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九章「なんと豪華四本立て」
38. クリオの小説家修行
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「ナラオちゃん、将来何になるんだい?」
「ニート……以外、かな」
「イヤミかよっ!」
「べつに」
「学校にはもう慣れた?」
「まあまあ、かな」
ワラビ姉さんの一人娘つまりオレの姪っ子のナラオちゃんは、私立の学園に通ってたんだけど、三か月前学校で突然倒れて一週間ほど入院した。そんとき何があったのかオレは詳しくは知らないが、ナラオちゃんは学園を辞めた。それで公立のヤマメ中学校に転入したんだ。
叔父の立場として、オレはナラオちゃんのことが心配なんだ。可愛い子だからなおさらのこと。ほんのり桃の香りが漂ってきて、つい叔父だってことを忘れそうになるんだよね。
「けど担任が草雄でよかったじゃないか」
「まあね」
「体育の苦実先生はどうだ」
「きびしい」
「だろうね」
まあこの様子なら大丈夫かも。つうかホントはもっとしゃべって欲しいけど。
「ナラオちゃん、いらっしゃい」
「あっキノコおねいちゃん、おかえりなさい」
「ねえケーキ食べる?」
「うん食べる食べる!」
「おっキノコ、気が利くじゃないかあ」
「お兄ちゃんの分はないんだからねっ」
「くっ……」
たぶんそうくるだろうと思ったけどな。
まあ子供の頃と違って、今はケーキなんてそれほど食べたいとは思わないし、どっちだって構やあしない。
それよりこうやっていつもナラオちゃんを横取りされるのが憎いんだよな。これが勤労者とニートの差なのか?
翌朝、起きたら創作意欲が激しく勃起していることにオレは気付いた。
実は、オレの家の隣の隣には落花傘飛高先生と言う有名な小説家が住んでいる。いや住んでいらっしゃる。ノウベル小説賞を受賞したこともある偉い先生様だ。
オレは落花傘家の門を叩いた。いや実際には呼び鈴を鳴らしたのだ。
「先生、オレも小説家になりたいんです。どうすればなれますか」
「ふむ。簡単だクリオ君」
「是非ご教示願います。先生様様!」
「小説を書けば好いのだ。それだけだ。ふぉふぉふぉ」
もちろんオレはそれで引き下がらなかった。
ただ書くだけでなく、多くの人に読んでもらって楽しんでもらってお金ももらって。などとオレはつべこべ抜かした。
で、わかったこと。とにかく書かないとダメだってことだ。そうしないと始まらないってことだ。
だから書いた。
『量産型ヤポンジン』
山林栗男
大統領の指示が出て、量産型ヤンキー兵たちは直ちに飛び立った。やることなすこと皆クール。オレたち最高ォー!
一方、テロ原理主義国家のウジどもは、生意気にもコックロウチロボの大量生産体制を整えつつあるそうだ。このまんまで放っておくと、うじゃうじゃ出てきやがるぞォ。
おゥ、それとパシフィックの隅っこで沈みかけているボロ屋形船!
(??)
そうだ、おい、お前らだァ、愚図愚図すなァ猿どもォ!
ハリィ・アップッ、背筋伸ばせェ! 邪魔な尻尾はとっとと切り落とせェ。
(ぼそぼそ)
ナニィ、文化の尊重? 正しい文明のあり方? あんだとォこらァ!
オレたちが文化だ、オレたちのやることが文明だ――ッ!
わあったかァ、こらァ!
(ひぃ~~)
そっか、わあったかァ。
そったら黙ってマネー出せ、土地使わせろ、マンキーズこいィ、ケツは隠せェ!
(…………)
そうだ、それでいいんだぜェ。
さあ、量産型ヤポンジンども、出立の準備はできたかァ!
(我が国の今の、き、きゅうじょうが……)
あァ? なんつったァ。聞こえねえなァ。
え、どうなんだァ、準備できたかって聞いてんだァ!
梅干し背負ってさっさと四列縦隊で並びやがれェ、愚図、鈍間!
