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プロローグ
001 完璧超人とか無理でしょう
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ふとした瞬間、自分の顔に違和感を覚えたことはないでしょうか?私は今まさにその違和感を感じております。
きっかけは本当にふとしたものでした、朝、鏡を見て「あれ?」と思ったのでございます。
「私の顔、こんな顔でしたかしら?」
「お嬢様何か仰いましたか?」
「いえ、私の顔が……」
そう言いかけた瞬間、私の頭の中に膨大な量の情報が流れ込んできました。
この世界が『ディズボード』というゲームの世界であり、私はそのゲームの中ではラスボスとまで言われた悪役令嬢であったこと。他にも各攻略者の情報や攻略するにあたり必要な情報な一気に流れ込んできたのです。
この世界、『ディズボード』は魔法もあるファンタジーな世界です。前世の高度な科学文明が発達した世界とは違いますわね。
世界の時代背景はロココ時代前期のヨーロッパのような感じでしょうか。小国が多数乱立している、けれどもさほど大きな戦争も起こっていない、そんな感じの時代となっておりますわ。
その小国の一つ、ノワール国の侯爵家の次女が私でございます。
私は現在七歳になりますけれども、将来は完璧超人と言われる悪役令嬢になるのですが、到底なれるとは思えません。
なんといいましても、前世の私はものぐさでございまして、完璧超人になれる自信などありませんの。
悪役の中でも完璧にその任務を遂行させてしまうのですわ、最後の最後まで、私の悪事がバレることはございませんでした。
そうそう、私の自己紹介がまだでございましたわね。失礼を致しました。
私の名前はミスト=ブランシュと申します。先ほど言ったようにノワール国の侯爵家の次女でございますわ。
私は将来、第二王子の婚約者になるのですが、今はまだ婚約者ではございませんわ。姉と共に顔合わせをしている段階でございますので、まだ姉か私かどちらかが婚約者になるのかは、家でも迷っている最中という感じでございましょうか。
つまり、今であれば私は婚約者から外れることも可能ということでございます。
第二王子は、正妃様のお子様でいらっしゃいまして、狡猾な腹黒という裏の顔を持つ方ではございますが、ヒロインの心にふれることで、その裏の顔を悔いていくというストーリーでございました。
もう一人、第二王子の一歳年上の第一王子もいらっしゃいますが、この方は側室のお子様でございまして、後ろ盾が弱く、我が家の派閥とは別派閥に所属していらっしゃる方でございます。
この方も、その婚約者も純粋な方でいらっしゃいましたが、ヒロインに触れていくことで、王族という柵からの解放を願うようになり、婚約者はヒロインに協力して第一王子を王族の柵から解放すると言うストーリーになっております。
他にも、宮廷魔導士や、宮廷薬師、第二王子側近など攻略対象は多数存在しておりますわ。
ちなみに私の推しは宮廷薬師でございました。
地味とおっしゃいますな、宮廷薬師は将来暗部の長となるストーリーなのでございます。私ともかかわりが多くあるキャラでございますわね。
莫大な量の情報を得た私は、お約束のように高熱を出してしまいまして、寝込んでしまいました。
私共、姉妹仲は悪い方ではないのですが、今は第二王子の婚約者がどちらになるのかという微妙な時期でございまして、原因不明の高熱ということもあり、姉が私のお見舞いに来ることはございませんでした。
べ、別に寂しくなんかないんですからねっ。
――なんて、ツンデレぶってみましたが、実際には寂しゅうございました。姉はゲームの中では私に第二王子の婚約者の立場を奪われたということで、ヒロインに協力するサブキャラとして出てまいります。
要するに情報提供者ですわね。
ところで、高熱のせいか、私の髪の毛の色はすっかり抜け落ちてしまいまして、母親譲りだった見事なハニーブロンドの髪の毛は、気が付けば白髪になってしまっておりました。
両親は大層残念がっておりましたが、私はこれでもよいのではないかと思っておりますわ。
ええ、地が良いので白髪も似合うという感じでございましょうか。父親譲りのピンク色の目を相まって、むしろ儚さが出たのではないでしょうか?
