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八章「ワラビでございまーす」
35. キノコとナラオが
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葦多家の三人プラス弟・妹での素敵なディナータイム(チャーハンだったけど)が終わって、クリオはさっさと自宅に戻り、アツオさんはお風呂。キノコはまだいる。
女子だけの今、ナラオに言っておかないとね。ええええ言いますとも。今宵あたしは言いますとも。
「母として、いえ女同士として言いますとも。女の先輩の一人として――」
「ねえお母さん、なに一人でぶつぶついってんの?」
あらやだ。あたしうっかり声に出してしまってたわ。でもちょうどいいわね。今こそ言うべきときだわ。
「ナラオ。せっかくお父さんがワンピース買ってきてくれたんだから、もっと嬉しそうにしないとだめよぉ」
「だってえ、あのワンピ子供っぽいんだもん。ぼくあんなの好きくないよう」
「そうねえ、アタシも見たけど、ちょっとあれはねえ」
あらまあ、この子はナラオの肩を持つのね。
「ねえキノコ、ちょっと黙ってなさい。ナラオ、子供っぽいなんて言ってるけど、あんたはまだまだ子供なのよ。いくら生理が始まってるからって、お部屋の整理整頓すら自分でできないんだから」
「もう生理・整理いわないでよぉー。お母さんのそのいい方うざいんだからねっ」
「そうよワラビお姉ちゃん。女同士でもセクハラでパワハラよ」
キノコも言うようになったものね。
「黙ってなさいって言ったでしょキノコ。いくらあたしより胸が大きくなったからって、子供産まないうちはあんたも子供よ」
「ちょっとちょっとなによそれ。それじゃ子供産まないでおばあさんになった人は子供ってこと? それ問題発言よ。撤回してよねっ」
「あら言葉のあやよ。いくらなんでもお婆さんが子供なわけないでしょ。大学出たからってそんな堅苦しい理屈を振りかざしてたらだめだめ。男子がみんな逃げちゃうわよ。もっと女子力を磨きなさい。女は胸の大きさじゃないの。胸は中が大事なのよ。胸の中が美しく暖かくそして強くないとだめなんだから。わかる? どぅ・ゆー・あんだぐらうんど?」
言ってやったわ。一度言いたかったのよこれ。
「ちょっとワラビお姉ちゃん! アタシは胸のことなんて一言も口にだしてないわよ。お姉ちゃんが一人で胸々、胸々って騒いでるだけでしょ。胸の中を美しくする必要があるのはお姉ちゃんの方よ。あとアンダグラウンドじゃなくてアンダスタンド、どうでもいいけどね」
「まあなんですって。あたしの胸が色・つや・形と三拍子そろってて、すっごぉーく最高に綺麗だけれど、でも中身は意外にもほんのちょっぴり汚れかけてるとかって言いたいのあんたは! ええええ言いたいのよねえ。そうよそうよ、そうに決まってるんだわ」
「だーかーら。そんなこといってないわよ。もーイヤだぁ」
「おいおいワラビ、脱衣所まで丸聞こえだよ。お願いだからワンピース一枚で言い争わないでくれよ」
あらやだ。いつの間にやらアツオさんお風呂から上がってたのね。となるとここは女子力の出しどころだわ。
「だってだってだってぇアツオさん聞いてよおう。あのねあのねキノコとナラオが二人してあたしをいじめるの。あたしってば、もーすっごく怖かったんだからぁ。泣きそうになってたんだからねっ。もう泣いちゃうもん。うえぇぇ~~~ん!!」
「はあ!?」
「お母さん?」
「はぁ~~(だめだぁこりゃ)」
◇ ◇ ◇
「さっきのは君も少し大人げなかったよ」
「反省してるわ」
「うん。それならそれでいいよ」
アツオさんにしかられちゃった。てへ。
女子力の出し加減って難しいのよね……。
「ところであなた。ナラオはいつまでもぼくって言う癖が直らないわねえ」
「いやあ、あれも個性だよ。そのままでもいいと思うよ」
「あら、そうかしら。でも就職活動とか面接なんかで、ぼくなんておかしいわよ。そんなので落とされたりしたらかわいそうだし」
「そんなので落とすような会社ならその程度ってことだよ。それにナラオちゃん自身が自分で、相手によって使い分ける必要があるって、そう思えばそうするようになるだろうし。まあでもそうならなくても構わないさ。世の中いろいろだよ」
「いろいろ?」
「うん。例えば世の中は、女で女の人や男で男の人ばかりじゃないとか」
女で女の人? 男で男の人? 何よそれ。
「どう言うこと?」
「性同一性障害とかさ。女だけども男の人や、男だけども女の人、そんな人もよく生きてゆけるってこと」
「その性同一性障害って聞いたことあるわ。あの子そうなのかしら? かわいい服もあんまり興味ないみたいだし」
「いやいや。ぼくって言うからって男とは限らないよ」
うーんあたしにはよくわからないわ。
「難しいのね。ナラオはともかく、それじゃ女だけども男の人と、男だけども女の人とが問題なく結婚できるのかしら?」
「それは二人の問題だ」
「じゃあじゃあ女で女の人と、女で女の人とは結婚できるのかしら?」
「もうすぐできるようになるよ、きっと。あと三人とか四人とかで結婚なんてのもね。あははは」
「あらあたしはそんなの嫌よ。あたしはアツオさんだけなの」
「それはぼくだって同じだよ」
ああ嬉しい。そう思ってくれてるのを知っていても、言ってもらえるとよりいっそう嬉しいわ。
「あなた」
「ワラビ」
「ああん、あなたぁ」
「うんうんワラビぃ」
今宵もアツオさんは、アァ~ツゥ~オーッだったわ。もうねえ、ぴちぴちじゃぶじゃぶ・ばん・ばん・ばん、なのよお。ああ~んいいわあ。
女子だけの今、ナラオに言っておかないとね。ええええ言いますとも。今宵あたしは言いますとも。
「母として、いえ女同士として言いますとも。女の先輩の一人として――」
「ねえお母さん、なに一人でぶつぶついってんの?」
あらやだ。あたしうっかり声に出してしまってたわ。でもちょうどいいわね。今こそ言うべきときだわ。
「ナラオ。せっかくお父さんがワンピース買ってきてくれたんだから、もっと嬉しそうにしないとだめよぉ」
「だってえ、あのワンピ子供っぽいんだもん。ぼくあんなの好きくないよう」
「そうねえ、アタシも見たけど、ちょっとあれはねえ」
あらまあ、この子はナラオの肩を持つのね。
「ねえキノコ、ちょっと黙ってなさい。ナラオ、子供っぽいなんて言ってるけど、あんたはまだまだ子供なのよ。いくら生理が始まってるからって、お部屋の整理整頓すら自分でできないんだから」
「もう生理・整理いわないでよぉー。お母さんのそのいい方うざいんだからねっ」
「そうよワラビお姉ちゃん。女同士でもセクハラでパワハラよ」
キノコも言うようになったものね。
「黙ってなさいって言ったでしょキノコ。いくらあたしより胸が大きくなったからって、子供産まないうちはあんたも子供よ」
「ちょっとちょっとなによそれ。それじゃ子供産まないでおばあさんになった人は子供ってこと? それ問題発言よ。撤回してよねっ」
「あら言葉のあやよ。いくらなんでもお婆さんが子供なわけないでしょ。大学出たからってそんな堅苦しい理屈を振りかざしてたらだめだめ。男子がみんな逃げちゃうわよ。もっと女子力を磨きなさい。女は胸の大きさじゃないの。胸は中が大事なのよ。胸の中が美しく暖かくそして強くないとだめなんだから。わかる? どぅ・ゆー・あんだぐらうんど?」
言ってやったわ。一度言いたかったのよこれ。
「ちょっとワラビお姉ちゃん! アタシは胸のことなんて一言も口にだしてないわよ。お姉ちゃんが一人で胸々、胸々って騒いでるだけでしょ。胸の中を美しくする必要があるのはお姉ちゃんの方よ。あとアンダグラウンドじゃなくてアンダスタンド、どうでもいいけどね」
「まあなんですって。あたしの胸が色・つや・形と三拍子そろってて、すっごぉーく最高に綺麗だけれど、でも中身は意外にもほんのちょっぴり汚れかけてるとかって言いたいのあんたは! ええええ言いたいのよねえ。そうよそうよ、そうに決まってるんだわ」
「だーかーら。そんなこといってないわよ。もーイヤだぁ」
「おいおいワラビ、脱衣所まで丸聞こえだよ。お願いだからワンピース一枚で言い争わないでくれよ」
あらやだ。いつの間にやらアツオさんお風呂から上がってたのね。となるとここは女子力の出しどころだわ。
「だってだってだってぇアツオさん聞いてよおう。あのねあのねキノコとナラオが二人してあたしをいじめるの。あたしってば、もーすっごく怖かったんだからぁ。泣きそうになってたんだからねっ。もう泣いちゃうもん。うえぇぇ~~~ん!!」
「はあ!?」
「お母さん?」
「はぁ~~(だめだぁこりゃ)」
◇ ◇ ◇
「さっきのは君も少し大人げなかったよ」
「反省してるわ」
「うん。それならそれでいいよ」
アツオさんにしかられちゃった。てへ。
女子力の出し加減って難しいのよね……。
「ところであなた。ナラオはいつまでもぼくって言う癖が直らないわねえ」
「いやあ、あれも個性だよ。そのままでもいいと思うよ」
「あら、そうかしら。でも就職活動とか面接なんかで、ぼくなんておかしいわよ。そんなので落とされたりしたらかわいそうだし」
「そんなので落とすような会社ならその程度ってことだよ。それにナラオちゃん自身が自分で、相手によって使い分ける必要があるって、そう思えばそうするようになるだろうし。まあでもそうならなくても構わないさ。世の中いろいろだよ」
「いろいろ?」
「うん。例えば世の中は、女で女の人や男で男の人ばかりじゃないとか」
女で女の人? 男で男の人? 何よそれ。
「どう言うこと?」
「性同一性障害とかさ。女だけども男の人や、男だけども女の人、そんな人もよく生きてゆけるってこと」
「その性同一性障害って聞いたことあるわ。あの子そうなのかしら? かわいい服もあんまり興味ないみたいだし」
「いやいや。ぼくって言うからって男とは限らないよ」
うーんあたしにはよくわからないわ。
「難しいのね。ナラオはともかく、それじゃ女だけども男の人と、男だけども女の人とが問題なく結婚できるのかしら?」
「それは二人の問題だ」
「じゃあじゃあ女で女の人と、女で女の人とは結婚できるのかしら?」
「もうすぐできるようになるよ、きっと。あと三人とか四人とかで結婚なんてのもね。あははは」
「あらあたしはそんなの嫌よ。あたしはアツオさんだけなの」
「それはぼくだって同じだよ」
ああ嬉しい。そう思ってくれてるのを知っていても、言ってもらえるとよりいっそう嬉しいわ。
「あなた」
「ワラビ」
「ああん、あなたぁ」
「うんうんワラビぃ」
今宵もアツオさんは、アァ~ツゥ~オーッだったわ。もうねえ、ぴちぴちじゃぶじゃぶ・ばん・ばん・ばん、なのよお。ああ~んいいわあ。
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