ついに私も異世界転生!?

38

文字の大きさ
6 / 12

6話

しおりを挟む
「いただきまーす。」

無事に家について、マリアがてきぱきと食事の準備をしてくれた。今日はパンとシチューとサラダのようだ。
ゲテモノのような料理が出てきたらどうしようと不安だったが、やはり食べるものに関しては元の世界と大きく変わらないようだ。

(うん、やっぱりあんま変わんないな。市場でチョコとかもあったし。)

あたたかくて美味しい食事を楽しんでいると、マリアの顔が曇っていることに気づく。

「ん?マリア、どうかしたの?おなか痛い?」
さっきから食べていない。元気が無さそうだ。
「いや、そういうわけではないけれど…」
歯切れの悪い返事に私はますます心配になった。
「本当に?ファウロさん呼んでこようか?」
そう言ってガタッと椅子から立ち上がると、マリアが大きな声を出した。

「違うの!!」

いきなりの大きな声にびっくりして私はその場で固まった。
「ど、どうしたの…」
急に様子の変わったマリアがなんだか怖くなった。私はおとなしく椅子に座る。

「あのね、ニーナ。今日、聖獣と出会ったでしょ?」

マリアの聖獣という声に少し体が反応する。聖獣のことがまだまだ分からなかったため、マリアに聞こうとしていたところだった。
マリアの方から話し出してくれたことは、嬉しいがなんだか様子がおかしい。
「あー、帰り道だよね。それがどうかした?」
私の返答にマリアは話しづらそうに口を開いた。

「前から言っていたけど、ああいうのは良くないわ。」
「ああいうの?」
「聖獣と触れ合おうとしたでしょ?あれよ。」

うさぎに手を出したことの何がそんなにいけなかったのか私には分からない。よく分かってないのがマリアにも伝わったのか続けて話し出した。

「知ってるでしょ。聖獣に人の手を加えてはいけないって、国王が全国民に向けて命令したじゃない。」
そうなのか、と驚いた。しかし、今日見た書物の中には聖獣を家に迎える人もいるとあった。私の知っている言葉でいうペットのような扱いだろう。それなのに、人の手を加えないとはどういうことなのか私には理解できなかった。

「そうだね。でもさ、家に迎える人もいるんでしょ?それで人の手を加えないからって触れ合わないようにするのは違うんじゃない?」
「ニーナは何にも知らないのね。」
教えてあげると言って、マリアはこの国の聖獣について教えてくれた。

「国王の考えでは聖獣は聖なるものだから人が汚すことは許されないの。国王が今のハイリー王に代わってから聖獣を家に迎えていた人たちはみんな聖獣を解放するように命令したのよ。」
「聖獣を解放?」
「ええ。今まで生活を共にしてきた聖獣を人の縛りから解放するようにって命令があったわ。それ以来、ハイリー王は人が聖獣に触れることを良しとしていないのよ。」

(なんて国王だ…)
聖獣とはいえ、所詮動物。つまり今まで人の手によって飼われていた聖獣たちが野生に放されたということだ。今まで人の手によって管理されていた動物たちが野生に放された時の末路なんて。
よくて餓死、精々ほかの動物のえさになって終わりだろう。

「むごい…」

聖獣たちのことを思うと胸が痛んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...