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次の日から始まった私達の仕事は、花の水遣り、そして花を増やすための株分けだった。
魔力を流しつつ行う繊細な作業は、私でも中々の重労働だ。
初めの頃は、私の姿を見る度に文句を言っていたエリン達も、日々の疲れからか、段々と絡んでこなくなった。



「お前、良い体力してんな。さすがド田舎育ち。」

「あはは、まあね。カインは大丈夫?」

「俺はな。でもそろそろ限界の奴も出てくると思うぞ。」

「そうだね。僕、男爵様に相談してみるよ。」
今日、一緒に仕事をした子供達の中に、酷く顔色の悪い子がいた。あれでは、いつ倒れてもおかしくない。


「お前、本当にお人好し。」

「ん?何?」

「何でもない。早く行け。」

私は素っ気ないカインを置いて、グレゴール男爵の部屋に向かった。






「駄目だ。それはお前の決める事ではない。これだから孤児は。さっさと仕事へ戻れ。」

男爵に全く取り合ってもらえず、私は仕方なく花園へ戻る。



そしてその途中、廊下でエリン達とばったり出会した。


「うわ、こんな時に最悪。」

「エリン、こんな奴ほっといて早く王妃様の所に行こうよ。」

「そうね。なんだか気分が悪くなったわ。」

私の横をエリンと取り巻きの子達が通り過ぎる。
その瞬間、エリンから酷い魔力の揺らぎを感じた。


「ちょっと待って、エリン!何だか君の魔力がおかしい!」
私は思わず、エリンの手を掴んだ。
エリンの手は異様に冷たく、間近で見た彼女の顔色は血の気がない。


「触らないで!」
勢い良く払われた私の手に、エリンの爪が当たって血が滲む。


「孤児に触られるなんて本当に最悪!しかもエリンって何!?私、貴方なんかに名前を呼ばれたくないんだけど!」
激昂するエリンが、私の胸を強く押した。その拍子に、私は思い切り尻餅をつく。
それでもなお、怒りの収まらないエリンが、私に詰め寄ってきた。


「おい、お前らこんな所にいていいのかよ?」
反撃すべきか迷っているとカインの人を馬鹿にしたような声が聞こえた。


「はいはい。まったく、孤児のせいで時間を無駄にしたわ。エリン、行きましょ!」
黒髪の少女が、まだ納得していないエリンを引っ張って廊下の奥へ消えて行った。




「お前、馬鹿だろ。あれだけ大人しくしてろって言ったのに。ここにいる奴らは魔力だけは高いんだ。孤児のお前は、何されるか分かんねえぞ。」

「うん。ありがとう、カイン。」
私は、カインの少し小さな手を借りて立ち上がる。


「でも、ちょっと気になる事があって。」

「エリンの魔力枯渇か?」

「え!?カイン、分かるの!?」

「ああ、俺は生まれつき目が良いんだ。だから魔力の流れが見えんだよ。」
そう言って指し示すカインの髪と同色の瞳には、星の輝きが浮かんでいた。


「あの花...。あれが、エリンの魔力を吸ってた。」
カインは睨みつけるように、花園がある方をじっと見ていた。







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