高熱を出してから数日後、やっと熱が下がって起きても大丈夫だとお医者様から許可を頂いてから、初めて姉に会った時、姉は私に謝罪をしてくださいました。
会えなかったのは両親の指示でございましたので、姉のせいではありませんわ。謝られるのもなんだか違う気がいたしますわよね。
白髪になった私の姿に嘆いた両親ですが、姉だけが美しいと言ってくださいましたわ。
姉妹仲は記憶を取り戻す前よりも良くなったのではないでしょうか?そうして、これは副産物ではございますが、私が高熱を出している間に我が家から出す第二王子の婚約者候補が決まったようでございます。
やはり、原因不明の高熱を出すような娘を大事な第二王子の婚約者には出来ないと、お父様がそう判断なさったようでございまして、婚約者候補には姉になることが決定いたしました。
と、言うことは、私が完璧超人でいる必要がなくなると言うことですわね。
なんて、気楽に考えていたのですが、この決定に不満を言ったのは他でもない姉でございましたの。
こんなのは不平等だと、そうお父様に直談判したのだそうです。結果、婚約者候補の選定は振出しに戻ってしまいました。残念なことですわね。
お姉様、不要な気遣いというものが世の中にはあるのですわよ。
まあ、第二王子の婚約者でもなければ、宮廷薬師の彼ともお近づきになれませんので、難しいところなのですけれども。
私の望みと致しましてはヒロインでも姉でもいいので、第二王子を引き受けていただきまして、私は宮廷薬師と愛を誓いあいたいのでございますけれども、中々に難しいものがございますわね。
そうそう、ゲームの中での私の最後ですけれども、別に修道院にいくとか、処刑されるというようなものではございませんでしたのよ。
普通に領地に自宅謹慎というようなものでございましたの。それは他でもない、第二王子のご命令でそのようになりましたのよ。
こう言えばわかりやすいでしょうか?ヒロインにさせられない悪事をさせるために、生かしておいていると。
政治には裏も表もございますものね、表はヒロインに任せて、裏を悪役令嬢である私にさせると言うのが第二王子の思惑でございましたのよ。
まあ、その策はうまくいくのですけれども、それが分かるのは『ディズボード ドゥズィエム』が出てからでございました。
私がお気に入りの宮廷薬師が暗部の長になるストーリーもドゥズィエムで発覚することでございますわ。
ドゥズィエムでは私は暗部の一人として活躍しているという設定となっておりました。つまり、私の婚約者となる予定になっている第二王子が公式の推しということなのでございましょう。
まあ、他のキャラクターではストーリーが膨らまなかったのかもしれませんが、そのような勘繰りをするのは下賤でございますわね。
ドゥズィエムの中では、ヒロインが第二王子を攻略しないままの状態で、第二王子が次期国王に決定したと言う設定で始まりますの。けれども私の悪事はバレてしまい、私は領地に謹慎という前提で暗部に加わっているという設定になっております。
多少強引ではございますが、続編を作るにはこのような強引な設定も必要だったのでございましょう。
その中で、ヒロインが宮廷薬師を攻略しなかった場合、そして、ヒロインが第二王子を攻略した場合にのみ出てくる情報なのですが、暗部の長になった宮廷薬師の隣には側近となる女性がいるのです。
ゲーマーの間ではそれが前作の悪役令嬢なのではないかと噂されておりました。
つまりですよ、私が想いを遂げるためには、このまま第二王子の婚約者となり完璧超人になりつつも、ヒロインに蹴落とされなければいけないということになりますわね。
なんということなのでしょうか。確かに暗部の長となる彼を支えるのにものぐさの前世の私では駄目なことはわかりますが、あの悪役令嬢になれるかと言われると、何度も申しますが無理なのではないでしょうか……。
