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18話 集まる支援

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 パーティーから数週間が経った。


 カーテンの隙間から光がくさびのように差し込んでくる。

 朝になりいつもならメイドが起こしに来るはずの時間になっても誰も来ない。
 瞼にあたる陽光に目を覚ますと、いつも隣で寝ているはずのルイスがいない。
 そしてやたらと屋敷がざわついている。

 どうしたのかしら?

 まだ夢とうつつを彷徨っているような状態でベッドから立ち上がる。
 閉じかけるまぶたを擦ってなんとか着替え、寝室を出た。


 廊下を歩いていくと、書斎の方から何やらガヤガヤと聞こえて来る。
 書斎に近づくたびに、ドタバタと駆け回る足音まで聞こえてきた。

 
「ルイス様!そのあとはこちらの書類にサインを!」
 「お次はこちらですっ!」
 「あああっ、待ってくれまだ頭が起きてないんだ!」

 ガチャリと書斎の扉を開けると、10人ほどの使用人たちがバタバタと部屋の中を駆け回っていた。

 「あっ!?お、おはようございます奥さま!起こしに行けず申し訳ありませんっ!」
 急に現れた私に使用人が驚き、慌てて駆け寄ってくる。
 
 「い、いえ…。それより、これは?」

 「お、おはよう、サラ。」
 書類に埋もれるようにしてルイスが椅子に座っている。
 その表情は朝とは思えないほど疲れ切っており、急いで着替えたのかボタンを掛け違えている。
 
「一体、どうしたの?」

 「この間のパーティーで募った寄附金の書類達だよ。思ってたよりもずっとたくさん寄附が来てるんだ。」

「まぁ…」

「それから、子供たちの親の雇用や教師についても協力したいと言ってくれる人がたくさんいるんだ。」

 部屋の中にはいちいち数えるのも面倒なほどたくさんの書類が積み上げられている。

 「ルイス様、こちらのものたちにも目を通していただかないと!」
 さらに運ばれる書類で山のように積み上げられたそれらが床を埋めそうになっている。

 自分で思っているよりも多くの人から届いた支援に、驚くと同時に体が震えるほど喜びが込み上げる。

 これなら、たくさんの子供たちを助けられる!

 俄然やる気が燃え上がり、ルイスの元へと駆け寄った。

 「私も手伝うわ!こんな量、1人じゃ無理よ。」
 床に置かれた書類を持ち上げた。

 「助かるよ、ありがとうサラ。」
 疲れからか、少しうるんだ瞳でこちらを見つめるルイスがまるで甘えた子犬のように見えた。
 「無理しなくていいのよ、私が言い出したことだから。」
 そう言って隣に座り、ルイスが持っていた書類を手に取る。
 「本当にサラは頼りになるよ。」
 そう言って私の肩に少しもたれかかる。

 全く…起こしてくれたらいいのに…

 私に負担をかけないようとしてくれたのだろう。
 ちらりとルイスを見ると疲れからか寝息を立て始めていた。
 彼の優しさに思わず口がほころぶ。


 「あらあらっ。」
 「まあまあ。」
 声がする方を見ると、メイド達がにまにまとこちらを見ている。
 
 「さ、さあ、やるわよ!」
 恥ずかしい気持ちを隠すように、使用人たちを急かした。

 次々と持って来られる書類に目を通し慌ただしく筆を動かした。





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