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17話 突然の再会

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 鈴みたいな聞き覚えのある声。
 「デレッ、ヘレフォード伯爵…」
 振り返るとデレクとエレナがいた。
 どこか人を馬鹿にしたような顔で二人が私を見つめる。

 「本日は…お越しいただきありがとうございます…」
 一生懸命笑みを作ろうとしたが、口元が引き攣るだけに終わってしまった。

 「ふんっ、慈善事業だと?くだらん。 
 それに、相変わらず女としての在り方を分かってないようだな。」

 「そういえば私たち、結婚しましたの。」

 冷ややかな、意地の悪い微笑みを口元に浮かべたエレナが言った。
  「それは…おめでとうございます。」
 絞り出すように祝いの言葉を述べる。
 「お前よりもずっと出来た女だ。やはりあの時エレナを選んでいてよかった。」
 
 なぜこうも私の神経を逆撫でするような言葉が次から次へと出てくるのか。
 怒鳴りたくなる気持ちを抑えるのもしんどくなってきた…

 「まさか、サラ様がジェラルド子爵のところへ嫁いでおられるなんて、びっくりしましたわ。」
 エレナの視線が先ほどから慌ただしく挨拶して回るルイスに移る。

 「所詮、没落貴族様ですわね。」
   「まったくだ。」
 馬鹿にしたように鼻で笑うエレナとデレクにに何も言えず黙っていた。
 
 
 「私の妻に、なにか御用でしょうか?」
 ぐっと肩を引き寄せられた。
 私を二人から守るようにルイスが間に入って二人を睨む。
 
 「これはこれは、ジェラルド子爵。本日は素敵なパーティーにお招きいただきありがとうございます。」
 デレクは世慣れた笑みを浮かべ、ルイスに握手を求める。
 ありがとうございます、とルイスも握手に応じる。

 「ジェラルド子爵の言葉、感銘をうけました。素敵なお考えと思います。是非、私もご協力致しましょう。」
  「あれは、妻のサラが考えました。そう言っていただけると夫の私も鼻が高い。」
 ルイスの言葉に、デレクは悪意を含んだ険しい目つきで私を睨んだ。
 
 「そうでしたか…。妻でありながら、夫の前に立つとは。下品な女もいたものです。」
 「ええ、本当。同じ妻という立場の私でもありえませんわ。」
 デレクとエレナの私に向けて吐かれた嫌味にルイスが眉をひそめる。

 「そうでしょうか?夫婦とは助け合うものだと認識しておりますが。
 それより…」
 咎めるような目つきでデレクとエレナを睨むルイス。

 「主催者の妻にそのように無礼を働くとは、ヘレフォード家の方達は教養も品性もないように伺えますなあ。」
 ルイスの言葉に二人の顔は屈辱で真っ赤になる。

 「没落貴族めが!図にのりやがってっ…」

 聞こえるか聞こえないかくらいで捨て台詞を吐いたデレクはエレナの腕を引いてどこかへ行ってしまった。



 「全く、想像通りのお人柄だ…」
 呆れたようにルイスがため息をつく。
 「嫌な思いをさせてすまなかった。」
 私を見るルイスの目が悲しそうにしぼんでいる。
 「大丈夫、気にしてないわ。それより他の方にもご挨拶に行きましょう?」
 私の言葉にほっとしたルイスは、私の手を引いて客人に挨拶へとまわった。


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