ついに私も異世界転生！？

5話

「お待たせ！遅くなってごめん！」
ぜえぜえと息を切らしながら、マリアとの待ち合わせの噴水に着いた。
「そんな待ってないから大丈夫よ。それよりそんな走ってきたら体に良くないでしょ。」
マリアはかなり心配性らしく、私の背中をさすってくれた。
「ありがとう。じゃあ帰ろうか。」
マリアにお礼を言って私たちは歩き出した。


「いい本があったの？」
道中でマリアが聞いてくる。
「まあね、色々見てたらつい時間経っちゃって。」
私の言葉にマリアはふふふと笑う。

一通り本を読んでみてわかったことはこの世界はおおよそ元いた世界と変わらないということだ。食べるものも住むところも大体が同じようなものだ。
ただ、ひとつ引っかかったことは聖獣の存在である。調べたところによると、この世界では動物のことはみな聖獣という風に呼ばれているらしい。
聖獣には様々な種類のものがいて、私の知っている犬や猫のようなものからライオン、キリンなどの大型のものもいる。体の構造自体は元いた世界にいたような動物達と変わらないらしい。
ちなみに、この世界では聖獣と食用の肉というのは分かれているらしく、聖獣とはその文字のごとく聖なる獣であるため殺生は禁止されているらしい。

「ねえ、マリア聖獣ってさ…」
家への帰り路。森を歩きながらマリアに声をかけた瞬間、ガサガサッと物音が聞こえる。

「きゃあ！！」
マリアが驚き、大きな悲鳴をあげる。
私もつい驚いてしまい、音のした方を見る。

「なんだ…」
音の主は小さなうさぎだった。大きな悲鳴にうさぎも驚いたのか、こちらを不安そうに見つめている。
「ふふ…、怖いのかな？大丈夫だよ。」
うさぎに向けてそっと手のひらを差し出す。私の手を10秒ほど見つめてうさぎは森の奥に消えていった。
「あっ、行っちゃった…」

（野生だもん、しょうがないよね。はー、びっくりした。）

ほっと胸をなでおろして、私は再び歩き出した。

やはり元の世界の癖というのか、獣医師をしていたからなのか動物を見るとテンションがあがる。
なんだか見慣れたものを見た気がして、少しこの世界に安心した私は家に向かってマリアと歩いた。