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第5章. ジャパン経済の復活
052. 超高速ワリメ通信
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ジャパンは、眠れるサーベルタイガーと呼ぶに値する軍事大国・北米連邦を相手にした〈パシフィック大戦〉で苦汁の敗北を喫したものの、それからは「ジャパニーズはやればできるもん」と魂で叫びつつ国民総動員24時間体制の不眠不休で戦い、そう云うテレビコマーシャル、略称〈TV CM〉も続々と流し続けて、働きアリに負けず劣らず働きづくめで働きに働いた。痛みに耐えてよくがんばった。そう云う奮闘努力の甲斐あってジャパン経済の高度な成長ぶりは世界各国の度肝を抜くような破竹の勢いと云うか爆竹のように爆ぜて伸び上がり、敗戦から22年を経て国民総生産、略称〈GNP〉がワールドでNo.2の座に躍り出るまでに至った。
だがしかし、1990年代になってジャパン神話はカタストロフィーで雪崩を打って弾け飛び、地価・住宅価格・株価・ジャパンドル・信用など、落ちてもらいたくない項目のありとあらゆる値が大暴落を始める。
株価を上げたいために発動機つき2輪車、略称〈単車〉を持ち上げた総理大臣もいたが、無駄なパフォーマンスに終わった。そして国内総生産、略称〈GDP〉は大中華国に抜かれワイマール国にも抜かれて、現在のところワールドでNo.4にまで落ちてしまっている。ジャパンの識者には「ゆとり教育が悪かった!」とか「国語力が国力の源だから国語の学習量を増やせ!」とか云っている輩も多いが、云っているだけでは根本的な解決にならない。
そんなこんなで長年の低迷が続いてきたジャパン経済だが、ここへきて復活の兆しを見せ始めている。
これについて専門家は「第1ジャパン帝国大学工学部・銭轡歪朗準教授が発表した論文『W funds really exist!(ジャパニーズ訳:ダブリュー資金は本当にあった!)』の影響が大きかった」と云う見解を示したが、もう1つ無視できない要素がある。それが〈超高速ワリメ通信〉だ。ジャパンが誇るこの新技術に対する期待感の大きさは、専門家による「これは神武景気の800倍に相当する効果があるに違いない」と云う自信に満ちた言葉が示す通りだ。
ネット界隈でも「超高速ワリメ通信技術マジすげえ!」とか「オレ絶対の絶対に乗り換える!」と云う声が多い。
株式会社ハードコアバンク会長・損御供も太鼓判を押すと云うか、太鼓そのものを叩いている。損は「実用化できたら超高速ワリメ通信は、第6世代移動通信システム、略称〈6G〉の通信速度の800倍以上は余裕で出せまっせ。いや絶対の絶対に出したるでえ。わいワクワクしてきたぞお」などとハイテンションの央坂弁で話す有り様だ。
そして云うまでもないことだが〈超高速ワリメ通信〉が各種SNSでトレンド入りしている。
絵露井家の居間でも例によって男女5人が極上飯に舌鼓を打ちながら、大画面256型テレビスクリーンでJHKの特別番組「徹底解説・超高速ワリメ通信」を見ている。
損が生出演して、彼の戦略を詳しく話しているところだ。
『わいらハードコアバンクは次の年明けに超高速ワリメ通信サービス、略称〈SWS〉の提供開始を目指しとります。SWS対応の新モデル、もう明日からジャパン全国どこでもショップで買えまっせ。ネット通販もやっとります。機種変更やら他社からの乗り換えやら、あと新規加入も超お勧めですわ。絶対の絶対に損させまへんで。わいが云うのもなんやけど』
『ああそうですか。では私も明日、近くのハードコアバンクのショップに行ってみようと思います』
『ホンマかいな、ありがとうさん!』
『いえどうも。えー、それはそうと、超高速ワリメ通信と云うのは、具体的にどのような通信技術なのでしょうか?』
『ああそれはなあ、ワリメの体が基地局になってくれるんや』
『は?』
『ワリメに向けて電波をビュビュビュー云うて飛ばすやろ、そしたらワリメが相手の端末にピュピュピュウって送るんや。判るかあ?』
『ああはい、判るような判らないような』
『どっちやねん!』
『あ、いえその、今日は解説ありがとうございました』
『おう、毎度おおきに!』
番組が終わり、間髪を容れずに栗花が意志を述べる。
「アタシも乗り換えるわ!」
「いや姉さん、どうせ年内はまだ超高速ワリメ通信できないんだぞ?」
「だからなに?」
「あいや、サービス始まってから、そのときにまた新機種が出るだろうし、それから買い替える方がいいと思うけどなあ」
「おいこら吾郎、ケチ臭いことを云うな! クジラ丼がまずくなる!」
助夫が怒鳴りつけるが、吾郎の実の母親である満子がかばう。
「いくら大金持ちでも無駄使いは感心できないわよ」
「そうか、判った。だがそれより、ワシは脱糞したくなった」
「ワタシもよ」
「それなら連れ糞するか?」
「そうねえ」
いい歳の助夫と満子は手をつないで居間から出て行く。
「おいおい、オレらまだ食ってる最中なんだから、糞とか云うなよ!」
「インポの青2才め、云った者勝ちだ!」
残った吾郎はあきれながらも、クジラ丼の残りを食べる。
だがしかし、1990年代になってジャパン神話はカタストロフィーで雪崩を打って弾け飛び、地価・住宅価格・株価・ジャパンドル・信用など、落ちてもらいたくない項目のありとあらゆる値が大暴落を始める。
株価を上げたいために発動機つき2輪車、略称〈単車〉を持ち上げた総理大臣もいたが、無駄なパフォーマンスに終わった。そして国内総生産、略称〈GDP〉は大中華国に抜かれワイマール国にも抜かれて、現在のところワールドでNo.4にまで落ちてしまっている。ジャパンの識者には「ゆとり教育が悪かった!」とか「国語力が国力の源だから国語の学習量を増やせ!」とか云っている輩も多いが、云っているだけでは根本的な解決にならない。
そんなこんなで長年の低迷が続いてきたジャパン経済だが、ここへきて復活の兆しを見せ始めている。
これについて専門家は「第1ジャパン帝国大学工学部・銭轡歪朗準教授が発表した論文『W funds really exist!(ジャパニーズ訳:ダブリュー資金は本当にあった!)』の影響が大きかった」と云う見解を示したが、もう1つ無視できない要素がある。それが〈超高速ワリメ通信〉だ。ジャパンが誇るこの新技術に対する期待感の大きさは、専門家による「これは神武景気の800倍に相当する効果があるに違いない」と云う自信に満ちた言葉が示す通りだ。
ネット界隈でも「超高速ワリメ通信技術マジすげえ!」とか「オレ絶対の絶対に乗り換える!」と云う声が多い。
株式会社ハードコアバンク会長・損御供も太鼓判を押すと云うか、太鼓そのものを叩いている。損は「実用化できたら超高速ワリメ通信は、第6世代移動通信システム、略称〈6G〉の通信速度の800倍以上は余裕で出せまっせ。いや絶対の絶対に出したるでえ。わいワクワクしてきたぞお」などとハイテンションの央坂弁で話す有り様だ。
そして云うまでもないことだが〈超高速ワリメ通信〉が各種SNSでトレンド入りしている。
絵露井家の居間でも例によって男女5人が極上飯に舌鼓を打ちながら、大画面256型テレビスクリーンでJHKの特別番組「徹底解説・超高速ワリメ通信」を見ている。
損が生出演して、彼の戦略を詳しく話しているところだ。
『わいらハードコアバンクは次の年明けに超高速ワリメ通信サービス、略称〈SWS〉の提供開始を目指しとります。SWS対応の新モデル、もう明日からジャパン全国どこでもショップで買えまっせ。ネット通販もやっとります。機種変更やら他社からの乗り換えやら、あと新規加入も超お勧めですわ。絶対の絶対に損させまへんで。わいが云うのもなんやけど』
『ああそうですか。では私も明日、近くのハードコアバンクのショップに行ってみようと思います』
『ホンマかいな、ありがとうさん!』
『いえどうも。えー、それはそうと、超高速ワリメ通信と云うのは、具体的にどのような通信技術なのでしょうか?』
『ああそれはなあ、ワリメの体が基地局になってくれるんや』
『は?』
『ワリメに向けて電波をビュビュビュー云うて飛ばすやろ、そしたらワリメが相手の端末にピュピュピュウって送るんや。判るかあ?』
『ああはい、判るような判らないような』
『どっちやねん!』
『あ、いえその、今日は解説ありがとうございました』
『おう、毎度おおきに!』
番組が終わり、間髪を容れずに栗花が意志を述べる。
「アタシも乗り換えるわ!」
「いや姉さん、どうせ年内はまだ超高速ワリメ通信できないんだぞ?」
「だからなに?」
「あいや、サービス始まってから、そのときにまた新機種が出るだろうし、それから買い替える方がいいと思うけどなあ」
「おいこら吾郎、ケチ臭いことを云うな! クジラ丼がまずくなる!」
助夫が怒鳴りつけるが、吾郎の実の母親である満子がかばう。
「いくら大金持ちでも無駄使いは感心できないわよ」
「そうか、判った。だがそれより、ワシは脱糞したくなった」
「ワタシもよ」
「それなら連れ糞するか?」
「そうねえ」
いい歳の助夫と満子は手をつないで居間から出て行く。
「おいおい、オレらまだ食ってる最中なんだから、糞とか云うなよ!」
「インポの青2才め、云った者勝ちだ!」
残った吾郎はあきれながらも、クジラ丼の残りを食べる。
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