木曜日のスイッチ

seitennosei

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木曜日のスイッチ。

抱かれてみたい。

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暫くの沈黙。
今日もまた可笑しな事を口走ってしまった。
先生は何も言ってくれない。
私もこれ以上は怖くて口が開けないし。
ソワソワと先生の言葉を待つしかない。
「気持ち良かったですか?立花君とのセックスは。」
やっと聞けた山崎先生の声。
だけどいつもの先生じゃない。
そう直感し、私はまた焦る。
「や、あの、気持ち良く?…って言うか、その。苦痛がなかったって感じで…」
「でも濡れたんですよね?僕の手を思い出して。」
「っ…。」
言葉に詰まる。
私はまた両手で顔を覆って俯いた。
「大丈夫ですよ。元々立花君との仲を円滑にする為に始めた事ですしね。その手助けが出来たなら僕も良かったですよ。」
それは酷く冷たい声で。
呆れられてしまったのかもしれない。
そうだよね。
だって先生は体質改善の為に親切で手伝ってくれているのに、当の私はイヤらしい事ばっかり考えていたのだから。
怒るのも無理はない。
「ごめんなさい…。」
「謝る必要なんてないですよ。…それよりもいくつか確認しても良いですか?」
「…確認?ですか?」
「はい。」
私の返事を待たずに先生の手は動き出し、汗でぬるぬると背中側に滑っていく。
「ふ、んっ…。」
ホックが外され拘束感から開放される胸。
今度は手が背中側から前へと進んできた。
おへそから鳩尾の辺りまで登っては降り登っては降りと繰り返される動き。
それに合わせて身体が伸びてはうずくまり、伸びてはうずくまりと反応した。
肩紐で引っ掛かっているだけのブラで胸の先端が擦れる。
「やっ、あぁ…。」
声を抑えられない私の耳元で先生が囁いた。
「立花君と触れ合いながら、僕の手の何を思い出して濡らしたんですか?」
初めて聞く意地悪な声。
少し怖いのに、ゾクゾクと幸福感が込み上げ身震いがくる。
後ろから包まれ撫で回される身体も、耳から侵入されて支配される脳も。
もう逃げられない。
汗か別の物か分からない液体で下着がぐっしゃりと濡れているのが自分でも分かる。
私は。
私はこの手を待っていた。
「せんせぃの、手…骨ばってるの、に…あったかく…やさし、くて。ぞわぞわしって、くすぐった…のに。耳から、せんせいのこえ…響いて。そ、いうの全部…おもいだすと……ぬれちゃっ…。」
絶対に言わなくていい事まで言っている自覚はある。
それでも口をついて出てしまう。
不意に先生の手が止まる。
そしてウエストに腕が回ると、グッと抱き寄せてきた。
全身がずずっと後ろへ引っ張られる。
「…先生?」
初めて密着する身体。
二人とも汗だくなのに不快感は全くない。
背中に感じる先生の鼓動が速くて苦しそうだ。
「…せんせっひゃぁっ。」
首が擽られたかと思い身が縮こまる。
先生はちゅっと軽く音をたてながら私の首を吸っていた。
「ダメぇ。あせすごい、から。きたないです…。」
身を捩る私を優しく抑え込む。
そのまま唇を這わせ、耳まで上がってきたところで囁かれる。
「これから僕がする事覚えて下さい。」
言い終わると同時に登ってくる両手。
それが直接胸を包んだ。
まさか直に触られるなんて…。
「え?え?せんせっ?…ぁっ。」
ゆっくりと円を描く様に揉まれる胸。
既に立ち上がっていた先端が手の平に翻弄され転がっている。
「いつも自分で触っている時もこんなにすぐ固くなってたんですか?」
口が開けなかった。
少しでも口を動かしたらその隙間から自分でも聞いた事のない声が飛び出してしまうと分かっているから。
咄嗟に両手で口を塞ぐ。
「気持ち良過ぎて答えられないですか?」
楽しそうな声。
フルフルと首を横に振ると、フッと笑い声まで漏らしている。
「触り方は?どういうのが好きですか?」
胸を包む手が形を変えた。
続いて尖った先端が指でそりそりと撫でられ、ビクッっと身体が前に折れる。
「んんっ、んっ。」
「おっと…。大丈夫ですか?」
優しく気遣う言葉。
だけど手は止めてくれない。
そして前屈みになった私に伸し掛かり、また身体を密着させてくる。
その間もずっと先端はそりそりと撫でられ続けていて逃げ場がない。
「いつもと反応が違いますけど…、自分で触るよりも気持ち良いですか?」
全然違う。
先生の手は本当に魔法みたいで。
胴体を撫でられるだけでも悶える程感じてしまうのに。
そんな敏感なところを直接ずっと苛められ続けたら、頭が可笑しくなりそうだ。
先生の質問に1つも答えられないまま強く首を横に振る。
「ちゃんと答えて下さいよ。」
そう言って、グッと私の身体ごと背筋を伸ばす先生。
強制的に張り出した胸。
ツンと立ち上がった頂点。
