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*ヴェイル視点 43
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冬が終わりを迎え、朝の日差しが大分暖かくなった頃、王宮の庭をステラと共に散歩するのが俺の日課となっていた。人払いもしているため、周りには誰もいない、二人だけの穏やかな朝の時間だ。
ふと、ステラの髪と同じ色を持つ小花を見つけ、優しく摘み取る。
「初春に咲くリーゼーの花だ。ステラによく似合う」
俺は、抱き上げているステラの髪に、そっとリーゼーの花を刺し入れた。ステラの深緑の瞳が、ぼうっとその花を追う。
あれからステラは、時々目を開けるようになった。けれど、意識はないため、意思疎通は出来ない。ただ、時折、その瞳に光が宿る瞬間があった。
大丈夫だ。
ステラは、必ず戻って来る。
俺は、根気強く毎日ステラに話しかけ続けた。
「そろそろ戻ろうか。次は、もう少し花の名前を覚えておく…」
ステラに花を見せようと庭に出たというのに、肝心の花の名前が分からなかった。番のために勉強しておけば良かったと、不甲斐ない自分に後悔しつつ、部屋に戻る廊下を歩いていると、脇腹に服を引っ張られる感覚が走った。
「ステラ?」
ステラの手が、確かに俺の右腹の服を握っている。何かに反応するように。
ステラの視線の先を辿ると、ドレスを抱えて廊下の端に寄る侍女の姿が見えた。
ステラは、何を見ているんだ?
侍女?
いや…、あの緑のドレスか!
その時、俺はステラへ贈ったある服を思い出す。俺は、慎重かつ早足で自室に戻り、寝室の隣部屋の扉を開けた。
そこは、俺の妃となる女性のための部屋。
ステラを迎えるための部屋だった。
部屋を突っ切り、更に奥の扉を開ける。そして、色とりどりの衣装の中を抜けて、一枚の飾り気の少ないワンピースの前に立った。
トルソーに飾られたそれは、俺がニ番目にステラへ送った服。ステラが気負わないようにと、シンプルにデザインしたものだ。
一縷の望みをかけて、俺はステラにそのワンピースを見せた。すると、ステラがトルソーに向かって手を伸ばし始めた。
弱々しい力ながらも、何かを掴もうとするステラの強い意志を感じ、俺の眼頭が熱くなる。俺は、さらに一歩トルソーに近付いた。
ステラの指先が、ワンピースの胸元に触れ、愛おしそうにレースを撫で上げる。そして、トルソーの首に結んであった一本の赤いリボンを掴み取った。
スルリと解けた長いリボンが、運命の赤い糸のように宙を舞い、ステラの指先に絡まる。それを大事そうに、ステラは胸元へ抱え込んだ。
ああ、ステラは、こんな状態になっても、俺との絆を欲してくれているのか。
嬉しいと俺の心に歓喜が沸き上がった。
そのリボンは、豊穣祭で結べなかった絆のリボンだった。捨てられてしまったかと、思っていたが、魔物の王と対峙したあの日まで、ステラは、肌身離さず持っていたようだ。今は、丁寧に汚れを落とし、衣装部屋で大切に保管されていた。
「ステラ、豊穣祭ではないが、そのリボンを大樹に結びに行こうか。きっと精霊も俺達の絆を祝福してくれる」
俺は、覚えたての転移魔法を使って、王都の中央広場まで飛んだ。
ふと、ステラの髪と同じ色を持つ小花を見つけ、優しく摘み取る。
「初春に咲くリーゼーの花だ。ステラによく似合う」
俺は、抱き上げているステラの髪に、そっとリーゼーの花を刺し入れた。ステラの深緑の瞳が、ぼうっとその花を追う。
あれからステラは、時々目を開けるようになった。けれど、意識はないため、意思疎通は出来ない。ただ、時折、その瞳に光が宿る瞬間があった。
大丈夫だ。
ステラは、必ず戻って来る。
俺は、根気強く毎日ステラに話しかけ続けた。
「そろそろ戻ろうか。次は、もう少し花の名前を覚えておく…」
ステラに花を見せようと庭に出たというのに、肝心の花の名前が分からなかった。番のために勉強しておけば良かったと、不甲斐ない自分に後悔しつつ、部屋に戻る廊下を歩いていると、脇腹に服を引っ張られる感覚が走った。
「ステラ?」
ステラの手が、確かに俺の右腹の服を握っている。何かに反応するように。
ステラの視線の先を辿ると、ドレスを抱えて廊下の端に寄る侍女の姿が見えた。
ステラは、何を見ているんだ?
侍女?
いや…、あの緑のドレスか!
その時、俺はステラへ贈ったある服を思い出す。俺は、慎重かつ早足で自室に戻り、寝室の隣部屋の扉を開けた。
そこは、俺の妃となる女性のための部屋。
ステラを迎えるための部屋だった。
部屋を突っ切り、更に奥の扉を開ける。そして、色とりどりの衣装の中を抜けて、一枚の飾り気の少ないワンピースの前に立った。
トルソーに飾られたそれは、俺がニ番目にステラへ送った服。ステラが気負わないようにと、シンプルにデザインしたものだ。
一縷の望みをかけて、俺はステラにそのワンピースを見せた。すると、ステラがトルソーに向かって手を伸ばし始めた。
弱々しい力ながらも、何かを掴もうとするステラの強い意志を感じ、俺の眼頭が熱くなる。俺は、さらに一歩トルソーに近付いた。
ステラの指先が、ワンピースの胸元に触れ、愛おしそうにレースを撫で上げる。そして、トルソーの首に結んであった一本の赤いリボンを掴み取った。
スルリと解けた長いリボンが、運命の赤い糸のように宙を舞い、ステラの指先に絡まる。それを大事そうに、ステラは胸元へ抱え込んだ。
ああ、ステラは、こんな状態になっても、俺との絆を欲してくれているのか。
嬉しいと俺の心に歓喜が沸き上がった。
そのリボンは、豊穣祭で結べなかった絆のリボンだった。捨てられてしまったかと、思っていたが、魔物の王と対峙したあの日まで、ステラは、肌身離さず持っていたようだ。今は、丁寧に汚れを落とし、衣装部屋で大切に保管されていた。
「ステラ、豊穣祭ではないが、そのリボンを大樹に結びに行こうか。きっと精霊も俺達の絆を祝福してくれる」
俺は、覚えたての転移魔法を使って、王都の中央広場まで飛んだ。
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