3 / 38
師の発心
しおりを挟む
唐土には有史以来、多数の王朝がある。最初の国は夏で、二番目が殷である。
殷は商という。少なくとも殷人は商を自称した。周以降の異邦人が、勝手に殷と呼んだものだろう。
東海に太陽の宿る扶桑樹があるという。扶桑樹には十の太陽が宿り、輪番で一つずつ天に昇る。三本足の烏が天空に運ぶのだという。天に居た太陽は夜になると扶桑樹に帰ってくる。すると、次の太陽が天空に行く。
殷──商の人々はそう信じていたという。十干はその名残であろう。
扶桑樹は商から見て東海にあるが、蓬莱もまた唐土の中原から見て東海にあるという。
徐福という人がいる。彼は秦の始皇帝の命により、東海中に蓬莱を探して船出したまま、帰ってこなかったという。徐福は秦に制圧された斉の人である。
山東の斉の周辺には燕があり、その辺りの人々は秦に攻められたり、臣従したり、情勢は目まぐるしく変わった。
同じ時期、満という人がいた。
満は燕の近くにあった箕子国に大挙して押し寄せ、しばらく世話になった後、隙を見て謀叛し、国王から玉座を奪った。箕子国王・準は半島の南に逃げ、その地を奪って韓の国を起こした。
箕子国は商の後継国である。
商末期の王族に子余という賢人がいた。箕国に封じられた王子なので、箕子と呼ばれた。商は周を中心とした諸侯(主に楚、蜀等)によって滅ぼされるが、周の武王は革命の後、子余を敬い、臣下とするのを憚った。
武王は子余を侯に封じて、遼東周辺を治めさせた。子余は商の遺民たちを率いてそこに移った。それが箕子国である。
それから数百年、箕子国君主は王を僭称するに至った。時代によって、盛衰著しく。ある時は北の異民族に押され、後には燕に属するに及んで版図も縮小した。ついに、王の権威が及ぶ範囲は半島の北部ばかりとなった。しかし、侵攻してきた燕が秦の始皇帝に滅ぼされるや、秦に属して、辛うじて命脈を保った。
しばらく後に、唐土大乱。楚漢が天下の覇権をかけて争う間、満将軍が箕子国に逃亡してきた。
この満により、準王の時に遂に終焉を迎えた。
──
周雅が知り得た殷の情報は、これくらいである。
また、扶桑樹の生える場所がこの日本であること、蓬莱も日本で、徐福が多数の人々と共に渡って来たことも、以前から知識として知っていた。三足烏の存在も。
十絃琴はもしや、この日本国内のどこかにあるのだろうか。
また、夢の中の女が、商人は宮人に勝れりと言っていたが、おそらく商人とは殷人、宮人とは周人のことであろう。
俗に宮は君主、商は臣下とされている。音楽に於いてもそうで、五声の中心は宮であり、商が宮より強い、または同等の曲は反逆の曲として忌み嫌われている。
それは琴曲についても同じで、琴の絃名は第一の大絃より順に、宮絃(第一絃)、商絃(二絃)、角絃(三)、徴絃(四)、羽絃(五)、文絃(六)、武絃(七)と称するが、君である宮絃と臣である商絃を、同音に調絃してはならないとされる。その禁を破ったのが『広陵止息』で、これが秘される理由はそこにある。
商が周に勝るのか、臣が君に勝るのか。夢の女の言いたいことははっきりとはわからないが、あの女は十絃琴のあった岩にいたのであるから、十絃琴の化身か十絃琴に宿る精霊なのだろう。
とすれば、夢の内容を政任に話せば、十絃琴のことが何かもっとわかるかもしれない。
(そういえば、『広陵止息』は聶政が韓王を刺殺するという話だったが──)
周雅は閃いた。
韓の国は周の王侯の国であり、国姓は周と同じ姫姓である。周の王族の国であるから、『広陵止息』は臣下が周に勝る話ということになる。
(次の稽古にはもう一度『広陵止息』を持って行こう。そして、夢の話をして、師の君に、かの十絃琴の女人の言葉の意味を解いて頂こう。それから、夢の曲を聴いて頂きたい)
周雅は夢の中の曲をすっかり我が物としていた。これを次の稽古に持って行き、夢の意味を解く手がかりとしてもらうのだ。