そこにピタッとくっ付けたままの指をクリクリと回し始める。
「やぁっ、せんせっ。それ、だめっ…。」
胸を中心にビリビリと電気みたいな快感が全身に広がっていく。
咄嗟に先生の腕にしがみついた。
指の先が食い込む程強く掴んでも、全く意に介した様子なく、先端は捏ね回され続け。
ビリビリと休む事なく発生する快感は身体中に蓄積されていき、下腹部を重く痺れさせた。
ジーンと充血する私の中心。
絶対、過去最高に濡れてる。
「今日は…」
「ああ、んっ。」
突然耳元で囁かれボリュームの壊れた声を出してしまった。
先生はくつくつと声を殺して笑っている。
「ふふっ…。今日は新しい触り方覚えて下さいね。」
新しい触り方?
今だって気持ち良過ぎて居た堪れないのに、これ以上刺激が増えたら自分がどうなってしまうのか分からない。
未知の領域が怖くて不安なのに。
期待から抵抗が出来ない。
「まずは親指と中指で挟んで…」
キュッと摘まれる感覚。
はっと息が詰まり身体が仰け反ってしまう。
「そこを人差し指を使って先を撫でます。」
「え?っ…あ、やあぁっ…。」
それまで以上の刺激。
強いとか痛いとかではないのに、強烈で逃げ出したくなる感覚。
全身に力が入り、先生に全体重を預ける形でますます仰け反っていく。
「これぇ、だめっ。ホン…ト、せんせっぇ。」
「ダメじゃないですよ。ちゃんと覚えて下さい。」
しがみついていた腕に力をこめ懇願するも聞き入れてはくれない。
指一本で撫でたり捏ねたりさられるのも二本で摘まれるのも知っていたけれど、挟まれて逃げ場がない状態で延々と撫でられる事がここまでの快感を生むなんて。
気付いたら腰が揺れていた。
「ほら、しっかりして下さい。また立花君とする時にちゃんと思い出せるくらい覚えないと。」
意地の悪い言い方。
苦痛も不快感も与えないのに、耐え難い程の快感を休みなく植え付けてくる。
じっとして居られない。
膝を曲げて太もも同士を擦り合わせたり、脚をピンと伸ばしても逃がせない。
力が入ったつま先は、上履きの中で丸まっていた。
仰け反ったりうずくまったり、脚を曲げたり伸ばしたりと悶えている内に身体はズルズルと沈み出す。
お尻が床を滑って視界が天井に向いた。
そこでスルッと胸から手が離れる。
気付くと私は先生の太ももを枕にし、床に完全に倒れていた。
「はは、逃げられちゃいましたね。…今日はこのくらいにしましょうか。」
上から覗き込んでいる先生の顔は柔らかく微笑んでいて。
それは一瞬前まで意地悪だった人物とは思えない程邪気の無い笑顔。
「よいしょっ…。」
放心して動かない私の背中に上から手を回しブラのホックを留めてくれた後、そのままシャツのボタンも留めて整えてくれた。
だけどそうやって甲斐甲斐しく世話を焼いてくれている間、先生が動く度に頭にゴリッと触れる硬い何かが…。
少し目を動かすと視界の端にそれは写った。
不自然に張り出したボトム。
え?
先生、勃って…?
ガバッと身体を起こして、振り返り顔を見る。
「どうしました?」
変わらない笑顔。
私の反応や視線で分かっているはずなのに、先生には全く動じた様子はない。
あれ?
気のせいかな?
そう思って視線を下ろすと、やはりどう見ても立ち上がっているアレ。
「…!?」
無言でまた先生の顔を見るも、もともとそうですけど?と言わんばかりの涼しい顔色。
呆然と固まっている私を先生は壁に寄り掛かる様にして座り直させ、着ているカーディガンを脱ぐと脚元に掛けてくれた。
「僕は先に出ますから…。今日も気を付けて帰って下さいね。」
ポンと軽く頭を撫でると、立ち上がった先生は正面の扉から出ていってしまう。
立ち去る間も隠す素振りは一切なく、先生の股間は主張を続けていた。
私はそれをポカンと見送る。
閉まる扉。
「え?」
実際に声が出た。
山崎先生って私に欲情していたの?
それはいつから?
ずっと私なんて対象外なんだと思っていた。
それどころか、先生はそういう欲求が少ない様にも見えていたから…。
色気はあるけれど生々しい下品さが全くなくて。
どれだけ私が乱れてしまっても顔色ひとつ変えないで冷静だった。
だけど、本当は私に反応していたんだとしたら。
それを知って私はどう思うのか。
驚きで思考が停止していたけれど、段々と落ち着いてきてある感情が湧いてくる。
それは悦びだ。
欲情していたのは私だけではなかったんだ。
意識した途端、ぶわっと内から膨らんだかと思う程に胸が沸く。
嬉しい。
何だか急に先生を近くに感じられる。
ずっと上の世界の人に快楽を施して貰っている心持ちだった。
でも今は、先生と同じ世界に居るのだと実感する事が出来た。
投げ出していた膝を抱く。
掛けてくれたカーディガンから先生の香り。
それを肺いっぱいに吸い込んで思う。
先生に抱かれてみたい。
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