木曜日のスイッチ

seitennosei

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木曜日のスイッチ。

開発。

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乱れた制服で暴れる。
「あはは。亜樹、くすぐっ、ちょっとまっ…。も、無理ぃ…。」
準備万端でパンツ一枚の亜樹。
その手が私のウエストの辺りに触れると、どうにも笑いが止まらなくなった。
「はー…。」
亜樹の面倒くさそうな溜め息。
いつもの反応だ。
「ごめん…。」
そして今日も咄嗟に謝ってしまう。
本当は悪いなんて思っていないのに。
私だって好きでこんな体質な訳じゃない。
「わかったよ。なるべく身体触んねぇようにするから、自分でパンツ脱いでおっぱい出して。」
「…。」
亜樹のメンタルは凄い。
何度空気が壊れても絶対に続けようとするんだから。と、空気をぶち壊した張本人の癖に毎回他人事の様に思ってしまう。
言われた通りショーツを脱ぎシャツのボタンを開けるとインナーをブラごと上にあげた。
胸を露出させ彼を待つ。
亜樹はベッドに仰向けに横たわる私の身体に直接触れないように覆い被さると、胸の先端に口を付け、思い切り強く吸ってきた。
「はっ…。」
ピリッとした痛みが走る。
強すぎるよ。
本当はもっと優しくして欲しい。
だけど既に機嫌が悪くなっている亜樹に注文を付けられる程、私のメンタルは強くない。
痛みに顔を歪めている私なんて全く気にも留めず、取れてしまうんじゃないかと心配になる程の力で吸い続けられる。
「うぅ…。」
耐え難い痛みがきて思わず声が漏れた。
それを快感で喘いでいると判断した亜樹は、スカートの中に手を滑らせ、潤いの足りていない秘部を間探り出す。
そっちも痛い…。
敏感な突起をグリグリと摘まれる。
「は、あ…亜樹…。強いよ…。」
「またまた。気持ち良さそうな声出てるじゃん。」
身を捩りながら控え目に抗議を試みるも一蹴されてしまう。
この苦悶の顔が見えないのか。
どう見たら感じている様に思えるのだろうとウンザリする。
暫くの間拷問の様な攻めに耐えていると、手を止めた亜樹が満足気な顔で言った。
「咲、そろそろ良いか?」
「え?」
いやいや、冗談じゃない。
全然良くない。
殆ど濡れていないのに。
こんな状態で入れられたら絶対に切れてしまう。
コンドームを取りに一旦ベッドから離れる亜樹に慌てて縋り付く。
「亜樹…。今日も入れる前にいっぱいキスして?」
「ホントに咲はキスが好きだな…。良いよ。ベッドに寝て待ってて。」
私はすごすごとベッドに戻ると、まるで処刑を待つ罪人の様な気持ちで横たわった。
何とかしてセルフで気持ちを盛り上げて、挿入までにアソコを潤わさなければ…。
「お待たせ。」
装着し終えた全裸の亜樹が再度覆い被さってくる。
私はその頬に両手を添え、彼の顔をまじまじと見詰めた。
幅広の綺麗な二重なのに、ちょっと吊り気味な鋭さもある目。
柔らかでいて分厚過ぎない美味しそうな唇。
シュッとした顎に、通った鼻筋。
うん。
好きな顔だ。
これは私の理想とする顔だ。
その顔の持ち主に今から私は抱かれるのだ。
こんな理想通りの顔が抱いてくれるのだから気持ち良いに決まっている。
そう自分に言い聞かせる。
「亜樹…。」
強請る様に目を閉じると、気配が近付き唇に柔らかい物が触れた。
微かに口を開き、そこから舌が押し入ってくるのを待つ。
粘膜同士の絡まる音が頭の中に響くと、段々とその気になれてきた。
「ふっ…ん。」
油断していると強く舌を吸われ、亜樹の口内に攫われてしまう。
強引に弄ばれ他人の中で翻弄される。
私は駆け引きがしたくなり亜樹の舌から逃げ、自分の口内に自身の舌を避難させた。
途端に亜樹の舌が私の口内まで追ってくる。
そのまま逃げ回り、歯列をなぞらせ、舌の裏から上顎までくまなく触れさせた。
私の好きなところ。
自分より大きくて乱暴な舌に追い立てられていると、下半身がムズムズと存在を主張し始めた。
そろそろ大丈夫だろう。
息継ぎの合間に声を掛ける。
「むっ…ん、亜樹…。もう入れて?」