ところが、前回から五日後の稽古の日、政任宅に行ってみると、兄弟子の広仲が血相変えて、寝殿の中から飛び出してきたのだ。
周雅を見ると、説明するのももどかしいという様子で、
「師の君が逐電遊ばされました!探して参ります。私が出ている間に、他から消息が伝わってくるかもしれません、御身は私が戻るまで、こちらで待機していて下さい!何かわかれば、使いを寄越して下さい」
と、慌てて声高に告げるや、疾風のように屋敷を出て行った。
何事が起きたのか、周雅は理解できず、おろおろしたが、すでに広仲の姿はない。家人たちも慌ただしく、あちこちに出掛けている。
ようやく周雅に気付いてくれた家司に導かれて、寝殿の稽古場に入る。
いつもは家人たちが立ち入りを禁じられている寝殿の中である。そこへ家司が入っているのだ。それだけでただ事ではない。
「主が突然、出家すると申して、出て行ったのです」
稽古場は、数多溢れていた琴や楽譜がだいぶ無くなり、がらんとした空間を作っていた。
「出家ですって?」
周雅はようやく話を咀嚼して、聞き返した。
「最近、主は怪僧の悪霊に取り憑かれていたのです。あれはどうやら生き霊のようです。その生き霊に騙され、深山に籠ると仰せられて。今朝、家人どもが起き出してきたら、すでに消え失せてしまわれた後でした。もしや、生き霊に拐われたのやもしれませぬ。近頃、出家しなければならぬと口を極めて仰せでしたので、ご自分のご意志やもしれませぬが──」
家司はそう述べると、忙しそうに去って行った。
広仲は政任の行き先に心当りでもあるのだろうか、探しに行ったのだ。ここで待てと言われたからには、待つしかあるまい。
夢の話どころではなくなった。
周雅は稽古場を見回した。多くの琴、譜、書物は政任が持ち出したのか、失われていたが、まだいくらか残っているものがある。
(あれは──)
彫漆の細長い箱があった。日本ではおよそ見かけない代物だ。唐土伝来の箱であろう。いつも政任が忌み嫌っていた物だ。中には絵が入っているとか。政任はそれは置いて行ったらしい。
周雅がそれの蓋に触れた時、ぼわとどす黒い大きな目に包まれた。
思わず手を離し、目を瞑ってしまう。
(またか!これは何だ?)
「鳳勢を手に取れ」
この世の者ならぬ声が聞こえてきた。
(物の怪っ!!)
周雅は恐ろしくて震えた。目を開けてはいけない気がした。
この目は先日も見た。この屋敷を包んでいた。政任を惑わせた生き霊とは、これのことではないか。
「鳳勢を取れ」
再び声がする。
恐ろしくて、目を強く瞑ったまま、手で耳を塞いだ。
すると、どうしたことだろう。目をぎゅっと瞑っているのに、また蓬莱の景色が見えてきたのだ。
(これは、何故だ──?)
「鳳勢を取れ」
再びの声。直後、ずしんと膝に重みがかかった。
(まさか、生き霊が……)
周雅の膝にあの巨大な目がのし掛かってきたのではないか。
恐怖に戦慄きながらも、手を振り払った。辺りを手当たり次第払っていく。だが、何の手応えもなく。ただそこには空気しかない。
恐る恐る手を膝に落としてみた。何かが触れる。触れたと同時に音が鳴った。
「琴っ」
指は確かに琴絃を弾いていた。弾かれたように、思わず目を開けていた。
膝の上にあるのは、一張の琴。それも、師の秘蔵の名器・鳳勢であった。
「こなたは張である。張の目となり、見るがいい。さあ、鳳勢を取れ」
再びの声。景色は蓬莱。周雅は蓬莱の中に佇んでいた。
(これは怪しや!)
そして、巨大な目の存在はそこにはない。
(これを弾けと……)
膝の上の鳳勢を。周雅はこれで何を弾くべきなのか察した。
(夢の、曲……)
よくはわからないが。周雅は素直に従って、夢の曲を弾き始めた。
すると、たちまち景色は変わって。
いつしか琴も消え。
(これは?)