きっかけは本当にふとしたものでした、朝、鏡を見て「あれ?」と思ったのでございます。
「私の顔、こんな顔でしたかしら?」
「お嬢様何か仰いましたか?」
「いえ、私の顔が……」
そう言いかけた瞬間、私の頭の中に膨大な量の情報が流れ込んできました。
この世界が『ディズボード』というゲームの世界であり、私はそのゲームの中ではラスボスとまで言われた悪役令嬢であったこと。他にも各攻略者の情報や攻略するにあたり必要な情報な一気に流れ込んできたのです。
この世界、『ディズボード』は魔法もあるファンタジーな世界です。前世の高度な科学文明が発達した世界とは違いますわね。
世界の時代背景はロココ時代前期のヨーロッパのような感じでしょうか。小国が多数乱立している、けれどもさほど大きな戦争も起こっていない、そんな感じの時代となっておりますわ。
その小国の一つ、ノワール国の侯爵家の次女が私でございます。
私は現在七歳になりますけれども、将来は完璧超人と言われる悪役令嬢になるのですが、到底なれるとは思えません。
なんといいましても、前世の私はものぐさでございまして、完璧超人になれる自信などありませんの。
悪役の中でも完璧にその任務を遂行させてしまうのですわ、最後の最後まで、私の悪事がバレることはございませんでした。
そうそう、私の自己紹介がまだでございましたわね。失礼を致しました。
私の名前はミスト=ブランシュと申します。先ほど言ったようにノワール国の侯爵家の次女でございますわ。
私は将来、第二王子の婚約者になるのですが、今はまだ婚約者ではございませんわ。姉と共に顔合わせをしている段階でございますので、まだ姉か私かどちらかが婚約者になるのかは、家でも迷っている最中という感じでございましょうか。
つまり、今であれば私は婚約者から外れることも可能ということでございます。
第二王子は、正妃様のお子様でいらっしゃいまして、狡猾な腹黒という裏の顔を持つ方ではございますが、ヒロインの心にふれることで、その裏の顔を悔いていくというストーリーでございました。
もう一人、第二王子の一歳年上の第一王子もいらっしゃいますが、この方は側室のお子様でございまして、後ろ盾が弱く、我が家の派閥とは別派閥に所属していらっしゃる方でございます。
この方も、その婚約者も純粋な方でいらっしゃいましたが、ヒロインに触れていくことで、王族という柵からの解放を願うようになり、婚約者はヒロインに協力して第一王子を王族の柵から解放すると言うストーリーになっております。
他にも、宮廷魔導士や、宮廷薬師、第二王子側近など攻略対象は多数存在しておりますわ。
ちなみに私の推しは宮廷薬師でございました。
地味とおっしゃいますな、宮廷薬師は将来暗部の長となるストーリーなのでございます。私ともかかわりが多くあるキャラでございますわね。
莫大な量の情報を得た私は、お約束のように高熱を出してしまいまして、寝込んでしまいました。
私共、姉妹仲は悪い方ではないのですが、今は第二王子の婚約者がどちらになるのかという微妙な時期でございまして、原因不明の高熱ということもあり、姉が私のお見舞いに来ることはございませんでした。
べ、別に寂しくなんかないんですからねっ。
――なんて、ツンデレぶってみましたが、実際には寂しゅうございました。姉はゲームの中では私に第二王子の婚約者の立場を奪われたということで、ヒロインに協力するサブキャラとして出てまいります。
要するに情報提供者ですわね。
ところで、高熱のせいか、私の髪の毛の色はすっかり抜け落ちてしまいまして、母親譲りだった見事なハニーブロンドの髪の毛は、気が付けば白髪になってしまっておりました。
両親は大層残念がっておりましたが、私はこれでもよいのではないかと思っておりますわ。
ええ、地が良いので白髪も似合うという感じでございましょうか。父親譲りのピンク色の目を相まって、むしろ儚さが出たのではないでしょうか?
高熱を出してから数日後、やっと熱が下がって起きても大丈夫だとお医者様から許可を頂いてから、初めて姉に会った時、姉は私に謝罪をしてくださいました。
会えなかったのは両親の指示でございましたので、姉のせいではありませんわ。謝られるのもなんだか違う気がいたしますわよね。
白髪になった私の姿に嘆いた両親ですが、姉だけが美しいと言ってくださいましたわ。
姉妹仲は記憶を取り戻す前よりも良くなったのではないでしょうか?そうして、これは副産物ではございますが、私が高熱を出している間に我が家から出す第二王子の婚約者候補が決まったようでございます。
やはり、原因不明の高熱を出すような娘を大事な第二王子の婚約者には出来ないと、お父様がそう判断なさったようでございまして、婚約者候補には姉になることが決定いたしました。
と、言うことは、私が完璧超人でいる必要がなくなると言うことですわね。
なんて、気楽に考えていたのですが、この決定に不満を言ったのは他でもない姉でございましたの。
こんなのは不平等だと、そうお父様に直談判したのだそうです。結果、婚約者候補の選定は振出しに戻ってしまいました。残念なことですわね。
お姉様、不要な気遣いというものが世の中にはあるのですわよ。
まあ、第二王子の婚約者でもなければ、宮廷薬師の彼ともお近づきになれませんので、難しいところなのですけれども。
私の望みと致しましてはヒロインでも姉でもいいので、第二王子を引き受けていただきまして、私は宮廷薬師と愛を誓いあいたいのでございますけれども、中々に難しいものがございますわね。
そうそう、ゲームの中での私の最後ですけれども、別に修道院にいくとか、処刑されるというようなものではございませんでしたのよ。
普通に領地に自宅謹慎というようなものでございましたの。それは他でもない、第二王子のご命令でそのようになりましたのよ。
こう言えばわかりやすいでしょうか?ヒロインにさせられない悪事をさせるために、生かしておいていると。
政治には裏も表もございますものね、表はヒロインに任せて、裏を悪役令嬢である私にさせると言うのが第二王子の思惑でございましたのよ。
まあ、その策はうまくいくのですけれども、それが分かるのは『ディズボード ドゥズィエム』が出てからでございました。
私がお気に入りの宮廷薬師が暗部の長になるストーリーもドゥズィエムで発覚することでございますわ。
ドゥズィエムでは私は暗部の一人として活躍しているという設定となっておりました。つまり、私の婚約者となる予定になっている第二王子が公式の推しということなのでございましょう。
まあ、他のキャラクターではストーリーが膨らまなかったのかもしれませんが、そのような勘繰りをするのは下賤でございますわね。
ドゥズィエムの中では、ヒロインが第二王子を攻略しないままの状態で、第二王子が次期国王に決定したと言う設定で始まりますの。けれども私の悪事はバレてしまい、私は領地に謹慎という前提で暗部に加わっているという設定になっております。
多少強引ではございますが、続編を作るにはこのような強引な設定も必要だったのでございましょう。
その中で、ヒロインが宮廷薬師を攻略しなかった場合、そして、ヒロインが第二王子を攻略した場合にのみ出てくる情報なのですが、暗部の長になった宮廷薬師の隣には側近となる女性がいるのです。
ゲーマーの間ではそれが前作の悪役令嬢なのではないかと噂されておりました。
つまりですよ、私が想いを遂げるためには、このまま第二王子の婚約者となり完璧超人になりつつも、ヒロインに蹴落とされなければいけないということになりますわね。
なんということなのでしょうか。確かに暗部の長となる彼を支えるのにものぐさの前世の私では駄目なことはわかりますが、あの悪役令嬢になれるかと言われると、何度も申しますが無理なのではないでしょうか……。
応援ありがとうございます!
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