通りに口上を述べる。
「あなた様のご用を承るために控えております。主人より、あなた様のお望みの通りにと、言いつかっております」
私は奥様からの言いつけの通りに答えたつもりだが、フェリックス様は考え込んでしまわれた。
やや間があき、思い切った様子で彼は私に近づいた。
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