白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
24 / 265

3-11

しおりを挟む
 地下駐車場に到着した。早く黒崎に報告したい。はやる気持ちのままで歩くと転ぶと分かっているのに、浮足立つ足が止まらない。悠人が早瀬さんの車に走っていった。その後ろ姿に手を振りながら別れて、黒崎の車のそばに歩いて行った。

「おやすみーー」
「明日電話するよ。いたたた……」

 車のドアに触れた時に静電気が起きて、指先に痛みが走った。興奮していて油断した。おかげでクールダウンできた。

 助手席に乗り込んだ。静電気が起きたと話すと、黒崎が吹き出して笑った。悠人なみのリアクションだったそうだ。車内にはハーブ系の匂いが漂っている。何か買って来たのだろうか。

「いい匂いがするね。何か置いたの?」
「さっきの店の匂いだろう。少し早いクリスマスプレゼントの一部だ。後ろに置いてあるから見てみろ。スイーツ以外だ」
「わーい。どんなのかな?」

 後部座席に置いてあったのは、大きな紙袋ふたつだ。洋服のショップのものと、インテリア雑貨店のようだ。初めて見たロゴだ。こっちが自分の分だろう。

 ガサ……。その紙袋を膝の上に置いた。すでに匂いが分かる。入っていたのはアロマグッズだった。精油の小瓶やスプレー容器の箱が詰まっている。

「いっぱいあるね。リラクゼーション、スリープ、フレッシュ。ブレンドオイル以外もあるんだね~」
「気に入るといいが」
「もちろん気に入ったよ、ありがとう」

 ガサガサと探り、一つずつ手に取った。聞いたことのあるメーカーのシリーズだ。この系統のショップを、黒崎が知っているのが意外だ。今日は選ぶ時間が無かっただろう。

「いつ選んだの?」
「先週だ。好みを伝えて店員に選んでもらった。今日受け取ってきた。……肌に塗るタイプのオイルがある。寝る前と起きている時のリフレッシュ用だ。仕事の移動中もいいだろう」
「さすがだね。店員さんが選んだとしても、黒崎さんのアイデアがいいよーー」
「そうか……」

 照れくさそうに笑った後、身を乗り出してきた。後部座席にある紙袋を指している。そっちも俺へのプレゼントだという。

「冬用のコートが入っている。さっきみたいに静電気が起きているだろう。それならだいぶ違うはずだ。今着ているやつは散歩用にしておけ」
「知っていたんだね……」 
「いつも一緒にいるからだ。一緒に買いに行くと、要らないと言われるに決まっている」
「それはそうだよ。クローゼットが満杯だもん」
「これから外に出る機会が多い。いろんなものを着て慣れておけ。クローゼットは増やせばいい。春物が出ているから選びに行こう」
「いっぱいだからさ~」
「お前は試着するだけでいい」
「そういう問題じゃ……」

 いつものことだ。何着もシャツ類を試着した結果、黒崎と店員が決める。レストランに食事に行く日は、黒崎が選んだものを着る約束だ。定番コーディネートには自信が無いから納得している。それでも収納する量には口を出したい。

「俺の楽しみの一つだ。付き合ってくれ」
「ええ?」
「何でもない。出るぞ」
「うーーん。シートベルトが……」

 いくら暖房が掛かっていても地下駐車場は寒い。手が冷たいからなのか、シーベルトが上手く締まらない。顔のマスクを下ろしていると、黒崎が腕を伸ばしてきた。暗い色味のスーツの匂いがしたと思ったら、覆いかぶさるような姿勢になった。

「締まらないな……」
「ああ、引っかかってる。ごめんね」

 バッグの紐が邪魔をしていた。コートもかぶさっている。暗いから見えづらかった。紙袋を後部座席に置こうと思った。そこで、黒崎も動くと思ったのに動かないから、お互いの肩がぶつかった。

「どうしたの?あ……」
「動くな……」

 ふわっと唇が重なった。外なのに珍しいから驚いた。とっさに片手で黒崎の胸を押すと、温かい手に握られた。頬に添えられた手も温かい。いつもよりずっと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

竜人息子の溺愛!

神谷レイン
BL
コールソン書店の店主レイ(三十七歳)は、十八歳になったばかりの育て子である超美形の竜人騎士であるルークに結婚を迫られていた。 勿論レイは必死に断るがルークは全然諦めてくれず……。 だが、そんな中で竜国から使者がやってくる。 そしてルークはある事実を知らされ、レイはそれに巻き込まれてしまうのだが……。 超美形竜人息子×自称おじさん

恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編

夏目奈緖
BL
「恋人はメリーゴーランド少年だった」続編です。溺愛ドS社長×高校生。恋人同士になった二人の同棲物語。束縛と独占欲。。夏樹と黒崎は恋人同士。夏樹は友人からストーカー行為を受け、車へ押し込まれようとした際に怪我を負った。夏樹のことを守れずに悔やんだ黒崎は、二度と傷つけさせないと決心し、夏樹と同棲を始める。その結果、束縛と独占欲を向けるようになった。黒崎家という古い体質の家に生まれ、愛情を感じずに育った黒崎。結びつきの強い家庭環境で育った夏樹。お互いの価値観のすれ違いを経験し、お互いのトラウマを解消するストーリー。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

孤毒の解毒薬

紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。 中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。 不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。 【登場人物】 西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。 白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...