5 / 59
悪女の目覚めと出会い-4
しおりを挟む薄暗くて埃っぽい部屋の中央、魔法陣が描かれた檻の中、少年は鎖で繋がれていた。
彼の助けに応じて中へと入ったはいいものの、この状況に思わず頭を抱える。
(最悪だ……)
もう一度、確かめるように目の前の少年をまじまじと見つめる。黒い髪、赤い瞳、そしてこの整った容姿……ゲームよりは幼いが、やはりこの少年はレインで間違いない。
(まさかここでレインと出会うとは……)
レインとは「オトイノ」に登場するキャラクターの一人で、幼い頃にアナスタシアに命を救われてから、アナスタシアの従者となる男だ。
また、攻略対象者の中で唯一、アナスタシアの裏の顔を知る存在であり、アナスタシアもレインに心を許していた。
しかし、ヒロインであるエミリアと出会うと、レインはアナスタシアに嫌気が差し、最終的にはアナスタシアを裏切る。
その結果、アナスタシアは両親のこともあり、エミリアをより一層憎むこととなり、破滅への道を進んでしまうのだ。
(「オトイノ」はヒロインであるエミリアの扱いは丁重なのだけど、ラスボスであるアナスタシアについては、雑な扱いですぐ可哀想な目に合わせようとしたがるというか…)
プレイしてた頃はラスボスだから仕方ないか! と思っていたが、自分がその立場になっている今の状況では全く笑えない。
「ねえ」
ぐるぐるとそんなことを考えていれば、レインが声をかけてくる。部屋に入ってきたまま、何もせずに立ち尽くしていた私に痺れを切らしたようだ。
「君は俺を助けてくれるの?」
その言葉にすぐには頷けなかった。
ここでレインを助けなければ、いつ裏切られるのかと彼の存在に怯えなくてもいいし、私の生存率は上がるだろう。
「私は君を……」
しかし、助けなければレインが酷い目に遭うと分かっていて、このまま黙って見過ごすなんてできるわけがない。
「助けるよ、絶対に」
レインの目を見つめて、伝えた。たとえ、いつか裏切られる日が来たとしても、この時の選択をきっと後悔はしない。
私の言葉に、レインが少しだけ微笑んだ気がした。
と、格好つけて言ったはいいものの、私はレインを檻から出す方法が分からずにいた。
辺りを見渡すが、もちろん鍵などはない。あるのはナイフなどの物騒なものだけ。
「ねえ、この魔法陣ってなに? どうしたらこの檻から出れるようになるの?」
私の質問にレインは少しだけ目を丸くしたあと、近くに落ちていたナイフを指差した。
「君の血をたらして」
「血?!」
恐ろしい発言に思わず後ずさる。そんな私をレインが「早くしろ」と言わんばかりの目で見てくる。
「はやくしないと、見張りが戻ってくる。嫌なら君だけ逃げればいい」
「そんなの……」
ここまできて置いていけるわけないじゃないか。
私は意を決して、自身の指先にナイフを当てる。すると、チクリとした痛みと共に血が伝って、魔法陣を汚した。
そして次の瞬間、眩しいぐらいの光に包まれたかと思えば、レインを閉じ込めていた檻と彼を繋いでいた鎖が消えていた。
「……え? どういうこと?」
突然の現象に理解が追いつかない。しかし、そんな私をよそにレインは冷静に立ち上がる。そして、そのまま私の手を握った。
「逃げるよ、ご主人さま」
「ご主人さま? え、ちょっと…待って!」
手を繋いだまま歩き出したレインの後をついていけば、後ろから足音と怒鳴るような声が聞こえてきた。
「おい!お前ら、何してる!」
──まずい。見張りが戻ってきた。私が繋いでいた手にギュッと力を入れれば、レインが叫んだ。
「走って!」
その声に私は無我夢中で走った。
22
あなたにおすすめの小説
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ
猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。
当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。
それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。
そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。
美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。
「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」
『・・・・オメエの嫁だよ』
執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?
ご令嬢は一人だけ別ゲーだったようです
バイオベース
恋愛
魔法が有り、魔物がいる。
そんな世界で生きる公爵家のご令嬢エレノアには欠点が一つあった。
それは強さの証である『レベル』が上がらないという事。
そんなある日、エレノアは身に覚えの無い罪で王子との婚約を破棄される。
同じ学院に通う平民の娘が『聖女』であり、王子はそれと結ばれるというのだ。
エレノアは『聖女』を害した悪女として、貴族籍をはく奪されて開拓村へと追いやられたのだった。
しかし当の本人はどこ吹く風。
エレノアは前世の記憶を持つ転生者だった。
そして『ここがゲームの世界』だという記憶の他にも、特別な力を一つ持っている。
それは『こことは違うゲームの世界の力』。
前世で遊び倒した農業系シミュレーションゲームの不思議な力だった。
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる