ついに私も異世界転生！？

9話

店が始まるとお客さんが次から次へと入ってくる。

バンおばさんの店が扱っているのは野菜や果物などの生鮮食品だ。
次から次に色々な人が買っていくため、勘定に必死になっていた。

「ニーナちゃん、もう平気なの？」
「おう！ニーナ、元気になったみたいだな！」

街の人も心配してくれていたみたいでみんなが声をかけてくれる。

(誰が誰かわかんないんだけどね…)
そんなことを思いながらバタバタしているとあっという間に昼を過ぎていた。
お昼ご飯はバンおばさんの作ってくれたご飯を店先の椅子に座って食べていた。

「にしても暑いなあ…」

残暑といえどさっきから汗が止まらない。
まるで夏のような暑さだ。

「ふーっ…」
パタパタと胸の前で体を仰ぐようにして手を動かし、バンおばさんが作ってくれたキンキンに冷えたお茶を体に流し込む。
客足は少し落ち着いたが市場にはまだ多くの人が買い物をしている。

いつお客さんが来るか分からないため、私はさっさとご飯を食べて仕事に戻ろうとした。

「…あっ！」
店先で少なくなっていた野菜を追加しているとぽてぽてと犬が歩いてきた。

「ふふっ、かわいい…」
元の世界にいた頃からずっと犬が大好きだった。
目の前にいるのは中型犬くらいの大きさでクリーム色の毛が太陽の光でツヤツヤと光っている。
思わず手を伸ばそうとしたところでマリアのことを思い出した。

「そうだった…。」
スッと手を引っ込める。ごめんね、と心の中で思いながら仕事に戻ろうとした。
しかし、何かこの犬に違和感を感じる。
(なんだろう…)
犬から目が離せないでいた。

「すみません、これをひとつお願いします。」
店先でお客さんが声をかけてきた。
「あ、はい！今行きます！」
すぐに我に戻り犬からお客さんに視線を移した瞬間だった。


パタッと犬が力なくその場に倒れたのを視界の端で捉えた。

「あっ…！」
思わず体が反応して、すぐに犬のそばに駆け寄った。

「…熱いっ！！」

犬を触ってみると触れるだけでも分かるほどの高体温になっていた。
はあはあと舌を出して一生懸命呼吸している。

「この暑さで…熱中症になったんだ…！」
動物病院でも夏先～秋にかけて熱中症で運ばれる犬が多い。
見慣れた症状に私は熱中症を確信した。