手足が見えた。間近に。しかも、自分の体から生えている自分の手足のような見え方だ。
だが、それは周雅のものではなかった。全く知らない他人の手足。他人の体。
ひどく原始的な景色が見えている。まるで、自分の目で見ているように見える。
(まさか。私は……これが世に言う憑依というものか……?)
周雅は誰かの体に憑依してしまったのかもしれないと悟った。
原始的で、それでいてなかなか堅固な城壁が広がっている。このような景色は日本のどこにもない。これは唐土であろう。
「張公」
背後から人声がした。
振り返ったのだろう。鎧を身につけた立派な髯の男が立っている。
頭を下げたらしく、地面が見えた。
違和感を覚える。憑依したのに、周雅の意思に関係なく、周雅に乗っ取られた体は勝手に動く。どうも勝手が違う。
「張公、よいな?」
目の前の髯の男が油断ならざる眼光で、こちらに話しかけた。
「お任せあれ」
周雅の乗っ取った体の主が、返事して胸を張った。
(これは、憑依ではない?)
周雅は他人の体に憑いてなどいないのかもしれない。周雅の目はこの張公なる者の目と繋がっている。これは張公の目を通して、見えている光景なのだ。
殷は商という。少なくとも殷人は商を自称した。周以降の異邦人が、勝手に殷と呼んだものだろう。
東海に太陽の宿る扶桑樹があるという。扶桑樹には十の太陽が宿り、輪番で一つずつ天に昇る。三本足の烏が天空に運ぶのだという。天に居た太陽は夜になると扶桑樹に帰ってくる。すると、次の太陽が天空に行く。
殷──商の人々はそう信じていたという。十干はその名残であろう。
扶桑樹は商から見て東海にあるが、蓬莱もまた唐土の中原から見て東海にあるという。
徐福という人がいる。彼は秦の始皇帝の命により、東海中に蓬莱を探して船出したまま、帰ってこなかったという。徐福は秦に制圧された斉の人である。
山東の斉の周辺には燕があり、その辺りの人々は秦に攻められたり、臣従したり、情勢は目まぐるしく変わった。
同じ時期、満という人がいた。
満は燕の近くにあった箕子国に大挙して押し寄せ、しばらく世話になった後、隙を見て謀叛し、国王から玉座を奪った。箕子国王・準は半島の南に逃げ、その地を奪って韓の国を起こした。
箕子国は商の後継国である。
商末期の王族に子余という賢人がいた。箕国に封じられた王子なので、箕子と呼ばれた。商は周を中心とした諸侯(主に楚、蜀等)によって滅ぼされるが、周の武王は革命の後、子余を敬い、臣下とするのを憚った。
武王は子余を侯に封じて、遼東周辺を治めさせた。子余は商の遺民たちを率いてそこに移った。それが箕子国である。
それから数百年、箕子国君主は王を僭称するに至った。時代によって、盛衰著しく。ある時は北の異民族に押され、後には燕に属するに及んで版図も縮小した。ついに、王の権威が及ぶ範囲は半島の北部ばかりとなった。しかし、侵攻してきた燕が秦の始皇帝に滅ぼされるや、秦に属して、辛うじて命脈を保った。
しばらく後に、唐土大乱。楚漢が天下の覇権をかけて争う間、満将軍が箕子国に逃亡してきた。
この満により、準王の時に遂に終焉を迎えた。
──
周雅が知り得た殷の情報は、これくらいである。
また、扶桑樹の生える場所がこの日本であること、蓬莱も日本で、徐福が多数の人々と共に渡って来たことも、以前から知識として知っていた。三足烏の存在も。
十絃琴はもしや、この日本国内のどこかにあるのだろうか。
また、夢の中の女が、商人は宮人に勝れりと言っていたが、おそらく商人とは殷人、宮人とは周人のことであろう。
俗に宮は君主、商は臣下とされている。音楽に於いてもそうで、五声の中心は宮であり、商が宮より強い、または同等の曲は反逆の曲として忌み嫌われている。
