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第一章 白華の氷雨
滄国へ
しおりを挟む滄国の国境の警備は厳重だった。
明け方、少し空が明るくなった頃に国境に辿り着きはしたものの、銃を持った兵が多く巡回していた。
少し高台になった林の影からその様子を見て、柊彗に小声で話しかける。
「どうしよう、事情を説明しても不審者として捕らえられる可能性がある。だからといってここを突破できそうにないーーー」
「ーーー思った以上の警備体制ですが、滄国へ行くには何が何でもここを通らねばなりません」
「俺が囮になります」
柊彗はそう言った。
「ーーーっな、他にも方法がーーー!」
「ありません」
予想外の発言に狼狽える私を、柊彗はまっすぐに見た。
「国境の兵を倒し侵入することもできます。しかしそれでは滄国から敵とみなされ、白華へ便りを出すまでに追われて捕らえられるやもしれません」
「ーー…」
確かに、便りが出せず居場所を伝えられなければ私たちはずっと追われる身だーーー。
「俺が滄の兵士を引き付けます。その間に国境を超えて都へむかってください。俺は、無事王女が白華へ戻れることになったら自力で脱出します」
柊彗が言うことは正しい、二人でこれだけの目をかいくぐり国境を越えることは無理だ。下手をしたら二人とも捕まり、滄王と合わないまま殺されるか、翠に引き渡されてしまうかもしれない。
でも柊彗と離れるなんてーーー。
頭の中でぐるぐる、ぐるぐると、他に策はないか考えるーー。
しかし、感じるのは焦りと不安のみで。
何一つとして考えが浮かばなかった。
ーー柊彗の手が、ゆっくりと私に近づいた。
その手は躊躇いつつも、まるで薄い割れ物を扱うかのようにそっと、私の頬へと触れたーーー。
色素の薄い茶色の瞳が真っ直ぐに私を捉え、まるで吸い込まれるようで目が離せなくなった。
「大丈夫です。すぐまた会えます」
ーーーそう言って目を細め微笑む柊彗は次の瞬間、私の返事を聞かず、滄の兵士の前へと飛び出して行った。
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