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47話 お説教と新しい奴隷
しおりを挟む「………………拙者が何故怒っているのか、わかるなぁ?」
ハルミの目の前でアーノルドは口の端をヒクヒクさせていた。
「はい。わかります。ほんっとうにすみません!!」
ハルミは土下座した。紅葉が魔力切れ寸前でぶっ倒れたからだ。幸いにもベル程の酷い状態では無いが一週間は射精は厳禁だ。
紅葉は朝しくしく泣きながらアーノルドの知り合いの病院へ短期入院する為に屋敷を出て行った。使用人さんが付き添ってくれているので一応は安心だ。紅葉はめちゃくちゃ泣いてたけど。
「………………はあ。………ハルミ、これはかなり困った事になったぞ。精液を提供してくれる相手が居ない。拙者一人で君の相手するのも無理だ。それをして拙者も倒れてはもうどうにもならんしなぁ。…………そうなる前にもう何人か奴隷を買う事になる。…………あの奴隷、紅葉が来週帰って来たとしても暫くは様子を見なければならん。どの道、今回でわかった事だがスペア、と言うとアレだがやはり相手はもう何人か居たほうが良い。………何かあった時に困るだろう?」
(………………もう何人か?やだなぁ)
アーノルドの言葉にハルミは気分が沈む。当初はあれだけ奴隷イケメン逆ハー♡と騒いでいたがやはり小説と現実は全然違う。お金で買っても辛いだけだ。それにハルミはベルに恋をしてしまった。だから最近は不特定多数とえっちな事をするのに抵抗が有る。最初の頃から知ってるアーノルドや紅葉ならいざ知らずここに来て新しい人かぁとしょんぼりした。
(…………………それに私の相手してくれる人なんて居る?…………あのグレンって人のお陰である意味最初にC~Dランク奴隷が来なかった理由分かったしなぁ。確かにアーノルドさんの伝え方も悪かったけど普通に私がブスだから皆無理なんじゃん。それにこの世界の常識ではやっぱり私って変態だし。そうなると………、また………訳有の人の弱みにつけ込むの?………またランク外でしょ?どうせ……………はあ)
気落ちしたハルミをアーノルドは複雑な表情で見ていた。
「……………ハルミすまないな。……だがそうしないと君が死んでしまう。それは絶対に嫌だ。…………………心配しなくとも今回は一人だけだが目星がついている。…………ベルの許可も取れている、心配はするな。……君が悪いんじゃない」
(え?目星って?ベルの許可?………一応保護者だしお金払うからか………ふーん。…………ベル許可したんだ。そっか………)
ほんの少しだけまた胸が痛んだ。
(ベルは私のそう言う相手が増えても良いんだ…………、そうだよね……だってベルは別に私をなんとも思ってないもんね……っ………)
頭ではわかっていても胸の痛みは止められない。
(………………はあ……………駄目駄目。ネガティブ思考は良くない……だって仕方無いし。じゃ無いと死ぬし……私)
「……………目星って?」
気持ちを切り替えてそうアーノルドに尋ねるとバツの悪い顔をされた。
「………………悪いが今回もランク外だ。実は奴隷館から話が来ていてな、前に理由を話して紅葉を買っただろう?それで丁度良いのが入りましたよと少し前に向こうから連絡が来たんだ……。………早くしないと処分されるだろうし今日このまま行くぞ。…………向こうが了承したらそのまま連れて帰る。…………それで良いかぁ?」
(…ほらやっぱりランク外。………嫌だって言っても困らせるだけだし………それになんだろう。昨日紅葉君からあれだけ貰ったのに………なんだか……?)
何故か満たされた感じが無い。いや昨日は確かに満たされた。だが、今は何だか満たされていない気がする、それに目の前のアーノルドに対して少しムラムラする。
(あれ………?…………いや、気のせいかな?)
考えてもわからないのでハルミはとりあえずは頭を切り替える。
「わかりました。…………仕方ないですもんね。どんな人なのかはもう先にわかってるんですか?」
そう尋ねるとアーノルドはそっとハルミから視線を外した。今教える気は無いようだ。
▷▷▷▷▷▷
「ああ、どうも。よく来てくださいました!!」
揉み手で現れたのは見知った店員だ。
「…………話していた奴隷を見に来た。それともう何人か見繕ってくれないかぁ?聞いていた奴隷の他に2人程欲しい」
アーノルドがそう言うと店員は頭をペコペコ下げている。それからハルミを見てニヤニヤとした。すぐにアーノルドがスッと背中で隠してくれたが良い気分はしない。
案内された個室には羽のない天使が居た。いや多分人間だけど天使かと思う様な美貌の美青年だった。一瞬これランク外?と思ったがよく見れば車椅子の様な物に乗っていた。
「ああ、貴女様が……そうなのですね?わたくしはぁシュエルと申します。……………満足に動けぬ身では有りますが、この身をお気に召して頂ければ幸いにございますね」
そう天使の様な青年は透き通るような綺麗な声でおっとりと告げた。キラキラとした青味がかった白銀の長い髪に美しい翠の瞳。整った小さな顔、白い肌に細い手足。
アーノルドが口を開く。
「………………彼は元々Aランクだったが病気になり出戻った。体が殆ど動かない。動くのは首から上だけだ。………原因も不明。………石化病と呼ばれている。緩やかに死に向かう不治の病だなぁ。本来なら奴隷としての使い道は無い……………だが性機能はまだ問題無いそうだ。魔力も多い。………………購入で良いな?」
その言葉にハルミはすぐには頷けなかった。
(…………動かないってそれって……………。………………やだなぁ、何だかそれだと精液摂取が一方的で本当に事務的になるじゃん。……………でも、仕方ないんだよね)
ふわりと綺麗に微笑む青年を見ても心は弾まない。
(……………現実ってどこの世界でも残酷だな、折角のファンタジーな世界なのに夢も希望も無いじゃん………)
ハルミはそう思った。
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今回はお試しも無しでそのまま連れて帰る。その前に3人他の奴隷を見せて貰った、比較的五体満足でホッとしたが奴隷達はハルミを見てそれから断わりの言葉を口にした。どうしても無理だと3人から頭を下げられてハルミの顔は引きつった。落ち込むハルミの頭をアーノルドは優しく撫でてくれる。
(…………もうやだ)
色んな意味で泣きそうになるハルミだった。奴隷館を後にしてハルミがシュエルの乗った車椅子を押す。シュエルはニコニコしているが特に何も話さない。
(……………気まずいなぁ。ニコニコしてるけど内心はわからないし、…………この人も生きる為に必死なのかなぁ。今回はちゃんと理由も伝わってるんだよね?…………なんかすみません。相手が私で……)
心の中でハルミはシュエルに謝った。
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