ついに私も異世界転生！？

8話

ちゅんちゅんと小鳥のさえずる声で目が覚める。

「思ったよりよく寝られた…」

自分の適応力に驚きながら、体を起こし朝日を浴びる。木漏れ日から漏れる朝日は気持ちよくて身体が目をさますのが分かる。
顔を洗って、部屋の扉を開けるとマリアがキッチンに立っていた。

「おはよう。」
私に気づいて、マリアが声をかけてくる。昨日の様子は微塵も感じられなくなっていた。
「おはよう、声かけてくれたら手伝ったのに。」
「ありがとう。もうすぐ朝食できるからテーブルの準備をお願いね。」

カチャカチャとフォークや皿を出しているとあっという間に朝食が出てきた。

「いただきます。」

朝食はサラダと目玉焼きとパンだ。あったかいコーヒーがついており、体がほっこりと落ち着く。
「そういえば、身体は平気なの？」
「うん。もう平気だよ。」
かぷりとパンに噛みつくと素朴な甘みが口の中に広がった。

「じゃあ、バンおばさんのところのお手伝い行けそう？」
「バンおばさん？」
初めて聞く人物の名前に思わず聞き返した。
「そう。今まで行ってたやつよ。市場のお店のお手伝い。私も今日から学校のお仕事があるから、ニーナも頑張って稼がないと。」
どうやら、今までは市場の店の手伝いをすることで生活費を稼いでいたらしい。マリアは学校で子供たちに勉強を教えているという。

「そうだったね。じゃあご飯食べたら行ってくるね。」

そう言って、目の前の食事を食べ切った。
食事が終わると、マリアはもう時間になったらしくバタバタと出て行った。私は食器の片付けをしてマリアに言われたバンおばさんの店に向かった。




◇◇◇◇◇◇

「バンおばさーん！」

町の市場に着くとバンおばさんの店はすぐ見つかった。店先に人がいなかったので奥に向かって叫んでみたが、反応が無い。

「あつ…」
家から歩いているときにも思っていたが今日は暑い。秋だと思っていたがまだ残暑があるのだろうか。すでに汗ばむ体をハンカチで拭いていると奥のほうに人影が見えた。

「ああ！ニーナちゃん！」
大きな声で私を呼ぶ人が奥から出てきた。
「バンおばさん？おはよう。」
「おはよう。ニーナちゃん。」

どうやらこの女性がバンおばさんのようだ。ショートカットの赤毛に少しそばかすのある顔だ。ふっくらとした体は優しそうな印象を受ける。
「もう大丈夫なのかい？」
バンおばさんは心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「うん！もう平気。でもちょっと記憶が飛んでるところもあって…」
「そうかい。大丈夫！分からないことがあったらすぐに聞いておいで。」
バンおばさんはニカッと笑ってそう言った。

(よかった、優しそうな人だ…)

「さ、店の準備をしようか。手伝って手伝って！」
バンおばさんの呼びかけに反応して私は店の奥に入っていった。