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――幕間――
しおりを挟む「最近の私的ブームはおでこを出している女性なんです」
私は少し興奮していた。
「あー、いいですね。わかります。某アニメのヒロイン的な! 二期もはじまりますからね」
青木のテンションも高い。
「そうそう。あれは後ろで括っているのではなくて自然におでこが出ているのもポイント高いです」
私は人差し指をくるくる廻しながら話す。
「なるほどな!」
「ところで話は変りますが……」
「なんでしょう?」
「青木はヒールが地面に当たる音を聞くとトンカツが食べたくなりませんか?」
「え……」
「ヒールが地面にあたって響く『カツカツ』という音を聞くとトンカツが食べたくなりますよね?」
「いやすみません。あなたが何をいいたいのかさっぱりわからない」
「ははあ。わかりませんか」
「ええ」
「さては青木、モてませんね」
「ええ」
まったく否定しなかった。
彼は本当に女性っ気が無いのだろう。
私は悪いことをいったと思った。
「……」
「てか僕が女性にもてないのと、ヒールの音を聞いてトンカツが食べたくなる事についての関連性がまったくわからないのですが」
「いいですか。女性、いや異性に好かれるためのちょっとしたコツを教えましょう」
「まじっすか」
青木の顔は興味しんしんといった感じだ。
この手の話題に余程飢えているのだろう。
「いいですか」
「はい」
固唾を飲む青木。
異性にモてるための方法を高校生から教えられる中年編集者。
よく考えたら酷い構図だ。
「それは――」
「はい」
「さりげない気遣いですよ」
「ほう」
「さりげない日常会話から、女性が望む物をくみ取り。エスコートする。これ大事」
「ほー。なんかわかる気がしますね。つまり気が利く紳士みたいな」
「まあ、いわれなくても紳士と呼ばれる人は気が利きそうですが、そうですね。そうです」
それを聞いた青木は両腕を胸のところで組んで何か考えていた。
「なるほど! 今回の『ヒールのカツカツ音を聞いてトンカツ話』に関してはトンカツを一緒に食べに行こうということですね!」
「そうです!!!!」
「いいじゃないですか。行きましょうトンカツ」
「ごちそうさまでーす」
私は両手を胸のところで組んでニコリとした。
「え……」
意外な顔をする青木。
「僕が奢るんですか」
「もちろん」
「僕、給料超少ないんですけど」
「青木は馬鹿だなー。経費があるじゃないですかー」
「むりむりむり」
思い切り否定する青木。
なんてケチな会社だ、あれだけ儲けているのに経費削減。
金の亡者である。
「まじか」
ここで自分の顔を見ることはできなかったが、きっと私はこの瞬間、絶望的な顔をしていたに違いない。
まるでこの世の終わりであるかのように……
「……わかりました。今回に関しては僕が出しましょう」
「まじですか! さすが青木さん」
「でもロース定食限定(850円)ですからね」
「もちろん。最初からそのつもりです」
私は何もいわれなければ特上ヒレ定食(3200円)を頼むつもりだった。
が、それは駄目だったようだ。
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