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二章「奥様は元魔法少女」
10. 演題:順番は大切
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大弁屋御座早漏 演題:順番は大切
たとえば二掛け三は六、三掛け二も六、で結局何にしたって順番なんてのはどっちだっておんなじじゃねえか、とまあ世の中そんないい加減な奴って結構いるんだよなぁ。
でもよ、そんなこたあねえんだぜ。いやいやほんとほんと、順番は大切だよ。
ところで今何時だ? おお、そうか、よしよし。
えー、お昼時もずいぶん過ぎたことだし、ちょいときたねえ話しても、構やしねえよな。
便所だよ便所。誰でも用を足さなきゃなんねえことってあるだろ。
入って糞して拭いて出る、これだよ、みんなそうするよな。
ところが、入って拭いて糞して出る、これだとどうなる?
え? そりゃ傍迷惑だよな。そうだろ、ぷう~んとくらぁなあ。
ほら、順番は大切じゃねえか。
(やいこら!)
おう、なんだってんだ、やかましいなあ。若いからっていきがるんじゃねえぞ。
(入って糞して拭いて出る、入って拭いて糞して出る、おんなじじゃないか)
おかしな奴だな、おめえさんはぁ。
おう、どこがおんなじだってんだ。え? どうなんだ、言ってみやがれっ!
(流してねえだろーが! どっちも傍迷惑だってぇの!)
おうっ、そうだそうだ忘れてた。こりゃあ一本とられちまったぜ。
くっそー、俺ともあろうもんがよぉ、おめえさんのような若造なんぞに。
でもよ、昔は流す仕組みがなかったんだよ、まあ今は違うわな、確かにな……。
てな訳で皆様、入って糞して拭いて流して出る。順番だけでなくやるべきことを漏らさない、これも大切。もちろん入る前に漏らしちまうのは言語道断。
いやあ下らねえこと話しちまって誠に済まねえ。
これにて本日の大弁は御仕舞いで御座早漏。
「どうだい。カラコ」
「どうって、なんですのこれ?」
「いやあ会社の忘年会でやる出し物だよ。俺はお笑いに挑戦しようと思ってね」
「へえ、あなたお笑いに興味があったんですかあ」
「いや別に興味ってほどでもないけどね。他にやることなくて。でどう?」
「どうって……ちょっと下品だと思うわよ、こんなの」
カラコは潔癖性なんだよな。そこがいいとこでもあるけど、でも融通が利かないことも多い。
「ああまあ、下品といえば留学さん」
「は?」
「ああ、いやいや。今のは忘れてくれ」
留学生さん。悪気はなかったので許してくださいね。
「あの、もしかしてシャレですか?」
「あいやいいんだ。それよりこんな内容になったのにはちゃんと理由があるんだ」
「どんな?」
「スメハラだよスメハラ」
「スメルハラスメントのことね」
そうそう。ニオイで周囲の人に迷惑をかけることだ。
「うん。実はね、今度の忘年会でやる出し物は、時事ネタ縛りにしたんだよ。出版社の人間が時事ネタに疎いようじゃダメだとか、そう言うのじゃなくて、たんなるお遊び感覚だけどね」
「そうですか。それでこんな話を」
「うん。それとね、忘年会には嫁さん・旦那・恋人も参加OKにしたんだよ。カラコも参加するかい? 来月の十二日だよ」
「そうね。行ってみようかしら」
よし参加者一人追加だ。実は俺が幹事やるんだ。わははは。
「あと漫才もやろうと思ってね。こっちはミサイル発射についてだ。そうだカラコには、でぽどんをやってもらおう。これが台本だよ」
(のっどん)おっす。オラのっどん。
(でぽどん)ちーす。でぽどんよぉ。
(ふたりで)二人そろって、みっさいるうずぅ。
(のっどん)なあでぽどん。もうじき今年も終わりやな。
(でぽどん)そやねえ。ここらで打ち上げでもやる?
(のっどん)そらええなあ。でもどこでやろか?
(でぽどん)決まっとるやないの。日本海よ~。
(ふたりで)どうも~、ありがとぉごっざしたぁ~~。
「へ(なによこれ!? ていうか、ネタ古すぎでしょ)」
「さあ、二人で練習しようか?」
「わ……私、行くのやめときます」
「え? 予定でも思いだしたのか?」
「わ……ワラビさんとちょっと」
「そうかあ。そりゃ残念だ」
「ええ私も(ふ~危ないところ)」
しまったなあ。も少し早く知らせてやるべきだった。
――とまあこうなんです
――あはははワサビさんらしいわね。でも社長さんなのに幹事って大変ねえ
――ええまあ。それでワラビさん十二月十二日はあいてます?
――だいじょうぶ、あいてるわよ
――よかった
――ねえせっかくだから、ほかにも誰かさそって女子会やりましょうよ
――まあ、いいですねえ
――あっ、カラコおばさん、こんにちわー
――まあナラオちゃん、こんにちは、元気? 寒いからカゼ気をつけてね
――はーい
――ナラオ、こんど女子会やるのよ。あんたもくる?
