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この世界に酷似した国取りゲームの代償は命
14 重くて軽いお話し(セイラ視点+後半アルスデヤ視点)
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あれは私が9歳になったかならないぐらい、エドワード様が10歳の初陣の直後の時です。
「エディお兄様、どこに行かれますの?」
そう言った幼い私に、馬車に乗り込もうとしたお兄様は私のほうに駆け寄ってきて頭を撫でて困ったように眉を寄せて口を開く。
「今日から僕はリブラ家の息子になるんだ。僕をかばって死んだリシュー様の代わりにリブラの子供になるんだ」
「セイラを置いていきますの?」
「ごめんね」
そう言って私を抱きしめてお兄様は一瞬だけ強く力を込めた。
「大丈夫だよ。僕たちは12公爵家の子供だもの。どこの家の子供でも、一緒だよ」
その言葉を言って離れていくお兄様の背中を私は何も言えずにじっと見続けて、馬車に乗り込んだお兄様がドアの向こうに姿を消して、出発した馬車が見えなくなるその瞬間までずっと見続けていた。
次に会ったお兄様は、もうお兄様ではなく、エドワード様だった。
言われたように兄弟の様に他の家の子供と一緒に過ごすことはできた。けれども家に帰ってもお兄様はいない。
悲しくて寂しくて、けれども私も婚約が決まるなど色々ございましたので悲しみ続ける暇もなくなりまして、結局エドワード様は私を昔のまま「セイラ」と呼んでくださいますが、私は「エドワード様」と呼び方を改めることになりました。
「と、まあそんな感じですわね」
一分ほどの時間で語られる程度の昔話に、聞いていたアルスデヤ様・ペレト様・フロレーテ様がガクンと体を揺らしました。
本日はパジャマパーティーで、お部屋はペレト様のところにお邪魔しております。
南国風と言えばいいのでしょうか?なんだかあまり見ない意匠のインテリアに皆様も興味津々だったのですが、夕食も食べ終わり早速といった具合に私とエドワード様の過去の話をすることになってしまいました。
「軽い!軽すぎるヨ!その亡くなったリシュー様というのはどんな人だったネ!?」
思わずなのでしょうが、ペレト様が顔を近づけて真に迫ったご様子で尋ねていらっしゃいました。
そのご様子にそんなに気になる事なのかとおもいつつも、冷静にお答えするために口を開く。
「リシュー様ですか?そうですね穏やかな方でした。戦闘でも仲間をかばうことで有名で、いつか人をかばって死ぬと年長の方より注意を受けていたのですが、初陣のエドワード様をかばって亡くなってしまいましたの。エドワード様が死に狂いということはその時まだ判明しておりませんでしたから、運が悪かったとしか言いようがございません」
頬に手を当てて、本当に残念に思いながら溜息をつくと、3人は微妙にひきつった口元を直すために両手でほっぺたをグニグニしていらっしゃいます。
「そういえば、エドワード様が今のような話し方になったのは養子に入ってからですわ」
「ど、どうしてヨ?」
「リシュー様は女性だったのですが、リシュー様のお母様がエドワード様に女装や女性の口調を強要なさったようですの」
私に言葉に3人が硬直し、唐突になんというかワタワタとし始めた。
「そ、それはっその、だ、大丈夫ですの?その、リシュー様のお母様の精神状態は…」
「その二点以外は特に問題ございませんし、エドワード様もあっさり受け入れたご様子ですので特に問題はございませんわよ?」
そう言った私に流石に何か思うことがあったのか、フロレーテ様が私の両肩に手を置いて首を横に振っております。
「それは精神的に疾患がある可能性がありますわ。早急にしかるべき措置を取ったほうがよろしいと進言いたします」
「そうですか?でも、もうお亡くなりになりましたので無理ですわね」
「「「は!?」」」
「2年前でしたかしら。魔物討伐の際にお亡くなりになりました。お強い方でしたのに残念でしたわ」
「……命が軽すぎるのぅ」
肩に乗せられた手は力が強くなった後にヘナヘナと力が抜けてフロレーテ様は床にペタンと座り込み、アルスデヤ様は額に手を当てて首を左右に振っている。
ペレト様は幾分顔色が悪いまま、眉間にしわを寄せて手近にあったクッションを引き寄せて胸の前で抱きかかえていらっしゃいます。
「そもそも、我ら12公爵家の者は寿命が極端に短いのですよ?生きてもせいぜい45歳ぐらいでしょうか?大体は40歳ぐらいで戦死しますわ。これには加護に体が耐えきれなくなったですとか、戦場で気が狂ったとか様々な意見がありますが、私どもは寿命と呼んでおります」
そう、12公爵家は代替わりも激しいため、一般貴族はいつ代替わりしたのかなど正確には把握していないのではないでしょうか?
「12公爵家の子供は10歳で戦場に立ちます。初陣にはフォロー役をつけられますが、まあエドワード様の時は不運だったというべきでしょう。リシュー様は当時17歳でいらっしゃいました。一人娘でいらっしゃいましたし、子供を作るよりは他の家より養子を取ったほうがいいという結論に至ったようです。もっとも、跡取り娘の私もカイン様との婚姻が決まってしまったので、我が家に跡取りがいなくなってしまいますでしょう?他家より養子をとるという話しもありましたが、両親がまだ若いということで新しく子供を作るという方法で落ち着いたようです。ですので私には今年3歳の弟がおりますのよ」
一気に言って用意されたお茶を飲む。甘茶というのは何度か飲ませていただきましたが、驚くほど甘いのに砂糖を使っていないという不思議なお茶ですね。
「なるほどのう。なんというか二人の雰囲気が似ているような気がして探りを入れたが、思いのほか重い出来事を思った以上に軽く言われてしまったのう」
ぐったりとローテーブルに肘をついてそこに顎を載せたアスルデヤ様に私によりかかるような形でぐったりしているフロレーテ様が何度もうなずく。
そんなに重い話だったでしょうか?
もう一度甘茶を飲みながら3人を見渡す。
なんというか、力の抜けた…まあ、わかりやすく言うと威厳のないご様子ですので、ここが外でなくてよかったと今更ながらに思ってしまいますわね。
「まあよい。12公爵家の内部事情は妾達には計り知れないほど狂っているというのはよく分かったしの」
「そうですね、あまりにも……異質ですわ」
「予想外ネ。セイラ様達が朗らかだからそんな状況とは思わなかったヨ」
それぞれ感想を言った後、時間も時間なので着替えを兼ねて順番にお風呂に入ることになりました。
ちなみに私どもの部屋もそうですが、この部屋にも湯船のあるバスルームがございます。留学生には湯船につかる習慣のお国の方もいますので、どの部屋にも設置されております。
私どもの寮の部屋になぜあるのかと言えば、個別で湯を浴びることが出来たほうが周囲を気にせず血の汚れなどが落とせますので、割と早期に取り入れられましたのよ。
さて、これは何とも困ったのう。妾としてはこの国の12公爵家のことが垣間見れてセイラ様へのつてが出来ればよかったのじゃが、これはあまりにも重い。
このようなことを日常の様にとらえる12公爵家の者は皆、狂っているのであろうな。この国の貴族を含んだ国民の平均寿命は80を超えているはず。その半分程度の寿命しかないなど、異常以外の何物でもない。
だが、話すセイラ様の様子に演じている様子もなく、構えている様子も気にしている様子もない。本当に身近な当たり前のことなのだろう。
「前回も思ったのだが、セイラ様の寝着はいささか色気が足りぬのではないか?」
「そうですか?」
「そうネ!私のネグリジェを貸すヨ?」
風呂の時間を取ったおかげでペレト様もフロレーテ様も心の切り替えが出来たようじゃな。
セイラ様の寝着は少しゆったりとした長袖の綿のネグリジェに、同じ素材のふくらはぎまで覆うドロワーズ。胸元はリボンで結ばれているが全体的に色気が足りない。
妾はもちろん薄手のネグリジェにショーツじゃ。ペレト様は民族衣装の寝間着で胸のみを覆う布と腰から下を覆う薄いドロワーズ。ちょっとおなかが冷えてしまわないか心配じゃの。
フロレーテ様はネグリジェ自体は綿で作られているが薄めの生地でレースやリボンは使われておる。ドロワーズはおそらく短いものを穿いているようじゃな。
やはり一番色気がないのはセイラ様じゃ。儚げな美少女の見た目のせいで誤魔化されそうになるが、これは色気がない。
「ペレト様のは寝着としてあまりにも薄すぎますわ。そのようなものを着ているときに強襲されたらどうするのですか」
「普通そのようなことは考えませんわ!それに枕の下に仕込むなどできますでしょう」
うむ、フロレーテ様もなかなかに王族教育が染みついておるの。
「そりゃあ、部屋にはいろいろ仕込んでおりますけれど、そのような恰好では戦いにくくはありませんか?」
「うむ、寝る時ぐらい戦うことを忘れてもよいのではないかの?」
「寝てる時が一番無防備で危険なんですのよ」
力を込めて言われて、確かにとは思うがそれとこれとは別問題じゃの。
「ではこうしよう。妾達はまあ、身長は差があるが体形は大して変わらぬ、今日だけはペレト様の寝着を借りるというのはいかがかの?」
「いいネ!今すぐアタシのネグリジェを持ってこさせるヨ!」
そう言ってペレト様は侍女にネグリジェをすべて持ってくるように指示を出す。
「わっ私も着るのですか!?」
「うむ、こうなったら皆で同じ意匠のものを着るのも良い思い出というものじゃ」
慌てるフロレーテ様の肩に手を置いてにっこりと言えば色々葛藤したあと、こくりとうなずいてくれた。
あとはセイラ様なのじゃが……。と思ってセイラ様を見ると、寝着の中からどこに仕込んでいたのかというような量の武器が出てきて思わず顔が引きつってしまう。
「ん?ああ、ごめんなさい。これは護身用であって皆様を害する目的で持ち込んでいるわけではございませんのよ」
「それはわかっておるが……よくもまあ、これほど仕込んでおったの」
「もし襲われたら私が身を挺して皆様をお守りしようと思って、少し気合を入れすぎてしまいましたわね」
「そ、そうであるか…」
やはりセイラ様の思考回路は妾達と違うようじゃが、とりあえずネグリジェに着替えてくれることに納得はしてくれたようじゃな。
「………綺麗です」
「………予想以上ネ」
「………似合うのう」
「そうですか?」
蒼白い肌に合わせて黒の透け感のあるネグリジェを皆で選んだのじゃが、セイラ様に似合いすぎて思わず言葉を失ってしもうた。
「エディお兄様、どこに行かれますの?」
そう言った幼い私に、馬車に乗り込もうとしたお兄様は私のほうに駆け寄ってきて頭を撫でて困ったように眉を寄せて口を開く。
「今日から僕はリブラ家の息子になるんだ。僕をかばって死んだリシュー様の代わりにリブラの子供になるんだ」
「セイラを置いていきますの?」
「ごめんね」
そう言って私を抱きしめてお兄様は一瞬だけ強く力を込めた。
「大丈夫だよ。僕たちは12公爵家の子供だもの。どこの家の子供でも、一緒だよ」
その言葉を言って離れていくお兄様の背中を私は何も言えずにじっと見続けて、馬車に乗り込んだお兄様がドアの向こうに姿を消して、出発した馬車が見えなくなるその瞬間までずっと見続けていた。
次に会ったお兄様は、もうお兄様ではなく、エドワード様だった。
言われたように兄弟の様に他の家の子供と一緒に過ごすことはできた。けれども家に帰ってもお兄様はいない。
悲しくて寂しくて、けれども私も婚約が決まるなど色々ございましたので悲しみ続ける暇もなくなりまして、結局エドワード様は私を昔のまま「セイラ」と呼んでくださいますが、私は「エドワード様」と呼び方を改めることになりました。
「と、まあそんな感じですわね」
一分ほどの時間で語られる程度の昔話に、聞いていたアルスデヤ様・ペレト様・フロレーテ様がガクンと体を揺らしました。
本日はパジャマパーティーで、お部屋はペレト様のところにお邪魔しております。
南国風と言えばいいのでしょうか?なんだかあまり見ない意匠のインテリアに皆様も興味津々だったのですが、夕食も食べ終わり早速といった具合に私とエドワード様の過去の話をすることになってしまいました。
「軽い!軽すぎるヨ!その亡くなったリシュー様というのはどんな人だったネ!?」
思わずなのでしょうが、ペレト様が顔を近づけて真に迫ったご様子で尋ねていらっしゃいました。
そのご様子にそんなに気になる事なのかとおもいつつも、冷静にお答えするために口を開く。
「リシュー様ですか?そうですね穏やかな方でした。戦闘でも仲間をかばうことで有名で、いつか人をかばって死ぬと年長の方より注意を受けていたのですが、初陣のエドワード様をかばって亡くなってしまいましたの。エドワード様が死に狂いということはその時まだ判明しておりませんでしたから、運が悪かったとしか言いようがございません」
頬に手を当てて、本当に残念に思いながら溜息をつくと、3人は微妙にひきつった口元を直すために両手でほっぺたをグニグニしていらっしゃいます。
「そういえば、エドワード様が今のような話し方になったのは養子に入ってからですわ」
「ど、どうしてヨ?」
「リシュー様は女性だったのですが、リシュー様のお母様がエドワード様に女装や女性の口調を強要なさったようですの」
私に言葉に3人が硬直し、唐突になんというかワタワタとし始めた。
「そ、それはっその、だ、大丈夫ですの?その、リシュー様のお母様の精神状態は…」
「その二点以外は特に問題ございませんし、エドワード様もあっさり受け入れたご様子ですので特に問題はございませんわよ?」
そう言った私に流石に何か思うことがあったのか、フロレーテ様が私の両肩に手を置いて首を横に振っております。
「それは精神的に疾患がある可能性がありますわ。早急にしかるべき措置を取ったほうがよろしいと進言いたします」
「そうですか?でも、もうお亡くなりになりましたので無理ですわね」
「「「は!?」」」
「2年前でしたかしら。魔物討伐の際にお亡くなりになりました。お強い方でしたのに残念でしたわ」
「……命が軽すぎるのぅ」
肩に乗せられた手は力が強くなった後にヘナヘナと力が抜けてフロレーテ様は床にペタンと座り込み、アルスデヤ様は額に手を当てて首を左右に振っている。
ペレト様は幾分顔色が悪いまま、眉間にしわを寄せて手近にあったクッションを引き寄せて胸の前で抱きかかえていらっしゃいます。
「そもそも、我ら12公爵家の者は寿命が極端に短いのですよ?生きてもせいぜい45歳ぐらいでしょうか?大体は40歳ぐらいで戦死しますわ。これには加護に体が耐えきれなくなったですとか、戦場で気が狂ったとか様々な意見がありますが、私どもは寿命と呼んでおります」
そう、12公爵家は代替わりも激しいため、一般貴族はいつ代替わりしたのかなど正確には把握していないのではないでしょうか?
「12公爵家の子供は10歳で戦場に立ちます。初陣にはフォロー役をつけられますが、まあエドワード様の時は不運だったというべきでしょう。リシュー様は当時17歳でいらっしゃいました。一人娘でいらっしゃいましたし、子供を作るよりは他の家より養子を取ったほうがいいという結論に至ったようです。もっとも、跡取り娘の私もカイン様との婚姻が決まってしまったので、我が家に跡取りがいなくなってしまいますでしょう?他家より養子をとるという話しもありましたが、両親がまだ若いということで新しく子供を作るという方法で落ち着いたようです。ですので私には今年3歳の弟がおりますのよ」
一気に言って用意されたお茶を飲む。甘茶というのは何度か飲ませていただきましたが、驚くほど甘いのに砂糖を使っていないという不思議なお茶ですね。
「なるほどのう。なんというか二人の雰囲気が似ているような気がして探りを入れたが、思いのほか重い出来事を思った以上に軽く言われてしまったのう」
ぐったりとローテーブルに肘をついてそこに顎を載せたアスルデヤ様に私によりかかるような形でぐったりしているフロレーテ様が何度もうなずく。
そんなに重い話だったでしょうか?
