[R18]引きこもりの男爵令嬢〜美貌公爵様の溺愛っぷりについていけません〜

くみ

文字の大きさ
17 / 66

カールの嫉妬 1

しおりを挟む
    エリーナのお披露目パーティーは滞りなく終わった。


    はじめての経験にエリーナは少し自信がついた気がする。


    あの日以来、カールの友人ライがよく尋ねるようになってエリーナも普通に喋れるくらいになっていた。


    カールはどこか不機嫌そうな顔をしていたが。


「お客様?」


「ええ。困ったわ。旦那様はお留守で。どうしても待つと……」


     エリーナはもしかしたらライかもしれないと思った。


「私が出るわ」


    エリーナが玄関に向かうと、そこにはライがいた。


「やあ、エリーナ夫人。こんばんは」


    にっこりと笑みをみせるライにエリーナは平常心で挨拶をした。


「こ、今晩は。アレクサンドル公爵様」


    ドレスの裾を持ち会釈をすると、ライも紳士らしく会釈をする。


「カールはまだいないだろうと思っていたけれど、改めてお酒でお祝いしようと思ってね」


「お祝いですか?」


「そ。ようやく夫人に会えたお祝い」


    ぱちんとウインクするライに、エリーナは戸惑ってしまう。


    いつまでも客人を玄関に立たせているわけにはいと思い立ち、エリーナはライを客間へと案内した。


「いやー。本当に綺麗だね。カールが囲い込むのもわかるな。君が外にでたら男はほっておかないよ」


「そ、そんなことは」


「たとえば、俺みたいな男にころっと騙されるタイプ」


「はあ……」


    ライの言っている意味がよくわからなかったが、とりあえず相槌で返してやり過ごす。


「ま、とりあえずお酒でも飲もう」


「あ、私お酒は」


「ああ、そうか。もしかして医者にとめられてるとか?」


「い、いえ、そういうわけではないです。の、飲んだことがないだけで」


    ライはそうかと頷きしばらく考え込んで、ニヤリと笑みを深めエリーナの前にワインを注いだグラスを置いた。


「ア、アレクサンドル公爵様?」


「ライでいいって。酔った君をみたカールの反応、見てみたいと思わない? きっとすごいものが見れると思うよ?」


    面白いオモチャでも見つけた子供のように、ライはキラキラと目を輝かせている。


「さ、どうぞ? ググッと」


    エリーナは戸惑いつつも言われるままワインを飲んだ。


「……美味しい」


    すっきりとしていて飲みやすく、甘い。ジュースのようだとエリーナはあっという間にグラスを空にしてしまった。


「あ……」


    呆気にとられるライをよそに、エリーナは平然としていた。


「あ、あれ?  酔ったりしてない?」


「もう一杯飲んでもいいですか? 美味しくて」


「あ、ああ。どうぞ?」


    エリーナはこんなに美味しいものがあるとは知らなかった。つい何杯もおかわりしてしまう。


    その姿をライはポカンとした表情で見ていた。


「あ、あの。す、すみませんっ。つい、飲み過ぎてしまって……」


「や、いいよ。今夜はお祝いのために持ってきたんだから。驚いたなー。エリーナ夫人、意外といけるんだね」


   感心するライに、エリーナはニコニコと愛想のよい笑みをみせていた。


「いや、これはもしかするともう酔ってるのかも?」


    独り言のように呟き、ライもワインを口に含もうとしたとき。


「貴様、何してるー?」


    場の空気が凍るような冷たい声が聞こえ、ライはまずいというように肩をビクッと揺らした。


「や、やあ。カール。仕事、お疲れっ! ほら、二人の結婚祝いにワインで一杯やろうと」


    カールはものすごい形相でライを睨みつけていた。


「カール様っ!!」


「っー……!?」


    勢いよく、エリーナが飛び出してカールの首に抱きついた。


「お帰りなさいませ! 今日もお疲れ様ですっ」


 「あ、ああー。 んっ……!?」


    エリーナはカールの唇に自分から熱烈なキスをしていた。


    熱い夫婦の抱擁をライはぽかんとした顔で眺め、すっと席を立った。


「あ、じゃ、じゃあ俺は邪魔なようなんで、これでっ」


「っ、ま、まて! ライ! どういうことか説明っ……んっ」


    そそくさと逃げるライを捕まえようにも、カールはエリーナに再びキスをされてカールはあまりの衝撃に固まった。


    エリーナはごろごろと猫のように甘えて、大好きなぬくもりを感じていたのだった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

処理中です...