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「申し訳なかった。貴女を誤解していた。」
同じカーペットに腰を下ろしたヴェイル殿下が、ガバリと豪快に頭を下げた。
え!?
殿下が、私に謝罪?
貴女って、私のこと?
あまりのことに驚いた私は、ヴェイル殿下の黒髪が流れるように下に付くのを、呆けて見ていることしか出来なかった。
「貴女に、辛い思いをさせてしまった。赦してほしいなどと都合の良いことは言わない。この謝罪は、ただの俺の独りよがりだ。」
辛い思いか...。
確かに、邪険にされたことは、悔しかったし、悲しかった。
でもそれは、私の至らなさが招いたことだ。
ヴェイル殿下が謝ることじゃない。
それに、私は十分にやり返した。
もう、何も気にしていない。
それよりも、私がやってしまった結果の方が、大事になっている気がする...。
「殿下、私の方こそ、申し訳ございませんでした。」
「なぜ、貴女が謝る?」
私の謝罪に、ヴェイル殿下が怪訝な表情をしていた。
「情報編纂部が解散になったと聞きました。私が出しゃばるような事をしたせいですね。」
「それは、違う!貴女は、理不尽な嫌がらせを受けていただけだ。貴女に落ち度はない。寧ろ管理者の俺が、アイツらの愚行に気付かなければならなかったんだ。」
「いいえ、殿下。私がいつまで経っても、組織の中に馴染めなかったのは事実です。あの重要な場で、輪を乱すような事はあってはいけなかったのに。迷惑をかけた文官の方々には改めて謝罪して参ります。」
「駄目だ!貴女が謝ることなど何もない。寧ろ、その原因は…。」
「申し訳ありません。遅くなりました。」
ヴェイル殿下が何かを言おうとした丁度その時、ニルセン様がトレーを持って入り口から現れた。
「だ、団長...、その、すみません。タイミングが悪かったようで...。」
額に大粒の汗を浮かべながら、ニルセン様がヴェイル殿下に謝っている。その顔は青白く、口元が引き攣っていた。
「...いや、もう、この話は止めよう。バレリー殿も謝罪は不要だ。」
姿勢を正して座り直したヴェイル殿下が、話を断ち切った。
良かった。
正直、この不毛な謝罪が続くのは辛かった。いつかは私の方が、引かなければいけなくなるのだから。
私は肩から力を抜いて、ヴェイル殿下の言葉に頷いた。
そこへ、気不味そうな顔をしたニルセン様が、そろそろと新しいお茶を並べていく。
「これは、我が国で一番人気のある茶なんだが。口に合うだろうか?」
そう言ってヴェイル殿下が、口元までカップを持ち上げる。
サウザリンド王国は、お茶の生産が盛んだ。多種多様な茶葉に合わせて、茶器も沢山の種類があるのだとか。
私は、前に置かれた持ち手の無いカップを見つめた。
これは、どうやって飲むのだろう。
私はヴェイル殿下を真似て、カップの縁と底を指で支えながら、ゆっくりと持ち上げた。新緑の色をしたお茶からは、爽やかな香りが上る。私は一口、そっと喉に流し込んだ。
「美味しい...。」
花の香りが口の中に広がり、スッと鼻から抜ける。香りと共に、私の心の声も漏れ出た。
「良かった。」
カップを口に当てたまま、ヴェイル殿下が微笑む。その綻ぶような甘い笑顔に、私の心臓が高鳴った。
顔が熱い。
私、今、変な顔をしていないだろうか。
中々引かない熱を隠すために、私はお茶をもう一口飲み込んだ。
お茶を飲んでいる間、ヴェイル殿下の顔には柔らかい笑顔が浮かんでいた。
同じカーペットに腰を下ろしたヴェイル殿下が、ガバリと豪快に頭を下げた。
え!?
殿下が、私に謝罪?
貴女って、私のこと?
あまりのことに驚いた私は、ヴェイル殿下の黒髪が流れるように下に付くのを、呆けて見ていることしか出来なかった。
「貴女に、辛い思いをさせてしまった。赦してほしいなどと都合の良いことは言わない。この謝罪は、ただの俺の独りよがりだ。」
辛い思いか...。
確かに、邪険にされたことは、悔しかったし、悲しかった。
でもそれは、私の至らなさが招いたことだ。
ヴェイル殿下が謝ることじゃない。
それに、私は十分にやり返した。
もう、何も気にしていない。
それよりも、私がやってしまった結果の方が、大事になっている気がする...。
「殿下、私の方こそ、申し訳ございませんでした。」
「なぜ、貴女が謝る?」
私の謝罪に、ヴェイル殿下が怪訝な表情をしていた。
「情報編纂部が解散になったと聞きました。私が出しゃばるような事をしたせいですね。」
「それは、違う!貴女は、理不尽な嫌がらせを受けていただけだ。貴女に落ち度はない。寧ろ管理者の俺が、アイツらの愚行に気付かなければならなかったんだ。」
「いいえ、殿下。私がいつまで経っても、組織の中に馴染めなかったのは事実です。あの重要な場で、輪を乱すような事はあってはいけなかったのに。迷惑をかけた文官の方々には改めて謝罪して参ります。」
「駄目だ!貴女が謝ることなど何もない。寧ろ、その原因は…。」
「申し訳ありません。遅くなりました。」
ヴェイル殿下が何かを言おうとした丁度その時、ニルセン様がトレーを持って入り口から現れた。
「だ、団長...、その、すみません。タイミングが悪かったようで...。」
額に大粒の汗を浮かべながら、ニルセン様がヴェイル殿下に謝っている。その顔は青白く、口元が引き攣っていた。
「...いや、もう、この話は止めよう。バレリー殿も謝罪は不要だ。」
姿勢を正して座り直したヴェイル殿下が、話を断ち切った。
良かった。
正直、この不毛な謝罪が続くのは辛かった。いつかは私の方が、引かなければいけなくなるのだから。
私は肩から力を抜いて、ヴェイル殿下の言葉に頷いた。
そこへ、気不味そうな顔をしたニルセン様が、そろそろと新しいお茶を並べていく。
「これは、我が国で一番人気のある茶なんだが。口に合うだろうか?」
そう言ってヴェイル殿下が、口元までカップを持ち上げる。
サウザリンド王国は、お茶の生産が盛んだ。多種多様な茶葉に合わせて、茶器も沢山の種類があるのだとか。
私は、前に置かれた持ち手の無いカップを見つめた。
これは、どうやって飲むのだろう。
私はヴェイル殿下を真似て、カップの縁と底を指で支えながら、ゆっくりと持ち上げた。新緑の色をしたお茶からは、爽やかな香りが上る。私は一口、そっと喉に流し込んだ。
「美味しい...。」
花の香りが口の中に広がり、スッと鼻から抜ける。香りと共に、私の心の声も漏れ出た。
「良かった。」
カップを口に当てたまま、ヴェイル殿下が微笑む。その綻ぶような甘い笑顔に、私の心臓が高鳴った。
顔が熱い。
私、今、変な顔をしていないだろうか。
中々引かない熱を隠すために、私はお茶をもう一口飲み込んだ。
お茶を飲んでいる間、ヴェイル殿下の顔には柔らかい笑顔が浮かんでいた。
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