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2起「追悼・落花傘先生」

49. 告別式

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 こんばんは、ニュースナインティーンです。
 ごらんください。こちらの映像は、都内のホテル・ニューアニメイションの現在の様子です。
 今日・二月五日は六曜の一つ・友引でもあります。そんななかでまさに前代未聞、一流のホテルを借り切っての華やかな告別式。ここでは今、小説家の落花傘らくかさん飛高とびたか氏とお別れする式が、とり行われています。
 まるで長寿を祝うかのような、おめでたい雰囲気すら感じられる式場。
 しかし、去年古希をお迎えになった落花傘氏とは、残念ですが、これでお別れしなければ、ならなくなってしまいました。
 ノウベル小説賞を受賞されたこともある落花傘氏は、変態小説と呼ばれる分野の作品を数多く手がけて、日本の変態文学の一翼を担い、これまで的にご活躍されてきました。
 その小説家・落花傘飛高氏が一月三十一日に交通事故のため、お亡くなりになりました。満六十九歳、数え年で七十一歳でした。
 ご冥福をお祈りいたします。

 では次のニュースです。今日未明、都内の路上で刃物を持った女が、五十代の男性の臀部を刺して逃げました。
 女は数百メートル先で、駆けつけた警察官によって取り押さえられ、その場で逮捕されました。
 刺された男性はすぐに近くの病院へと運ばれ治療を受けましたが、全治四週間の大怪我となりました。
 また、逮捕された女は、「ねぎ背負しょったかもを追いかけている際に、包丁を落とした。見ていたオッサンがひきつっていた。馬鹿にされていると思って刺した。雨蛙もひっくり返った。だから消費税を3パーセントに戻せ。せめて生活必需品だけでも非課税にしろ」などと話しており、取り調べには素直に応じているようです。

 次です。今日夕方、都内の繁華街で何者かが――

       ・ ・ ・

 えー、さきほどの落花傘飛高氏の告別式のニュースで、一部字幕に誤りがありました。
 らくかさんの「か」の漢字は、上下のしたではなく、正しくは草花のはなです。

【誤った字幕】落下傘飛高
【正しい表記】落花傘飛高

 大変失礼をいたしました。お詫びして訂正させていだきます。

       ◇ ◇ ◇

 ここは都内の超一流ホテル・ニューアニメイション。
 今ここで、かつて変態作家として名を馳せた落花傘飛高先生の告別式が行われています。
 式場は、ピンクと白のストライプ幕が張られており、場内に大きな音量で、落花傘先生の大好きだったアニメ「魔女っおちゃっぴぃ」のオープニング・ソングが流れています。
 お線香は焚かれておらず、お坊さんの姿も見当たりません。参列者の多くが赤や白などのおめでたい衣装。また、式場内いっぱいに所狭しと飾られている花々は、赤・白・黄のチューリップ、青・白・黄・赤紫のパンジー、薄桃・青紫のセントポーリア、紅・薄紅・白のシクラメンなどなど。
 実に賑やかで楽しげ、そして色取り取りで鮮やかな告別式となったものです。
 これらはすべて落花傘先生のご希望とのこと。
 遺影には、ツインテールのかつらをかぶって少しはにかんだ表情で笑われている先生のお顔があります。このツインテール姿は先生が最もお好きだったコスプレなのだそうです。
 その遺影の前では今、二人の女性が立ち、魔女っ娘おちゃっぴぃのワンシーンを再現してくれています。主役のおちゃっぴぃ役が、ずっと十一歳・花沢はなさわ利香りかさんで、おちゃっぴぃの大親友・ぴゅんぴゅんひめ役が、永遠の十三歳・林原りんはら柚花梨ゆかりんさんです。お二人とも超人気の声優さんなんですよ。

 ――ねえ、おちゃっぴぃ。あんたどうすんのよ?
 ――あたし戦うよ、ぜぇーったい許さないよ、あんな悪い人たち
 ――そうね。うん、わかった。わたしも一緒に戦う
 ――えっ! ほんとなの?
 ――ホントよ、だってわたしたち親友じゃないの。だから当然よ
 ――ありがと、ぴゅんぴゅん姫ぇー!
 ――なにも泣かなくていいって。あいかわらずおちゃっぴぃは泣き虫ね
 ――ぐすん。だってだって、あたしすっごく嬉しいんだもんっ!

 先月、落花傘先生はこのシーンを孫娘の竹子たけこちゃんと一緒に見ながら、感動のあまり涙を流されていたそうです。
 なお、このシーンは「おちゃっぴぃ祭り」として放送された回に収録されたもので、今年五月に発売されるブルーレイでも見ることができます。その初回限定生産版の第二巻には、特典として「ぴゅんぴゅん姫抱き枕カバー」が付いてくるわよ。
 またシリーズ全七巻の予約購入特典は、なんと年末に予定されてる「花沢利香&林原柚花梨 クリスマスライブandトークショー」のペアチケットでーす。みんなぁ、魔女っ娘おちゃっぴぃのブルーレイ、必ず全巻予約してよねー。
 あのう、宣伝これくらいでいいっすか?
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