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サウザリンド王国の北側には、人の手が入っていない鬱蒼とした森が広がっている。
その森の境界には、古くからこの地に住む獣人の小さな集落があった。
私達討伐隊は、その集落から程近い開けた場所を野営地とした。ここは、獣人騎士団が、魔物討伐の拠点として普段から使っている場所だそうだ。
私は、あっという間に完成した野営地を眺めながら、最奥に設置された天幕に向かった。
「ステラです。」
「はい。どうぞ、お入り下さい。」
震える足を叱咤して、私はヴェイル殿下専用の天幕の中に、足を踏み入れた。
「申し訳ありません、バレリー様。只今団長は、少し席を外しておりまして。すぐに戻られるかと思いますので、こちらでお待ち下さい。」
天幕の中にいた白銀の髪の騎士が、丁寧な対応で中まで促してくれた。
私は、勧められた毛足の長いカーペットの上に小さくなって座る。
すると、先程の騎士が、美しい所作でお茶を出してくれた。
私は歓迎されているのだろうか。
でも、ここにいる騎士達の視線が、一様に私へ注がれていて、物凄く居た堪れない。
私はせっかく淹れてもらったお茶に、手を伸ばす勇気が出せなかった。
そんな居心地の悪い時間を、何日も耐えているような気分になった頃、突然、天幕の入り口が勢い良く開いた。
「...すまない、待たせたな。」
髪を乱したヴェイル殿下が、長い足を動かして私の下へやってきた。
私は、素早く立ち上がって、深く頭を下げる。
「挨拶はいい、座ってくれ。まだ、椅子も用意出来ていなかったな。こんな場所に座らせて申し訳ない。」
申し訳ない?
何だかヴェイル殿下の物言いが、柔らかい気がする。
てっきりまた、叱責されるのかと思っていたのに。
「い、いえ、お気になさらず。全く問題ありません。私は、大丈夫です。」
反射的に一気に話したら、変な返答になってしまった。
これではまた、呆れられてしまう。
私は、体をなるべく小さくして座り直した。
「ニルセン、彼女の茶を変えてくれ。」
「畏まりました。」
先程から私に優しく対応してくれていた騎士は、ニルセンという名前らしい。にっこり笑った彼は、私の前に置かれた手付かずのカップを片付け始めた。
「あ、え、あの、私は、それで大丈夫です。まだ、温かいですし。」
「この茶が、気に入らなかったのではないのか?」
「い、いいえ!そんな事はありません!」
私は、青ざめながら必死で否定する。
ただ緊張して飲めなかっただけなのだ。
こんなことなら、無理にでも飲んでおけばよかった。
私は震える指で、そっとカップを持った。
「団長、では私は、お茶菓子を持ってきます。バレリー様、少々お待ち下さい。」
ニルセン様が、天幕内にいた騎士達を連れてあっという間に出て行ってしまった。
シンと静まり返った二人だけの空間に、私の周りの空気が、更に重くなったような気がした。
「あ、あの、お話とは、いったい...。」
この重苦しい空気をどうにかしたくて、私は恐る恐るヴェイル殿下に声をかける。
見上げた先に、黄金の鋭い目があった。
その森の境界には、古くからこの地に住む獣人の小さな集落があった。
私達討伐隊は、その集落から程近い開けた場所を野営地とした。ここは、獣人騎士団が、魔物討伐の拠点として普段から使っている場所だそうだ。
私は、あっという間に完成した野営地を眺めながら、最奥に設置された天幕に向かった。
「ステラです。」
「はい。どうぞ、お入り下さい。」
震える足を叱咤して、私はヴェイル殿下専用の天幕の中に、足を踏み入れた。
「申し訳ありません、バレリー様。只今団長は、少し席を外しておりまして。すぐに戻られるかと思いますので、こちらでお待ち下さい。」
天幕の中にいた白銀の髪の騎士が、丁寧な対応で中まで促してくれた。
私は、勧められた毛足の長いカーペットの上に小さくなって座る。
すると、先程の騎士が、美しい所作でお茶を出してくれた。
私は歓迎されているのだろうか。
でも、ここにいる騎士達の視線が、一様に私へ注がれていて、物凄く居た堪れない。
私はせっかく淹れてもらったお茶に、手を伸ばす勇気が出せなかった。
そんな居心地の悪い時間を、何日も耐えているような気分になった頃、突然、天幕の入り口が勢い良く開いた。
「...すまない、待たせたな。」
髪を乱したヴェイル殿下が、長い足を動かして私の下へやってきた。
私は、素早く立ち上がって、深く頭を下げる。
「挨拶はいい、座ってくれ。まだ、椅子も用意出来ていなかったな。こんな場所に座らせて申し訳ない。」
申し訳ない?
何だかヴェイル殿下の物言いが、柔らかい気がする。
てっきりまた、叱責されるのかと思っていたのに。
「い、いえ、お気になさらず。全く問題ありません。私は、大丈夫です。」
反射的に一気に話したら、変な返答になってしまった。
これではまた、呆れられてしまう。
私は、体をなるべく小さくして座り直した。
「ニルセン、彼女の茶を変えてくれ。」
「畏まりました。」
先程から私に優しく対応してくれていた騎士は、ニルセンという名前らしい。にっこり笑った彼は、私の前に置かれた手付かずのカップを片付け始めた。
「あ、え、あの、私は、それで大丈夫です。まだ、温かいですし。」
「この茶が、気に入らなかったのではないのか?」
「い、いいえ!そんな事はありません!」
私は、青ざめながら必死で否定する。
ただ緊張して飲めなかっただけなのだ。
こんなことなら、無理にでも飲んでおけばよかった。
私は震える指で、そっとカップを持った。
「団長、では私は、お茶菓子を持ってきます。バレリー様、少々お待ち下さい。」
ニルセン様が、天幕内にいた騎士達を連れてあっという間に出て行ってしまった。
シンと静まり返った二人だけの空間に、私の周りの空気が、更に重くなったような気がした。
「あ、あの、お話とは、いったい...。」
この重苦しい空気をどうにかしたくて、私は恐る恐るヴェイル殿下に声をかける。
見上げた先に、黄金の鋭い目があった。
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