――いかなーい
とまあこう言う訳でカラコは俺との夫婦漫才より女子会の方を選んだのだ。
まあたまには羽を伸ばしてくるといいよ。俺って優しいなあ。わはは。
たとえば二掛け三は六、三掛け二も六、で結局何にしたって順番なんてのはどっちだっておんなじじゃねえか、とまあ世の中そんないい加減な奴って結構いるんだよなぁ。
でもよ、そんなこたあねえんだぜ。いやいやほんとほんと、順番は大切だよ。
ところで今何時だ? おお、そうか、よしよし。
えー、お昼時もずいぶん過ぎたことだし、ちょいときたねえ話しても、構やしねえよな。
便所だよ便所。誰でも用を足さなきゃなんねえことってあるだろ。
入って糞して拭いて出る、これだよ、みんなそうするよな。
ところが、入って拭いて糞して出る、これだとどうなる?
え? そりゃ傍迷惑だよな。そうだろ、ぷう~んとくらぁなあ。
ほら、順番は大切じゃねえか。
(やいこら!)
おう、なんだってんだ、やかましいなあ。若いからっていきがるんじゃねえぞ。
(入って糞して拭いて出る、入って拭いて糞して出る、おんなじじゃないか)
おかしな奴だな、おめえさんはぁ。
おう、どこがおんなじだってんだ。え? どうなんだ、言ってみやがれっ!
(流してねえだろーが! どっちも傍迷惑だってぇの!)
おうっ、そうだそうだ忘れてた。こりゃあ一本とられちまったぜ。
くっそー、俺ともあろうもんがよぉ、おめえさんのような若造なんぞに。
でもよ、昔は流す仕組みがなかったんだよ、まあ今は違うわな、確かにな……。
てな訳で皆様、入って糞して拭いて流して出る。順番だけでなくやるべきことを漏らさない、これも大切。もちろん入る前に漏らしちまうのは言語道断。
いやあ下らねえこと話しちまって誠に済まねえ。
これにて本日の大弁は御仕舞いで御座早漏。
「どうだい。カラコ」
「どうって、なんですのこれ?」
「いやあ会社の忘年会でやる出し物だよ。俺はお笑いに挑戦しようと思ってね」
「へえ、あなたお笑いに興味があったんですかあ」
「いや別に興味ってほどでもないけどね。他にやることなくて。でどう?」
「どうって……ちょっと下品だと思うわよ、こんなの」
カラコは潔癖性なんだよな。そこがいいとこでもあるけど、でも融通が利かないことも多い。
「ああまあ、下品といえば留学さん」
「は?」
「ああ、いやいや。今のは忘れてくれ」
留学生さん。悪気はなかったので許してくださいね。
「あの、もしかしてシャレですか?」
「あいやいいんだ。それよりこんな内容になったのにはちゃんと理由があるんだ」
「どんな?」
「スメハラだよスメハラ」
「スメルハラスメントのことね」
そうそう。ニオイで周囲の人に迷惑をかけることだ。
「うん。実はね、今度の忘年会でやる出し物は、時事ネタ縛りにしたんだよ。出版社の人間が時事ネタに疎いようじゃダメだとか、そう言うのじゃなくて、たんなるお遊び感覚だけどね」
「そうですか。それでこんな話を」
「うん。それとね、忘年会には嫁さん・旦那・恋人も参加OKにしたんだよ。カラコも参加するかい? 来月の十二日だよ」
「そうね。行ってみようかしら」
よし参加者一人追加だ。実は俺が幹事やるんだ。わははは。
「あと漫才もやろうと思ってね。こっちはミサイル発射についてだ。そうだカラコには、でぽどんをやってもらおう。これが台本だよ」
(のっどん)おっす。オラのっどん。
(でぽどん)ちーす。でぽどんよぉ。
(ふたりで)二人そろって、みっさいるうずぅ。
(のっどん)なあでぽどん。もうじき今年も終わりやな。
(でぽどん)そやねえ。ここらで打ち上げでもやる?
(のっどん)そらええなあ。でもどこでやろか?
(でぽどん)決まっとるやないの。日本海よ~。
(ふたりで)どうも~、ありがとぉごっざしたぁ~~。
「へ(なによこれ!? ていうか、ネタ古すぎでしょ)」
「さあ、二人で練習しようか?」
「わ……私、行くのやめときます」
「え? 予定でも思いだしたのか?」
「わ……ワラビさんとちょっと」
「そうかあ。そりゃ残念だ」
「ええ私も(ふ~危ないところ)」
しまったなあ。も少し早く知らせてやるべきだった。
――とまあこうなんです
――あはははワサビさんらしいわね。でも社長さんなのに幹事って大変ねえ
――ええまあ。それでワラビさん十二月十二日はあいてます?
――だいじょうぶ、あいてるわよ
――よかった
――ねえせっかくだから、ほかにも誰かさそって女子会やりましょうよ
――まあ、いいですねえ
――あっ、カラコおばさん、こんにちわー
――まあナラオちゃん、こんにちは、元気? 寒いからカゼ気をつけてね
――はーい
――ナラオ、こんど女子会やるのよ。あんたもくる?
――いかなーい
とまあこう言う訳でカラコは俺との夫婦漫才より女子会の方を選んだのだ。
まあたまには羽を伸ばしてくるといいよ。俺って優しいなあ。わはは。
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