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005 Editor's disqualification
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「いやぁ、いいですね~」
「はぁ……」
「この『俺はスケートをしにきたんじゃない! 推理をしに来たんだ!』というのも迫力がありますし」
「ええ」
「何というか……そうだなぁ、この現代的ではない設定ですかね」
「そうですか。現代的ではないですか」
「いや、駄目って訳ではないのです。トリックとか設定は普通。まあ古典的なんですけど――それがいいんじゃないんですか? 伝統芸っぽくて」
「……伝統芸」
私の書いた推理小説をけなしている様にしか聞こえなかった。
「よっ! 天月!!」
青木は伝統芸能である歌舞伎のかけ声、つまり屋号を叫ぶ。
彼は私をおだてているつもりなのだろうが不快感しかなかった。
この男が原稿を褒めてくる時はロクなことが無い。
それは重々承知していた。
「…………」
「……」
これから起きる出来事を予感させる沈黙。
良い予感ではなく、それは不幸になる予感だった。
「では脱稿ということで」
私はそう切り出し席を立とうとする。
「ちょっと待った――!!」
「…………」
「僕にこの作品をさらに輝かせる案がひとつあります!」
「いえ、結構です」
「ちょっと待った! 話だけでもいいから聞いてください!」
「いえ、結構ですから」
「少しだけ!」
「結構です!!!」
かたくなに断る天月さとう。
しつこいグラップラー青木。
その姿はまるで玄関のドアでしつこく食い下がる新聞勧誘の人間を追い払う主婦のようであった。
「じゃあ、今ならさとう先生がすきなアニメの宣伝用立て看板(ショップの前に立ってるキャラクターの等身大立看。紙製)を付けますから!」
「……ぇ」
「出演声優さんのサイン入も付けます!」
「……いや青木さん――それはまた別の話ですよ。違います。確かに私はアニメも声優も好きだし、非売品グッズも欲しいです。ただそれは作品作りとは全く関係の無いことであって、それを貰うことによって編集の意見を聞いて作品の方向性を変える……あってはならないことだと思っています」
「……」
「きちんと作品をつくることに対して向き合ってますか?」
編集部の空気が重くなる。
極限まで張り詰めた空気の部屋。
体感温度は下がり、時計の音も聞こえない。
後にこの現場に居合わせた編集スタッフはこういった……
「――そこはまるで居酒屋のアルバイトの面接に近い緊張感があった」と。
それ位の重さ。
「そうですか……そうですね。申し訳ない」
青木はしょんぼりしていた。
「……むぅ」
「……」
「でも作品をよくするための話し合いは必要なのは解っています。ただ、私は何か貰うということで作品を変えることが許せなかったんです」
少しだけ柔らかめの笑顔でそういった。
「そうですね」
どうやら青木は納得してくれた様だ。
「それでは話してください」
「え?」
「何か小説をよくするための案があるんでしょう?」
「あります! ありがとう! さとう先生」
はしゃぐ青木。
「いえいえ。あー、ではその立て看板は家に送っておいてください。明日の午前中に時間指定でお願いします」
「……」
天月さとうの小説に対する真摯な姿勢に感動した青木だったが、それは一瞬で崩れ去った。
何事もなかった様に立て看板を貰おうとするさとうに落胆の色を隠せない。
次回。
作品をよくするための青木の案とは何か――
ついに明らかになる革新的アイディア!
「はぁ……」
「この『俺はスケートをしにきたんじゃない! 推理をしに来たんだ!』というのも迫力がありますし」
「ええ」
「何というか……そうだなぁ、この現代的ではない設定ですかね」
「そうですか。現代的ではないですか」
「いや、駄目って訳ではないのです。トリックとか設定は普通。まあ古典的なんですけど――それがいいんじゃないんですか? 伝統芸っぽくて」
「……伝統芸」
私の書いた推理小説をけなしている様にしか聞こえなかった。
「よっ! 天月!!」
青木は伝統芸能である歌舞伎のかけ声、つまり屋号を叫ぶ。
彼は私をおだてているつもりなのだろうが不快感しかなかった。
この男が原稿を褒めてくる時はロクなことが無い。
それは重々承知していた。
「…………」
「……」
これから起きる出来事を予感させる沈黙。
良い予感ではなく、それは不幸になる予感だった。
「では脱稿ということで」
私はそう切り出し席を立とうとする。
「ちょっと待った――!!」
「…………」
「僕にこの作品をさらに輝かせる案がひとつあります!」
「いえ、結構です」
「ちょっと待った! 話だけでもいいから聞いてください!」
「いえ、結構ですから」
「少しだけ!」
「結構です!!!」
かたくなに断る天月さとう。
しつこいグラップラー青木。
その姿はまるで玄関のドアでしつこく食い下がる新聞勧誘の人間を追い払う主婦のようであった。
「じゃあ、今ならさとう先生がすきなアニメの宣伝用立て看板(ショップの前に立ってるキャラクターの等身大立看。紙製)を付けますから!」
「……ぇ」
「出演声優さんのサイン入も付けます!」
「……いや青木さん――それはまた別の話ですよ。違います。確かに私はアニメも声優も好きだし、非売品グッズも欲しいです。ただそれは作品作りとは全く関係の無いことであって、それを貰うことによって編集の意見を聞いて作品の方向性を変える……あってはならないことだと思っています」
「……」
「きちんと作品をつくることに対して向き合ってますか?」
編集部の空気が重くなる。
極限まで張り詰めた空気の部屋。
体感温度は下がり、時計の音も聞こえない。
後にこの現場に居合わせた編集スタッフはこういった……
「――そこはまるで居酒屋のアルバイトの面接に近い緊張感があった」と。
それ位の重さ。
「そうですか……そうですね。申し訳ない」
青木はしょんぼりしていた。
「……むぅ」
「……」
「でも作品をよくするための話し合いは必要なのは解っています。ただ、私は何か貰うということで作品を変えることが許せなかったんです」
少しだけ柔らかめの笑顔でそういった。
「そうですね」
どうやら青木は納得してくれた様だ。
「それでは話してください」
「え?」
「何か小説をよくするための案があるんでしょう?」
「あります! ありがとう! さとう先生」
はしゃぐ青木。
「いえいえ。あー、ではその立て看板は家に送っておいてください。明日の午前中に時間指定でお願いします」
「……」
天月さとうの小説に対する真摯な姿勢に感動した青木だったが、それは一瞬で崩れ去った。
何事もなかった様に立て看板を貰おうとするさとうに落胆の色を隠せない。
次回。
作品をよくするための青木の案とは何か――
ついに明らかになる革新的アイディア!
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