夢も現も妄想次第。

京都旅行。

　こんちきちん。

　【今日は泊まりがけで友達と祇園祭にやってきました。 
　京都へは何度も来たコトあったけど、祇園祭は初めてで、ふたりしてはしゃいでまぁす】

　そんな呟きをネットに上げて、写真撮りまくりの、スイーツ食べまくりの、楽しい旅行を満喫していました。
　昼間は、ホントに楽しいだけでした。
　神社仏閣や歴史的な建物を見て、古き時代に思いを馳せて。
　でも、友達は、疲れが出たのか、途中から足取りが重くなってきていました。

　こんちきちん───。

　待望の祇園祭が始まりました。

　こんちきちん───。

　友達の足が止まりがちになってきました。

　───だいじょうぶ？　疲れた？

　そう問うあたしに、友達は、首を横に振りました。

　───肩が……重くて……なにか……乗ってるみたい……。

　友達は苦しそうに零します。
　神社仏閣を回る途中に、偉人たちのお墓を巡ろうと、墓地も散策した記憶が脳裏をよぎりました。

　───ついて……きちゃった、かも……？

　友達の顔色が悪くなっていくのが、素人目にもわかります。
　その時、あたしの頭の中に、思いっきり叩くといいよ、とネットか何かで目にした記事が蘇ります。ホントかなぁ、とその時は笑っていましたが、ふざけているわけでもない友達の様子が心配で、可能性にチャレンジしてみました。

　ばしぃんんんんっ。

　情け容赦のない一撃。

　友達は勢い余ってよろけています。

　───だいじょうぶっ？
　───あんた、なにしたの……て、あれ？

　どうやら成功したようです。
　友達いわく、石を背負っているみたいだったのが、一瞬でなんともなくなっちゃった、らしいのです。
　あたしは自分の手を見て、変なの、と笑いました。

　その夜は、ホテルに泊まったのですが、鏡の中から手を振るなにかがいる、と、友達はほとんど寝られなかったそうです。
　なんにもわかんないあたしには、そうなんだぁ、と相槌を打つしかできませんでした。

　そんなわけがわかんない旅行も終わり、帰宅してから写真をプリントアウトして友達に分けようとしていた時です。

　───ごめん、写真、送ってこないで……見たくない……。

　言われて、写真をすべて見返したけれど、あたしにはなにもわかりませんでした。

　───わかんなかった？　だったらいいよ、とにかくそれ、全部削除して、復活もできないように破棄して、全部なくして……っ───

　もったいない気がしたけれど、あたしは全部データ削除して、ゴミ箱からも削除して、とにかくすべて消しました。






　それから数年。
　昔の呟きなどを引っ張り出して黒歴史として晒すような悪質な行動が流行りだし、心配になったあたしは、古い呟きを遡って見た。

【今日は泊まりがけで友達と祇園祭にやってきました。 京都へは何度も来たコトあったけど、祇園祭は初めてで、ふたりしてはしゃいでまぁす】

　───ええと……これ、誰だっけ……？　友達と祇園？　祇園？　行った覚えがまったくないんだけど……っ？　友達って誰？　まさか、乗っ取り……？

　怖くなったあたしは、アカウントを削除した。