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地下駐車場に到着した。早く黒崎に報告したい。はやる気持ちのままで歩くと転ぶと分かっているのに、浮足立つ足が止まらない。悠人が早瀬さんの車に走っていった。その後ろ姿に手を振りながら別れて、黒崎の車のそばに歩いて行った。
「おやすみーー」
「明日電話するよ。いたたた……」
車のドアに触れた時に静電気が起きて、指先に痛みが走った。興奮していて油断した。おかげでクールダウンできた。
助手席に乗り込んだ。静電気が起きたと話すと、黒崎が吹き出して笑った。悠人なみのリアクションだったそうだ。車内にはハーブ系の匂いが漂っている。何か買って来たのだろうか。
「いい匂いがするね。何か置いたの?」
「さっきの店の匂いだろう。少し早いクリスマスプレゼントの一部だ。後ろに置いてあるから見てみろ。スイーツ以外だ」
「わーい。どんなのかな?」
後部座席に置いてあったのは、大きな紙袋ふたつだ。洋服のショップのものと、インテリア雑貨店のようだ。初めて見たロゴだ。こっちが自分の分だろう。
ガサ……。その紙袋を膝の上に置いた。すでに匂いが分かる。入っていたのはアロマグッズだった。精油の小瓶やスプレー容器の箱が詰まっている。
「いっぱいあるね。リラクゼーション、スリープ、フレッシュ。ブレンドオイル以外もあるんだね~」
「気に入るといいが」
「もちろん気に入ったよ、ありがとう」
ガサガサと探り、一つずつ手に取った。聞いたことのあるメーカーのシリーズだ。この系統のショップを、黒崎が知っているのが意外だ。今日は選ぶ時間が無かっただろう。
「いつ選んだの?」
「先週だ。好みを伝えて店員に選んでもらった。今日受け取ってきた。……肌に塗るタイプのオイルがある。寝る前と起きている時のリフレッシュ用だ。仕事の移動中もいいだろう」
「さすがだね。店員さんが選んだとしても、黒崎さんのアイデアがいいよーー」
「そうか……」
照れくさそうに笑った後、身を乗り出してきた。後部座席にある紙袋を指している。そっちも俺へのプレゼントだという。
「冬用のコートが入っている。さっきみたいに静電気が起きているだろう。それならだいぶ違うはずだ。今着ているやつは散歩用にしておけ」
「知っていたんだね……」
「いつも一緒にいるからだ。一緒に買いに行くと、要らないと言われるに決まっている」
「それはそうだよ。クローゼットが満杯だもん」
「これから外に出る機会が多い。いろんなものを着て慣れておけ。クローゼットは増やせばいい。春物が出ているから選びに行こう」
「いっぱいだからさ~」
「お前は試着するだけでいい」
「そういう問題じゃ……」
いつものことだ。何着もシャツ類を試着した結果、黒崎と店員が決める。レストランに食事に行く日は、黒崎が選んだものを着る約束だ。定番コーディネートには自信が無いから納得している。それでも収納する量には口を出したい。
「俺の楽しみの一つだ。付き合ってくれ」
「ええ?」
「何でもない。出るぞ」
「うーーん。シートベルトが……」
いくら暖房が掛かっていても地下駐車場は寒い。手が冷たいからなのか、シーベルトが上手く締まらない。顔のマスクを下ろしていると、黒崎が腕を伸ばしてきた。暗い色味のスーツの匂いがしたと思ったら、覆いかぶさるような姿勢になった。
「締まらないな……」
「ああ、引っかかってる。ごめんね」
バッグの紐が邪魔をしていた。コートもかぶさっている。暗いから見えづらかった。紙袋を後部座席に置こうと思った。そこで、黒崎も動くと思ったのに動かないから、お互いの肩がぶつかった。
「どうしたの?あ……」
「動くな……」
ふわっと唇が重なった。外なのに珍しいから驚いた。とっさに片手で黒崎の胸を押すと、温かい手に握られた。頬に添えられた手も温かい。いつもよりずっと。
「おやすみーー」
「明日電話するよ。いたたた……」
車のドアに触れた時に静電気が起きて、指先に痛みが走った。興奮していて油断した。おかげでクールダウンできた。
助手席に乗り込んだ。静電気が起きたと話すと、黒崎が吹き出して笑った。悠人なみのリアクションだったそうだ。車内にはハーブ系の匂いが漂っている。何か買って来たのだろうか。
「いい匂いがするね。何か置いたの?」
「さっきの店の匂いだろう。少し早いクリスマスプレゼントの一部だ。後ろに置いてあるから見てみろ。スイーツ以外だ」
「わーい。どんなのかな?」
後部座席に置いてあったのは、大きな紙袋ふたつだ。洋服のショップのものと、インテリア雑貨店のようだ。初めて見たロゴだ。こっちが自分の分だろう。
ガサ……。その紙袋を膝の上に置いた。すでに匂いが分かる。入っていたのはアロマグッズだった。精油の小瓶やスプレー容器の箱が詰まっている。
「いっぱいあるね。リラクゼーション、スリープ、フレッシュ。ブレンドオイル以外もあるんだね~」
「気に入るといいが」
「もちろん気に入ったよ、ありがとう」
ガサガサと探り、一つずつ手に取った。聞いたことのあるメーカーのシリーズだ。この系統のショップを、黒崎が知っているのが意外だ。今日は選ぶ時間が無かっただろう。
「いつ選んだの?」
「先週だ。好みを伝えて店員に選んでもらった。今日受け取ってきた。……肌に塗るタイプのオイルがある。寝る前と起きている時のリフレッシュ用だ。仕事の移動中もいいだろう」
「さすがだね。店員さんが選んだとしても、黒崎さんのアイデアがいいよーー」
「そうか……」
照れくさそうに笑った後、身を乗り出してきた。後部座席にある紙袋を指している。そっちも俺へのプレゼントだという。
「冬用のコートが入っている。さっきみたいに静電気が起きているだろう。それならだいぶ違うはずだ。今着ているやつは散歩用にしておけ」
「知っていたんだね……」
「いつも一緒にいるからだ。一緒に買いに行くと、要らないと言われるに決まっている」
「それはそうだよ。クローゼットが満杯だもん」
「これから外に出る機会が多い。いろんなものを着て慣れておけ。クローゼットは増やせばいい。春物が出ているから選びに行こう」
「いっぱいだからさ~」
「お前は試着するだけでいい」
「そういう問題じゃ……」
いつものことだ。何着もシャツ類を試着した結果、黒崎と店員が決める。レストランに食事に行く日は、黒崎が選んだものを着る約束だ。定番コーディネートには自信が無いから納得している。それでも収納する量には口を出したい。
「俺の楽しみの一つだ。付き合ってくれ」
「ええ?」
「何でもない。出るぞ」
「うーーん。シートベルトが……」
いくら暖房が掛かっていても地下駐車場は寒い。手が冷たいからなのか、シーベルトが上手く締まらない。顔のマスクを下ろしていると、黒崎が腕を伸ばしてきた。暗い色味のスーツの匂いがしたと思ったら、覆いかぶさるような姿勢になった。
「締まらないな……」
「ああ、引っかかってる。ごめんね」
バッグの紐が邪魔をしていた。コートもかぶさっている。暗いから見えづらかった。紙袋を後部座席に置こうと思った。そこで、黒崎も動くと思ったのに動かないから、お互いの肩がぶつかった。
「どうしたの?あ……」
「動くな……」
ふわっと唇が重なった。外なのに珍しいから驚いた。とっさに片手で黒崎の胸を押すと、温かい手に握られた。頬に添えられた手も温かい。いつもよりずっと。
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