もう一度甘茶を飲みながら3人を見渡す。
なんというか、力の抜けた…まあ、わかりやすく言うと威厳のないご様子ですので、ここが外でなくてよかったと今更ながらに思ってしまいますわね。
「まあよい。12公爵家の内部事情は妾達には計り知れないほど狂っているというのはよく分かったしの」
「そうですね、あまりにも……異質ですわ」
「予想外ネ。セイラ様達が朗らかだからそんな状況とは思わなかったヨ」
それぞれ感想を言った後、時間も時間なので着替えを兼ねて順番にお風呂に入ることになりました。
ちなみに私どもの部屋もそうですが、この部屋にも湯船のあるバスルームがございます。留学生には湯船につかる習慣のお国の方もいますので、どの部屋にも設置されております。
私どもの寮の部屋になぜあるのかと言えば、個別で湯を浴びることが出来たほうが周囲を気にせず血の汚れなどが落とせますので、割と早期に取り入れられましたのよ。
さて、これは何とも困ったのう。妾としてはこの国の12公爵家のことが垣間見れてセイラ様へのつてが出来ればよかったのじゃが、これはあまりにも重い。
このようなことを日常の様にとらえる12公爵家の者は皆、狂っているのであろうな。この国の貴族を含んだ国民の平均寿命は80を超えているはず。その半分程度の寿命しかないなど、異常以外の何物でもない。
だが、話すセイラ様の様子に演じている様子もなく、構えている様子も気にしている様子もない。本当に身近な当たり前のことなのだろう。
「前回も思ったのだが、セイラ様の寝着はいささか色気が足りぬのではないか?」
「そうですか?」
「そうネ!私のネグリジェを貸すヨ?」
風呂の時間を取ったおかげでペレト様もフロレーテ様も心の切り替えが出来たようじゃな。
セイラ様の寝着は少しゆったりとした長袖の綿のネグリジェに、同じ素材のふくらはぎまで覆うドロワーズ。胸元はリボンで結ばれているが全体的に色気が足りない。
妾はもちろん薄手のネグリジェにショーツじゃ。ペレト様は民族衣装の寝間着で胸のみを覆う布と腰から下を覆う薄いドロワーズ。ちょっとおなかが冷えてしまわないか心配じゃの。
フロレーテ様はネグリジェ自体は綿で作られているが薄めの生地でレースやリボンは使われておる。ドロワーズはおそらく短いものを穿いているようじゃな。
やはり一番色気がないのはセイラ様じゃ。儚げな美少女の見た目のせいで誤魔化されそうになるが、これは色気がない。
「ペレト様のは寝着としてあまりにも薄すぎますわ。そのようなものを着ているときに強襲されたらどうするのですか」
「普通そのようなことは考えませんわ!それに枕の下に仕込むなどできますでしょう」
うむ、フロレーテ様もなかなかに王族教育が染みついておるの。
「そりゃあ、部屋にはいろいろ仕込んでおりますけれど、そのような恰好では戦いにくくはありませんか?」
「うむ、寝る時ぐらい戦うことを忘れてもよいのではないかの?」
「寝てる時が一番無防備で危険なんですのよ」
力を込めて言われて、確かにとは思うがそれとこれとは別問題じゃの。
「ではこうしよう。妾達はまあ、身長は差があるが体形は大して変わらぬ、今日だけはペレト様の寝着を借りるというのはいかがかの?」
「いいネ!今すぐアタシのネグリジェを持ってこさせるヨ!」
そう言ってペレト様は侍女にネグリジェをすべて持ってくるように指示を出す。
「わっ私も着るのですか!?」
「うむ、こうなったら皆で同じ意匠のものを着るのも良い思い出というものじゃ」
慌てるフロレーテ様の肩に手を置いてにっこりと言えば色々葛藤したあと、こくりとうなずいてくれた。
あとはセイラ様なのじゃが……。と思ってセイラ様を見ると、寝着の中からどこに仕込んでいたのかというような量の武器が出てきて思わず顔が引きつってしまう。
「ん?ああ、ごめんなさい。これは護身用であって皆様を害する目的で持ち込んでいるわけではございませんのよ」
「それはわかっておるが……よくもまあ、これほど仕込んでおったの」
「もし襲われたら私が身を挺して皆様をお守りしようと思って、少し気合を入れすぎてしまいましたわね」
「そ、そうであるか…」
やはりセイラ様の思考回路は妾達と違うようじゃが、とりあえずネグリジェに着替えてくれることに納得はしてくれたようじゃな。
「………綺麗です」
「………予想以上ネ」
「………似合うのう」
「そうですか?」
蒼白い肌に合わせて黒の透け感のあるネグリジェを皆で選んだのじゃが、セイラ様に似合いすぎて思わず言葉を失ってしもうた。
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