独りぼっちだった私が異世界から来た騎士様に溺愛されてる件〜こんなに幸せで良いんでしょうか?〜

福富長寿

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3話 アンノウン

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「これから簡潔に説明するわ。質問は話を終えてからお願い出来るかしら?」

そう言う斎藤に美姫はコクリと頷いた。

「貴女を助けた、彼。アンノウンと私達は呼んでいるわ。未知の生命体。……人に似ているけど全くの別物よ。」

「アンノウン?未知の生命体……」

思わずゴクリと喉が鳴る。まるでまだ夢を見ているようだ。ファンタジーやSF映画のようなその説明に胸が不安でドキドキと鼓動が早くなる。

「落ち着いて聞いてね?……彼アンノウン。………アンは魔法を使えるの。貴女を眠らせたのは彼よ」

魔法と言う単語に美姫はピクリと反応する。

(魔法?……本当に?私を眠らせた?)

「あの?……その、アンノウンさんが私を?」

聞き返すと斎藤は頷く。その時部屋に居たスーツの男性は廊下へと出て行った。

(何処に行くんだろう?)

気になったが斎藤が話を続ける様なのでそちらに集中する。

「……………アンはあの魔物達と同じ世界からこちらに飛ばされて来たと本人は言っているわ。異世界人って事ね」

(え?アンノウンさんって日本語喋れるんだ?ならやっぱりあのキスは夢…………。そっか)

少しだけホッとする。意味不明な言語で話しかけて来ていたアレは夢だったのだ。ならやっぱり助けられた直後に気を失ったのかも知れない。

(あれ?でも眠らせたって………。どう言うこと?)

「それでね。…………魔物を殺せるのも彼だけなのよ。現時点ではね……。今も各地で魔物の出現を確認していてその度に彼が、魔法を使い魔物を殺して回っているわ。………この事は機密事項なの。国は混乱を避ける為に彼の事は報道していないわ。特殊チームが組まれて魔物を退治している事になっているのよ、表向きはね。」

「え?あの人が魔物を殺して回ってる?」

「…………質問は後でって言ったわよね?疑問も分かるけど、どんどん行くわよ。それでね、彼が私達に協力する為の報酬。それが貴女なの………、彼は貴女を自分の伴侶として求めているのよ」

そう言う斎藤の言葉に美姫はポカンと口を開いた。はんりょ?はんりょとは?まさか伴侶じゃ無いよね?脳内は疑問符で埋め尽くされた。そんな美姫を斎藤は可哀想な瞳で見つめている。

「いきなりこんな事を言われても困るわよね?でも、魔物は魔法を使わないと殺せないの、………アンノウンの力に頼らないと犠牲者が沢山出るのよ」

目を伏せてそう言う斎藤に美姫はポカンと口を開けたままだ。

(アンノウン。未知の生命体?私を伴侶?伴侶って伴侶?)

「あの伴侶ってなんでしたっけ?」

尋ねると斎藤はポカンとしてからクスリと笑う。

「そうよね?そう言う反応になりますよね。…………伴侶。貴女との結婚を彼は望んでいます。貴女を差し出せば、魔物を殺してくれると、彼はそう言っているのよ」

告げられた言葉に美姫は目が点になる。そんなの彼にとっては罰ゲームにも等しい。何故報酬として美姫とあの美しい騎士様が結婚しないといけないのか全く理解が出来無い。だがそんな美姫をお構い無しに話はどんどんと進んでいく。

「現時点で魔物の出現が確認されているのは日本のみ。でももし魔物が溢れれば、日本のみならず他の国や……。いいえ世界中にあの化け物が散らばる事になる。そうなっては人類に勝ち目は無いわ。銃も爆弾も刀も何も魔物には効かないの。こちらの人間の技術力じゃ絶対に殺せないの。だから彼の願いを飲まなければ、貴女も私も皆死ぬのよ?辛いとは思うけれど、国の決定に従ってほしい。お願いします」

そう言って土下座する斎藤に美姫は慌てる。まさか大人の女性から土下座をされるなんて思わないし、人から土下座されるのなんて初めてで困惑する。

「や、やめてくださいっ!!!!あ、あのやっぱりこれってドッキリとかですか?だって有り得ないですよ。あんなに素敵な人、……人じゃ無いかもですけど。アンノウンさんと私が結婚って。」

「…………素敵。ええそうね。かなり美しい容姿ですものね。アンって。あら?ならもしかして乗り気だったりするのかしら?そうなら有り難いわ。嫌々よりはこちらも罪悪感が減るもの」

ホッとした様に斎藤は息を吐く。

「え?いや。あの、乗り気って言うか、そんなの信じられないって言うか。あの伴侶って、もしかして生贄とかの隠語ですか?こう実はあの姿は仮の姿で頭からバリバリ食べられるとかですか?」

自分で言ってぶるりと震える。未知の生命体だあり得る。いくら美しい騎士様でもそれの餌になるのは嫌だ。それなら助かった意味が無い。

「流石にそれは無いですよ。」
 
「なんだ。……良かったぁ」

クスクスと笑う斎藤にホッとするが、だがよく考えたら何も解決していない。理由も何もよくわからないままにあの美しい騎士様と伴侶になれと言われているのだ。はいわかりましたと簡単に頷く事は出来ない。

「あの、待ってください。でも伴侶なんてなにかの間違いです!!!だって私、可愛くないし……。暗いし……」

(……………やっぱり、何か裏があるんじゃ?………伴侶になったら子供を孕まされてお腹を食い破って出て来るとか?)

エイリアン物の定石である。自分の考えに顔が真っ青になる。そんな死に方をするくらいなら魔物に食われていたほうがマシだった。ぶるぶると震えているとコンコンと扉がノックされて先程出て行ったスーツの男性が入って来た。その後ろからは今まさに話題に上がって居た、アンノウンが現れた。肩までのサラサラの赤い髪は後ろでハーフアップにしている。初めて見た時の騎士姿では無く、黒いスーツを着ていた。だがこちらの姿の方がコスプレのようだと美姫は思った。目が合うとアンノウンは優しく微笑んで膝をつきベッドに座る美姫の手を取った。

「………ご気分は如何ですか?私の愛する妻殿。」

そう言って手の甲にちゅっとキスをされて美姫は顔が真っ赤になるのを止められなかった。

(な、な、な。何この超展開は?!やっぱりまだ夢見てるんじゃ?!)

真っ赤な顔で狼狽える美姫をアンノウンは愛しそうに見つめていた。





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