そう言い終わる前に脚が持ち上げられ、硬いモノが入口に触れてきた。
亜樹は整った顔を余裕無く歪ませながら無遠慮に奥まで腰を進める。
「やっ、あ…。亜樹ぃ…。」
まだ少し潤いが足りていなかった様で、ミリミリと引き攣れる感じに強ばる身体。
それでも目の前の好きな顔が快感に染まっていく過程を見ると、腰から背中にかけてゾクゾクと何かが登ってくる。
大丈夫。
ちゃんと気持ち良くなれる。
亜樹も気持ち良さそうにしてくれている。
「咲。そろそろ触っても平気?」
「ん…、うん。」
律儀に確認を取った後、亜樹はベッドについていた両手で私の腰を掴んだ。
ぞぞぞっと、なんとも言えない感覚がして身が縮まる。
「んんっ。」
「まだ擽ったかった?」
「もう平気…だから…。お願い、亜樹。」
私の言葉に満足そうに頷き、亜樹は激しく動き出す。
やっぱり痛い。
無理矢理広げられピリッと痛む入口も、潤い不足により摩擦でヒリつく内壁も。
ガツガツと叩き付けられ、奥にまで鈍痛が生まれる。
どうしても早く終わって欲しいと願ってしまう。
一生懸命動いている亜樹の顔を眺めて自分の気持ちを何とか保つ。
私で気持ち良くなってくれているって思えば辛うじて嬉しくなれた。
「…咲。俺…もう…。」
「…良いよっ、イって…。」
ああ、ようやく終わる。
そう安堵したら気が緩んでしまった。
なるべく苦痛がない様に保っていた体勢が崩れ、奥の痛いところに亜樹のモノが刺さった。
「いっ…。」
お腹を抑え身を縮める私を見て、亜樹はまた感じているのだと思った様だった。
その一点を執拗に突いてくる。
私は声もなく涙を流した。
「咲…、イクっ…、はっ…。」
亜樹は射精の間もずっとグリグリとそこを押してくる。
もう勘弁して下さい…。
心の中でそう呟く。
だけど、やっと終わった。
ベッドに突っ伏し、「よく耐えた!」と脳内で自身をこっそりと労う。
漫画や小説で描かれる様な愛と快楽に満ちた情事など、この世に本当に存在しているのだろうか。
いや、きっとある筈だ。
私はまだ経験が浅いから、身体が快楽を学習していないだけだ。
このまま回数をこなせばいつかきっと悦くなるはずだから。
そう自分を励ましていると、ゴムをティッシュに包みながら亜樹が驚くべき言葉を吐き捨てた。
「咲さ。オナニーしろよ。」
耳を疑う。
あまりにも脈略が無さすぎて意味が分からない。
「え?…今?」
「あー、違う違う。そういうんじゃなくて、家で一人でさ。」
やはり意味が分からない。
ただ、分からないなりに何となく私にとって良い話でないだろう事だけは分かる。
発言の意図を読み取ろうと暫く考えるも、どうしても汲めなかった私は結局普通に訊ねた。
「何で?」
「咲はさ、擽ったさを快感に変えた方が良いんだよ。」
「擽ったさを快感に…?」
果たしてそんな事が可能なのだろうか。
可能なのだとしたら私としても擽ったさを克服し、快感をしっかり感じられる身体になりたいとは思うけれど…。
「擽ったいのは快感の種って聞いたよ。乳首とかクリとか初めから気持ち良いところ触りながら擽ったいところさわさわしてたら、段々と擽ったさが消えて最初から気持ち良くなるみたいだぞ。今でも気持ち良くなっちゃえば身体触っても擽ったがらないじゃん。」
「まぁ…確かに…。」
「だからさ、俺と会ってない間はオナニーして身体開発しといてよ。」
まるで名案を思い付いたかの様に、晴々とした笑顔で言い放つ亜樹。
対照的に私の心は暗い。
それって私だけが頑張る事なの?
私の体質で思う通りのセックスが出来ない点は申し訳ないとは思うけど、彼氏なのだからその開発とやらを手伝ってくれれば良いのにと思う。
だって、詰まりは、擽ったがりな私が煩わしいから自分でオナニーしとけって事だよね?
セックスは2人の為のものなのに。
私はこの問題を一人で解決しなければいけないのね?
急に心が冷えた。
何処かでもう一人の私が呟く。
「亜樹って本当に私の事好きなのかな?」
だけどもう考えるのが面倒くさい。
本体の私はそんな呟きは聞こえない振りをすると、亜樹に向かって笑顔で頷いた。
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