それは琴曲についても同じで、琴の絃名は第一の大絃より順に、宮絃(第一絃)、商絃(二絃)、角絃(三)、徴絃(四)、羽絃(五)、文絃(六)、武絃(七)と称するが、君である宮絃と臣である商絃を、同音に調絃してはならないとされる。その禁を破ったのが『広陵止息』で、これが秘される理由はそこにある。
商が周に勝るのか、臣が君に勝るのか。夢の女の言いたいことははっきりとはわからないが、あの女は十絃琴のあった岩にいたのであるから、十絃琴の化身か十絃琴に宿る精霊なのだろう。
とすれば、夢の内容を政任に話せば、十絃琴のことが何かもっとわかるかもしれない。
(そういえば、『広陵止息』は聶政が韓王を刺殺するという話だったが──)
周雅は閃いた。
韓の国は周の王侯の国であり、国姓は周と同じ姫姓である。周の王族の国であるから、『広陵止息』は臣下が周に勝る話ということになる。
(次の稽古にはもう一度『広陵止息』を持って行こう。そして、夢の話をして、師の君に、かの十絃琴の女人の言葉の意味を解いて頂こう。それから、夢の曲を聴いて頂きたい)
周雅は夢の中の曲をすっかり我が物としていた。これを次の稽古に持って行き、夢の意味を解く手がかりとしてもらうのだ。
ところが、前回から五日後の稽古の日、政任宅に行ってみると、兄弟子の広仲が血相変えて、寝殿の中から飛び出してきたのだ。
周雅を見ると、説明するのももどかしいという様子で、
「師の君が逐電遊ばされました!探して参ります。私が出ている間に、他から消息が伝わってくるかもしれません、御身は私が戻るまで、こちらで待機していて下さい!何かわかれば、使いを寄越して下さい」
と、慌てて声高に告げるや、疾風のように屋敷を出て行った。
何事が起きたのか、周雅は理解できず、おろおろしたが、すでに広仲の姿はない。家人たちも慌ただしく、あちこちに出掛けている。
ようやく周雅に気付いてくれた家司に導かれて、寝殿の稽古場に入る。
いつもは家人たちが立ち入りを禁じられている寝殿の中である。そこへ家司が入っているのだ。それだけでただ事ではない。
「主が突然、出家すると申して、出て行ったのです」
稽古場は、数多溢れていた琴や楽譜がだいぶ無くなり、がらんとした空間を作っていた。
「出家ですって?」
周雅はようやく話を咀嚼して、聞き返した。
「最近、主は怪僧の悪霊に取り憑かれていたのです。あれはどうやら生き霊のようです。その生き霊に騙され、深山に籠ると仰せられて。今朝、家人どもが起き出してきたら、すでに消え失せてしまわれた後でした。もしや、生き霊に拐われたのやもしれませぬ。近頃、出家しなければならぬと口を極めて仰せでしたので、ご自分のご意志やもしれませぬが──」
家司はそう述べると、忙しそうに去って行った。
広仲は政任の行き先に心当りでもあるのだろうか、探しに行ったのだ。ここで待てと言われたからには、待つしかあるまい。
夢の話どころではなくなった。
周雅は稽古場を見回した。多くの琴、譜、書物は政任が持ち出したのか、失われていたが、まだいくらか残っているものがある。
(あれは──)
彫漆の細長い箱があった。日本ではおよそ見かけない代物だ。唐土伝来の箱であろう。いつも政任が忌み嫌っていた物だ。中には絵が入っているとか。政任はそれは置いて行ったらしい。
周雅がそれの蓋に触れた時、ぼわとどす黒い大きな目に包まれた。
思わず手を離し、目を瞑ってしまう。
(またか!これは何だ?)
「鳳勢を手に取れ」
この世の者ならぬ声が聞こえてきた。
(物の怪っ!!)
周雅は恐ろしくて震えた。目を開けてはいけない気がした。
この目は先日も見た。この屋敷を包んでいた。政任を惑わせた生き霊とは、これのことではないか。
「鳳勢を取れ」
再び声がする。
恐ろしくて、目を強く瞑ったまま、手で耳を塞いだ。
すると、どうしたことだろう。目をぎゅっと瞑っているのに、また蓬莱の景色が見えてきたのだ。
(これは、何故だ──?)