(あのぅ――)
ナニィ、降伏しやがった? んだよォもう終わりかよォ。
〔終わり〕
「どうだあ」
「なによこれ」
「オレの処女作だ。面白いだろ?」
「さっぱり。てゆうか失敗作よねこれ。もう全然わけワカメ~」
妹にここまで言われて黙ってられるものか。
今日と言う今日はガツンと言ってやらねばなるまい。何が訳ワカメ~だ!
「おいワカメじゃなかったキノコ」
「なに?」
「お前は文学と言うものがまったくわかっていない!」
「なによ、えらそうに。お兄ちゃんだってわかってないじゃない。ふんだ、文学部中退のくせに」
実妹は、触れてはならない領域に立ち入ったようだ。
もう我慢ならん。経済学部卒だからって威張るなよ。
「こらっ、文学部中退をバカにするな! 文学部を中退して作家になった人だっているんだぞ」
落花傘先生ことだけどね。
「でもお兄ちゃんってば、文学部中退してニートじゃないのよっ! 文学部中退のツラ汚しだわ」
「んだとっゴラァ!」
「ちょっとちょっとやめなさい! もうあんたたちはいつまでたっても……」
「あっワラビ姉さん」
「ワラビお姉ちゃん」
隣の家に住むワラビ姉さんはいつも勝手に上がってくる。
「騒がしいったらありゃしないわよ。ご近所迷惑でしょ」
壁が近いから大声出すとワラビ姉さんのところには丸聞こえなんだよなあ。
「悪い悪い。それよりワラビ姉さん今日も綺麗だね」
「もおう調子いいんだから。夕飯できてるわよ。どうせうちで食べるんでしょ?」
「うん。で今夜何?」
「チャーハン」
「またかよっ」
文句を言いながらもおかわりして腹一杯になって家帰って寝て翌朝起きたらもう創作意欲なんかぶっ飛んでしまっててそれでも食欲と睡眠欲と性欲は捨てられない二十七歳ニートなオレでぇーす。でへへへ。
「ニート……以外、かな」
「イヤミかよっ!」
「べつに」
「学校にはもう慣れた?」
「まあまあ、かな」
ワラビ姉さんの一人娘つまりオレの姪っ子のナラオちゃんは、私立の学園に通ってたんだけど、三か月前学校で突然倒れて一週間ほど入院した。そんとき何があったのかオレは詳しくは知らないが、ナラオちゃんは学園を辞めた。それで公立のヤマメ中学校に転入したんだ。
叔父の立場として、オレはナラオちゃんのことが心配なんだ。可愛い子だからなおさらのこと。ほんのり桃の香りが漂ってきて、つい叔父だってことを忘れそうになるんだよね。
「けど担任が草雄でよかったじゃないか」
「まあね」
「体育の苦実先生はどうだ」
「きびしい」
「だろうね」
まあこの様子なら大丈夫かも。つうかホントはもっとしゃべって欲しいけど。
「ナラオちゃん、いらっしゃい」
「あっキノコおねいちゃん、おかえりなさい」
「ねえケーキ食べる?」
「うん食べる食べる!」
「おっキノコ、気が利くじゃないかあ」
「お兄ちゃんの分はないんだからねっ」
「くっ……」
たぶんそうくるだろうと思ったけどな。
まあ子供の頃と違って、今はケーキなんてそれほど食べたいとは思わないし、どっちだって構やあしない。
それよりこうやっていつもナラオちゃんを横取りされるのが憎いんだよな。これが勤労者とニートの差なのか?
