The change~入れ替わった魂~

丘の上の洋館

 病院を出た加奈子は、まず、愛瑠の車を取りに、大型ショッピングモールの駐車場まで移動した。加奈子は車はおろか運転免許も持っていなかったが、愛瑠は事故当日、買い物に来ていて事故にあったようだった。そのショッピングモールは大型の建物が点在しているタイプで、たまたま隣接している交差点のある公道に出た時に事故に遭遇したようだった。

 愛瑠の車は、車種などわからない加奈子が見ても、高級車であることはわかるような車だった。運転なんて出来るわけが無い...にも関わらず、愛瑠の身体と脳の記憶が運転技術を覚えていた。

加奈子は愛瑠の自宅の住所にナビを合わせて車を発進させた。ショッピングセンターから愛瑠の家はそこまで遠くなく、比較的直ぐに目的地に着いた。

「ここは...」

 そこは古い洋館だった。
昔、話に聞いたことがある...バブルの時代にイギリス人の富豪が小高い丘の見晴らしのいい場所に豪華な洋館を建てた。しかし、バブル弾けて維持費が賄えなくなり、そのまま買い手がつかず、長い間捨て置かれていた。

 加奈子の町では幽霊屋敷と呼ばれていた場所だった。それを数年前にどこかの物好きな金持ちが買い取ったという噂を聞いたことがあったが...まさか愛瑠の家だったとは。

車の中にリモコンらしきものがあり、それを門に向けるとその古い門はキィーと音を立てて開いた。

中はイングリッシュガーデンになっていたが、あまり手入れをされているとは言い難い。背の高い草が生い茂っていた。

しばらく車を走らせると洋館の前についた。洋館の左側に駐車場らしきスペースがあったので、加奈子はそこに車を停めた。ドアの前に立つと、愛瑠のバックに入っていた鍵を取りだし、恐る恐る鍵穴に差し込んだ。扉は難なく開いて中に入ることに成功。

しかし、人の気配はしなかった...

まさか、こんな洋館に愛瑠1人で住んでいたのか...？

一体、榊原愛瑠って何者なの？