「鳳勢を取れ」
再びの声。直後、ずしんと膝に重みがかかった。
(まさか、生き霊が……)
周雅の膝にあの巨大な目がのし掛かってきたのではないか。
恐怖に戦慄きながらも、手を振り払った。辺りを手当たり次第払っていく。だが、何の手応えもなく。ただそこには空気しかない。
恐る恐る手を膝に落としてみた。何かが触れる。触れたと同時に音が鳴った。
「琴っ」
指は確かに琴絃を弾いていた。弾かれたように、思わず目を開けていた。
膝の上にあるのは、一張の琴。それも、師の秘蔵の名器・鳳勢であった。
「こなたは張である。張の目となり、見るがいい。さあ、鳳勢を取れ」
再びの声。景色は蓬莱。周雅は蓬莱の中に佇んでいた。
(これは怪しや!)
そして、巨大な目の存在はそこにはない。
(これを弾けと……)
膝の上の鳳勢を。周雅はこれで何を弾くべきなのか察した。
(夢の、曲……)
よくはわからないが。周雅は素直に従って、夢の曲を弾き始めた。
すると、たちまち景色は変わって。
いつしか琴も消え。
(これは?)
手足が見えた。間近に。しかも、自分の体から生えている自分の手足のような見え方だ。
だが、それは周雅のものではなかった。全く知らない他人の手足。他人の体。
ひどく原始的な景色が見えている。まるで、自分の目で見ているように見える。
(まさか。私は……これが世に言う憑依というものか……?)
周雅は誰かの体に憑依してしまったのかもしれないと悟った。
原始的で、それでいてなかなか堅固な城壁が広がっている。このような景色は日本のどこにもない。これは唐土であろう。
「張公」
背後から人声がした。
振り返ったのだろう。鎧を身につけた立派な髯の男が立っている。
頭を下げたらしく、地面が見えた。
違和感を覚える。憑依したのに、周雅の意思に関係なく、周雅に乗っ取られた体は勝手に動く。どうも勝手が違う。
「張公、よいな?」
目の前の髯の男が油断ならざる眼光で、こちらに話しかけた。
「お任せあれ」
周雅の乗っ取った体の主が、返事して胸を張った。
(これは、憑依ではない?)
周雅は他人の体に憑いてなどいないのかもしれない。周雅の目はこの張公なる者の目と繋がっている。これは張公の目を通して、見えている光景なのだ。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
花嫁御寮 ―江戸の妻たちの陰影― :【第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞】
naomikoryo
歴史・時代
名家に嫁いだ若き妻が、夫の失踪をきっかけに、江戸の奥向きに潜む権力、謀略、女たちの思惑に巻き込まれてゆく――。
舞台は江戸中期。表には見えぬ女の戦(いくさ)が、美しく、そして静かに燃え広がる。
結城澪は、武家の「御寮人様」として嫁いだ先で、愛と誇りのはざまで揺れることになる。
失踪した夫・宗真が追っていたのは、幕府中枢を揺るがす不正金の記録。
やがて、志を同じくする同心・坂東伊織、かつて宗真の婚約者だった篠原志乃らとの交錯の中で、澪は“妻”から“女”へと目覚めてゆく。
男たちの義、女たちの誇り、名家のしがらみの中で、澪が最後に選んだのは――“名を捨てて生きること”。
これは、名もなき光の中で、真実を守り抜いたひと組の夫婦の物語。
静謐な筆致で描く、江戸奥向きの愛と覚悟の長編時代小説。
全20話、読み終えた先に見えるのは、声高でない確かな「生」の姿。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
【読者賞】江戸の飯屋『やわらぎ亭』〜元武家娘が一膳でほぐす人と心〜
旅する書斎(☆ほしい)
歴史・時代
【第11回歴史・時代小説大賞 読者賞(読者投票1位)受賞】
文化文政の江戸・深川。
人知れず佇む一軒の飯屋――『やわらぎ亭』。
暖簾を掲げるのは、元武家の娘・おし乃。
家も家族も失い、父の形見の包丁一つで町に飛び込んだ彼女は、
「旨い飯で人の心をほどく」を信条に、今日も竈に火を入れる。
常連は、職人、火消し、子どもたち、そして──町奉行・遠山金四郎!?
変装してまで通い詰めるその理由は、一膳に込められた想いと味。
鯛茶漬け、芋がらの煮物、あんこう鍋……
その料理の奥に、江戸の暮らしと誇りが宿る。
涙も笑いも、湯気とともに立ち上る。
これは、舌と心を温める、江戸人情グルメ劇。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる