この学園モノの乙女ゲームは国語が学べる!?

紅灯空呼

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第二章 男根のエキスウォーターいとビンビンだ♪

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「こんにちは、花実はなみで~す。またきました、でぇす!」

 花実は、明るく元気に文字部の部室へ入った。

「いらっしゃい」
「ああ、よくきたな。花実」

 笑顔で迎えてくれたのは、先にきていた俗人ぞくと白夜はくやだ。
 今日の増鏡ますかがみ高等学校は、全学年とも午前中で終了した。花実はまた一人で食堂へ行き、昼食を済ませた。今日はもちろん定食B。予想通りのアタリだった。そのため上機嫌で意気揚々と、手に一冊のノートを握って部室までやってきたのだ。

天里てんり先輩も、今日は午前中までだったんですか?」
「そうだぞ。二、三年は今日が始業式で、その後は新クラスでの初ホームルームだけだった」
「花実ちゃん、もしかして今日も食堂に行ってみたの?」
「はい。定食Bは思った通り、ちゃんとアタリでしたよぉ」
「あはは、アタリだったんだ。それはよかったね」
「だが、食堂も来週からは混むぞ。覚悟しておくがよい」

 今日は金曜日。月曜日からは通常授業が始まる。もちろん午後の授業もある。

「あっそうそう。来週からは、お昼にパンの販売もされるらしいよ」
「パン?」
「そうだ。パンだ。食堂のすぐ近くで販売されるぞ」
「へぇ~。パン屋さんもあるのかぁ~」

 花実は、次はパンにしようと思った。

「あ、先輩、酢雀すざく君、これ見てください!」
「どうした?」
「えっ、何?」
「私、昨日家に帰ってから古語辞典と国語辞典で語句を調べました。それと和歌も詠んでみたんですぅ」

 花実が、手に持っていたノートを開いて、白夜たちに見せる。早く見せたくて、ウズウズしていたのだ。


 〈酢雀君の和歌♪〉
 紅きつの 常世の色を 白夜見ぬ
   見せて貰おう 君の男根
 ※「つの」は掛詞で「津の」と「ツノ」を掛けている。

 〈私の和歌♪〉
 はなみして 先輩たちと 男根の
   エキスウォーター いとビンビンだ
 ※「はなみ」は掛詞で「花見」と「花実」を掛けている。

 〈語句〉
 津 [名詞] 船着き場。渡し場。港。
 常世[名詞] 永遠。「常世の国」の略。
 色 [名詞] 色彩。表情。風情。喪服。優しさ。恋愛。
 男根[名詞] 男性器。陰茎。
 花 [名詞] 草木の花。梅の花。桜の花。
 いと[副詞] たいそう。非常に。


「へえぇ。花実ちゃんの名前とお花見を掛けたのかあ。頑張ったね、花実ちゃん」
「昨日の休憩での情景を詠んだのだな。よくできているぞ、花実」
「えへへ」

 嬉しそうに照れている花実。いとビンビンだ!

「それで私、酢雀君にお願いがあるんですぅ」
「ん、何かな?」
「この和歌、歌ってくださいっ!」

 花実が、ノートに書いてある〈私の和歌♪〉の箇所をビシッと指差した。とても気合いが入っている。

「ははは、それはいいな。俗人歌ったらどうだ?」
「もちろんいいですよ。あ、みんなで歌ってみるのは、どうかなあ?」
「そうだな。それも面白そうだ」
「わぁ、楽しそぉう。先輩、酢雀君、お願いしまっす」

 三人は円になって立った、というより三人だから正三角形だ。

「ようし、それじゃ最初は僕が一人で歌うから、リズムを覚えてね。その後で、せいのって言うから、みんなで揃って歌い出すんだよ」
「よし、分かった」
「は~い、了解でぇす」

 俗人が独唱を始める。

 ――はなみしてぇ~ 先輩たちとぉ 男根のぉ~♪
 ――エキスウォータ~ いとビンビンだぁ~♪

「せいのっ!」

 ――はなみしてぇ~♪ 先輩たちとぉ 男根のぉ~♪♪
 ――エキスウォータ~♪ いとビンビンだぁ~~♪

 三人の声がピタリと合って、とてもうまく歌えた。

「わあぁい、歌えた歌えた。凄いな、楽しいなぁ~。わぁ~い♪」

 花実がピョンピョンと跳ねながら、大喜びしている。俗人と白夜も嬉しくなり、ついつい笑みがこぼれる。

「凄く楽しかったね」
「そうだな。歌を歌ってこんなに楽しくなったのは何年ぶりだろうか」
「私も楽しぃですぅ~。すっごく、すっごく、すっごく!」

 すっごくと言うたびに、両手を握り締めて上下にフリフリとさせる花実だ。

「うん。僕、花実ちゃんのこの和歌、大好きになったよ」
「ははは。花実、よかったな。増鏡高の歌人・酢雀俗人に認められたぞ」
「わぁ~い、やたやたぁ~」

 花実がまたピョンピョンと跳ねる。まるでウサギのようだ。
 短歌一首でここまで楽しめるとは、何とも素晴らしいことである。

「先輩。これも書いてきました、よっ!!」

 花実が鞄から入部届を取り出して、広げて白夜に差し出す。

「よし。これで花実も正式に文字部の部員だな」

 クラブ活動見学は来週末までだから急ぐ必要はない。
 だが白夜は、念押しすることもなくすぐに受け取った。花実の強い入部の意欲が、もう十分に伝わっているのだ。

「花実ちゃん、僕も入部したんだよ。よろしくね」
「あ、はい酢雀君、天里先輩、どうぞよろしくお願いします」

 花実は挨拶をしながら二人に向かって深々とお辞儀をした。

「さて、今日の活動を始めるのだが、その前にだ」

 白夜がそう言って自分の鞄から書店の紙袋を取り出す。その中には新しい問題集が入っていた。

「花実の問題集だ。部費を使っているからお金は不要」
「え、あ、はい。ありがとぉございます」

 花実はキョトンとした顔で問題集を受け取った。

「あっ、じゃあ昨日は、私が天里先輩のを使ってしまって、先輩が問題やれなかったんですね?」
「いや、それでよかったのだ。書店で選ぶときに、最初の問題だけを立ち読みしたからな。気にする必要は全くない」
「はっはい。ありがとござまっすぅ」

 花実は嬉しそうに問題集を眺める。

 ――――――――――――――――
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 過去問やってお疲れじゃダメダメ!
 ――――――――――――――――

「でもあのう、この共通テストって、毎年一月に数十万人が受けるとかいう、あの有名な試験のことですよね?」
「あはは、花実ちゃんもやっぱりそう思ったんだね。僕もそう思って、さっき白夜先輩に聞いたんだけど、でも違ったんだよ。これはねえ、常之世とこのよ大学入学共通テストという別の試験の対策問題集なんだって」

 年明けの一大イベントでもある、あの共通テストのことではないのだ。

「そうだ。だがあくまで文字部のテーマに沿って選んだのであって、試験対策を目的としているのではない。だから常之世共通テストのことは、特に気にしなくてもよいぞ」
「はいでぇす」
「うん、それじゃ今日は三人一緒ってことで、問題をやりましょうか?」
「そうだな」
「は~い」


 問題 次の文章は、ある新聞の投書欄に掲載されたものである。これを読んで、後の問い(問1~3)にで答えよ。〔配点30〕

 つい最近のことだが、教育関係の偉いらしいオッサンが次のように言っていた。
『子供のなあ、科目の偏差値がやな、高いやとか低いやとか、やれ上がったそれ下がった、やいのやいの、どうのこうの、よおゆうたはるやろ。それあかんでぇ。あのなあ、子供はなぁ、のびのび育つ。これが一番でっさかいなあ。科目の偏差値なんかそないなもん、株価の上下とおんなしや。どおでもええっちゅうこっちゃ。まあせやけんども、男根の偏差値は別やでぇ。男根は正義や、希望や、勇気や。当たり前や。男根の偏差値は高いに限る』
 このオッサンは数日後、経済界の常にフルパワーを出す厳ついオッサン数人に囲まれて、ボッコボコにされたそうだ。だが、それはどうでもよい。
 それよりも、「男根の偏差値は高いに限る」はよく当を得ている。「株価の上下とおんなしや。どおでもええっちゅうこっちゃ」という失言を補って余りある実に素晴らしい発言だった。

 問1 「男根の偏差値は高いに限る」と発言したオッサンが、そのように言い切る根拠として信じていることは何か。
 問2 この文章の主旨を一つの文で答えよ。
 問3 「男根の偏差値は高いに限る」と発言したオッサンは、どのような人だろうか。よい人か。どう思う?
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