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第4章. ワリメ大論戦
040. 四里之香織の反乱
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内閣総理大臣指名選挙と云うのは長ったらしいせいか、シンプルに〈首班指名〉と呼ばれていることが多い。最近は〈総理指名〉と云う用語を使う流れもあるが、いずれにせよそれは衆議院と参議院で別々に行われる。
そのうち衆議院で大荒れとなった。得票数1位が自由共生党・筋好太郎の225票、2位がジャパニーズ主権党・金珠華瑠奈の217票、3位がワリメ歓迎党・貧乳推しスペルマンの11票、そして白紙が10票だったのだ。
金珠議員は座席から立ち上がって金切り声を発する。
「誰よ誰よ、誰なのよ! 造反するなんて、絶対の絶対に許さないわよ!」
真っ先に疑われたのは、自共党を離党して主権党入りした10人だが、彼らは全員が金珠に投票していたので無実だ。
「今ならまだ間に合うのよ!! 決選投票では、ちゃんとアタクシに入れなさい。そうすれば、なかったことにしますわ!」
「いやよ!!」
金珠議員に向かって叫んだのは、同じ党に所属している四里之議員だった。
「えーっ、香織ちゃん、どうしちゃったのよ!?」
「どうしちゃったも、こうしちゃったもないわ! 私は絶対の絶対に、あんたなんかを総理大臣に指名しません! ジャパン初の女性総理になるのは政界の美少女と云われるこの私、永遠の14歳・四里之香織なんだからね!」
「なぁーんですってえ!!」
これまでずっと可愛がってきた後輩議員が、いきなりの離反宣告を突きつけてきたので、金珠は驚きを通り越して、烈火のごとく怒りの表情を露わにする。
「いくら穴留朕歩に、あんなにも汚くて臭いドロドロをぶっかけられたからって、そこまで血迷ってはいけません。ねっ、考え直して頂戴、お願いだから」
「いや!!」
「ぶん殴るわよ!」
「どうぞ。でも、テレビで中継放送されていることをお忘れかしら」
「うっ、それもそうねえ……」
四里之に諭された金珠は、振り上げた拳を座席の天面に叩きつけることで、大きな鬱憤を晴らした。
決選投票では、四里之議員たち離反組10人のうち2人だけが態度をあらためたが、残り8人とワリメ歓迎党の11人は白票を投じた。その結果6票の差で筋好が指名された。
また参議院では当初の想定通り金珠が選出されて、これが衆議院の結果と異なるため両院協議会が開かれたものの、そこでも意見は一致せず〈衆議院の優越〉と云う特別な決まりに従い、筋好太郎が第110代・内閣総理大臣に決まった。
四里之香織が主導する造反劇が思わぬ結末をもたらしたわけだが、政治評論家たちは「政権交代の目前で、それを妨げた四里之議員による行為の是非は、有権者に問わねばなりません」などと述べている。
また首班指名で最後までジャパニーズ主権党の党首・金珠華瑠奈に離反する態度を貫いた四里之議員を含む8人は党を除名され無所属となった。
ネット上ではキーワード〈四里之香織の反乱〉がトレンド入りし、テレビ各局でも連日連夜『そのとき票が白かった、造反議員・四里之香織!』と云ったタイトルの緊急特別生番組やワイドショー番組などを放送している。
引き続き政権与党の第1党になることができた自由共生党内の若手議員らは「筋好内閣の再生に貢献した香織ちゃんを自共党に迎え入れるべきだ」と声を上げたため、世間一般でも〈永遠の14歳美少女・香織ちゃん総理〉の爆誕に期待感を抱いていると云う有り様だ。
これを受けて開かれた記者会見の席上で「自共党からの誘いを受けますか?」と質問された四里之は、きっぱり「いいえ、それは絶対の絶対にありません。私たちは新党を結成して政権を取りにいきますから」と美しい顔を声で答えた。
自共党では中堅議員やベテランの古参議員たちの間で「そもそも元を辿って考えれば、穴留前総理の射精があったればこその第2次・筋好内閣発足なのだ。四里之は眼中にない」などと屁理屈を蔓延させている。
そして政治評論家たちは「たとえ与党第1党でも1枚岩でないことを物語っているのです」とか云っている。
そのうち衆議院で大荒れとなった。得票数1位が自由共生党・筋好太郎の225票、2位がジャパニーズ主権党・金珠華瑠奈の217票、3位がワリメ歓迎党・貧乳推しスペルマンの11票、そして白紙が10票だったのだ。
金珠議員は座席から立ち上がって金切り声を発する。
「誰よ誰よ、誰なのよ! 造反するなんて、絶対の絶対に許さないわよ!」
真っ先に疑われたのは、自共党を離党して主権党入りした10人だが、彼らは全員が金珠に投票していたので無実だ。
「今ならまだ間に合うのよ!! 決選投票では、ちゃんとアタクシに入れなさい。そうすれば、なかったことにしますわ!」
「いやよ!!」
金珠議員に向かって叫んだのは、同じ党に所属している四里之議員だった。
「えーっ、香織ちゃん、どうしちゃったのよ!?」
「どうしちゃったも、こうしちゃったもないわ! 私は絶対の絶対に、あんたなんかを総理大臣に指名しません! ジャパン初の女性総理になるのは政界の美少女と云われるこの私、永遠の14歳・四里之香織なんだからね!」
「なぁーんですってえ!!」
これまでずっと可愛がってきた後輩議員が、いきなりの離反宣告を突きつけてきたので、金珠は驚きを通り越して、烈火のごとく怒りの表情を露わにする。
「いくら穴留朕歩に、あんなにも汚くて臭いドロドロをぶっかけられたからって、そこまで血迷ってはいけません。ねっ、考え直して頂戴、お願いだから」
「いや!!」
「ぶん殴るわよ!」
「どうぞ。でも、テレビで中継放送されていることをお忘れかしら」
「うっ、それもそうねえ……」
四里之に諭された金珠は、振り上げた拳を座席の天面に叩きつけることで、大きな鬱憤を晴らした。
決選投票では、四里之議員たち離反組10人のうち2人だけが態度をあらためたが、残り8人とワリメ歓迎党の11人は白票を投じた。その結果6票の差で筋好が指名された。
また参議院では当初の想定通り金珠が選出されて、これが衆議院の結果と異なるため両院協議会が開かれたものの、そこでも意見は一致せず〈衆議院の優越〉と云う特別な決まりに従い、筋好太郎が第110代・内閣総理大臣に決まった。
四里之香織が主導する造反劇が思わぬ結末をもたらしたわけだが、政治評論家たちは「政権交代の目前で、それを妨げた四里之議員による行為の是非は、有権者に問わねばなりません」などと述べている。
また首班指名で最後までジャパニーズ主権党の党首・金珠華瑠奈に離反する態度を貫いた四里之議員を含む8人は党を除名され無所属となった。
ネット上ではキーワード〈四里之香織の反乱〉がトレンド入りし、テレビ各局でも連日連夜『そのとき票が白かった、造反議員・四里之香織!』と云ったタイトルの緊急特別生番組やワイドショー番組などを放送している。
引き続き政権与党の第1党になることができた自由共生党内の若手議員らは「筋好内閣の再生に貢献した香織ちゃんを自共党に迎え入れるべきだ」と声を上げたため、世間一般でも〈永遠の14歳美少女・香織ちゃん総理〉の爆誕に期待感を抱いていると云う有り様だ。
これを受けて開かれた記者会見の席上で「自共党からの誘いを受けますか?」と質問された四里之は、きっぱり「いいえ、それは絶対の絶対にありません。私たちは新党を結成して政権を取りにいきますから」と美しい顔を声で答えた。
自共党では中堅議員やベテランの古参議員たちの間で「そもそも元を辿って考えれば、穴留前総理の射精があったればこその第2次・筋好内閣発足なのだ。四里之は眼中にない」などと屁理屈を蔓延させている。
そして政治評論家たちは「たとえ与党第1党でも1枚岩でないことを物語っているのです」とか云っている。
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