翌朝、起きたら創作意欲が激しく勃起していることにオレは気付いた。
実は、オレの家の隣の隣には落花傘飛高先生と言う有名な小説家が住んでいる。いや住んでいらっしゃる。ノウベル小説賞を受賞したこともある偉い先生様だ。
オレは落花傘家の門を叩いた。いや実際には呼び鈴を鳴らしたのだ。
「先生、オレも小説家になりたいんです。どうすればなれますか」
「ふむ。簡単だクリオ君」
「是非ご教示願います。先生様様!」
「小説を書けば好いのだ。それだけだ。ふぉふぉふぉ」
もちろんオレはそれで引き下がらなかった。
ただ書くだけでなく、多くの人に読んでもらって楽しんでもらってお金ももらって。などとオレはつべこべ抜かした。
で、わかったこと。とにかく書かないとダメだってことだ。そうしないと始まらないってことだ。
だから書いた。
『量産型ヤポンジン』
山林栗男
大統領の指示が出て、量産型ヤンキー兵たちは直ちに飛び立った。やることなすこと皆クール。オレたち最高ォー!
一方、テロ原理主義国家のウジどもは、生意気にもコックロウチロボの大量生産体制を整えつつあるそうだ。このまんまで放っておくと、うじゃうじゃ出てきやがるぞォ。
おゥ、それとパシフィックの隅っこで沈みかけているボロ屋形船!
(??)
そうだ、おい、お前らだァ、愚図愚図すなァ猿どもォ!
ハリィ・アップッ、背筋伸ばせェ! 邪魔な尻尾はとっとと切り落とせェ。
(ぼそぼそ)
ナニィ、文化の尊重? 正しい文明のあり方? あんだとォこらァ!
オレたちが文化だ、オレたちのやることが文明だ――ッ!
わあったかァ、こらァ!
(ひぃ~~)
そっか、わあったかァ。
そったら黙ってマネー出せ、土地使わせろ、マンキーズこいィ、ケツは隠せェ!
(…………)
そうだ、それでいいんだぜェ。
さあ、量産型ヤポンジンども、出立の準備はできたかァ!
(我が国の今の、き、きゅうじょうが……)
あァ? なんつったァ。聞こえねえなァ。
え、どうなんだァ、準備できたかって聞いてんだァ!
梅干し背負ってさっさと四列縦隊で並びやがれェ、愚図、鈍間!
(あのぅ――)
ナニィ、降伏しやがった? んだよォもう終わりかよォ。
〔終わり〕
「どうだあ」
「なによこれ」
「オレの処女作だ。面白いだろ?」
「さっぱり。てゆうか失敗作よねこれ。もう全然わけワカメ~」
妹にここまで言われて黙ってられるものか。
今日と言う今日はガツンと言ってやらねばなるまい。何が訳ワカメ~だ!
「おいワカメじゃなかったキノコ」
「なに?」
「お前は文学と言うものがまったくわかっていない!」
「なによ、えらそうに。お兄ちゃんだってわかってないじゃない。ふんだ、文学部中退のくせに」
実妹は、触れてはならない領域に立ち入ったようだ。
もう我慢ならん。経済学部卒だからって威張るなよ。
「こらっ、文学部中退をバカにするな! 文学部を中退して作家になった人だっているんだぞ」
落花傘先生ことだけどね。
「でもお兄ちゃんってば、文学部中退してニートじゃないのよっ! 文学部中退のツラ汚しだわ」
「んだとっゴラァ!」
「ちょっとちょっとやめなさい! もうあんたたちはいつまでたっても……」
「あっワラビ姉さん」
「ワラビお姉ちゃん」
隣の家に住むワラビ姉さんはいつも勝手に上がってくる。
「騒がしいったらありゃしないわよ。ご近所迷惑でしょ」
壁が近いから大声出すとワラビ姉さんのところには丸聞こえなんだよなあ。
「悪い悪い。それよりワラビ姉さん今日も綺麗だね」
「もおう調子いいんだから。夕飯できてるわよ。どうせうちで食べるんでしょ?」
「うん。で今夜何?」
「チャーハン」
「またかよっ」
文句を言いながらもおかわりして腹一杯になって家帰って寝て翌朝起きたらもう創作意欲なんかぶっ飛んでしまっててそれでも食欲と睡眠欲と性欲は捨てられない二十七歳ニートなオレでぇーす。でへへへ。
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