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6-1 大晦日の夜
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12月31日、水曜日。午前2時。
ベッドで寝がえりを打つと、黒崎が居なかった。書斎にいるのだろう。寝室の窓からは夜空が見えている。暖房を掛けても寒いのにと思いながら、椅子掛けてある綿入り半纏を羽織った。寝室を出ると、書斎から灯りがもれていた。やっぱり仕事をしているようだ。黒崎製菓が休みに入った。黒崎と二人で温泉宿に行く予定だ。
(お茶を差し入れしようっと。今日は遠出するのに……)
そっと階段を降りてキッチンへ入った。この時間ならお茶の方がいいだろう。ほうじ茶とお饅頭を用意して二階に上がると、話し声が聞こえてきた。
(こんな時間に?浮気なんて思わないけど。ん?スリッパって言ってる……)
こんな会話をする相手は、一人しかいない。早瀬さんだ。ひっそりと話すことでもないだろう。すると、ノックをする前に声を掛けられた。すでに電話を切った後だった。
「起きていたのか」
「うん。スリッパのこと?」
「いや……」
このままトレーを置いて回れ右をしよう。サイドテーブルに置いて部屋を出ようとすると、背後から腕が回されて捕らえられた。
「寝るからさ~」
「浮気だと思ったのか」
「そんなわけないじゃん。早瀬さんしかいないだろ」
「こっちへおいで」
「寝るから……」
「少しだけだ」
「あ……」
こういう目をされると弱い。クラクラするような甘い眼差しが向けられた。吸い寄せられるように黒崎のそばに立った。この表情を見れば、遊んでいるのが分かる。このままだとエスカレートしそうだ。
「僕は傷ついた。癒してほしい」
「その変な遊びをやめろよ~っ」
黒崎が、出会ったばかりの頃の“優しい黒崎社長”のふりを始めた。そして、彼が椅子に深く腰かけて足を組んで、俺のパジャマに手を掛けた。抵抗すると意地悪そうに笑われた。暖房を強めたから寒くはない。明るい室内が恥ずかしい。しかも、視線をストレートに浴びている。
「もっとよく見たい」
「だめだって……」
「今のままじゃ見えない」
「もう……っ」
「逃げてもムダだ。疑った罰だ」
「ん……っ」
腰に手を添えられたまま、濃厚なキスを受け止めた。何度も角度を変えて、吐息ごと奪うようにキスをされている。口内が熱くて、漏れた溜め息も熱がこもっている。
黒崎の膝の上に座らされた後、首筋とのど元に強く吸い付かれた。仰け反った胸元にも、強く吸い付かれた。力強い腕で支えられている。身じろいでも逃げられない。そして、後ろにある書斎の机に背中を預けた。パソコン、書類、万年筆。右側に視線を向けると、大きな本棚がある。黒崎が笑い声を立てた。
「たまには書斎もいいだろう。お前が嫌がるから」
「だってここじゃ……」
「ギャップがありすぎて恥ずかしいのか。だから見たかった」
「意地悪だよ」
「いつものことだ」
「え……ちょっと」
抱き上げられて机の上に腰を下ろした。いくら整頓されていても散らかしてしまう。それにこの体制も恥ずかしい。黒崎が笑い声を立てている。
「だめだよ。散らかるだろ……」
「大人しくすればいい。おまえは誰のものだ?」
耳元で囁かれて、頭の中が蕩けそうになった。何度もキスを繰り返しているうちに圧迫感に襲われて、肩にすがり付いた。何度も揺さぶられているうちに息が上がっていく。見つめ合っては囁かれている。どんな目をしている。煽っているのか。そんなことを言われた。背中がゾクゾクして鳥肌を立てた。それすらも笑われている。
「朝から運転するだろー。早く寝たら?」
「昨日は抱けなかった。寝られない」
「あ……あっ」
「腰へ足を絡めろ」
「ん……」
「覚えたいと言っていただろう?」
「いきなりは……」
ダルい両足を持ち上げて腰へ絡めた。さらに覆いかぶさってきた。まるで、自分から引き寄せているように思えた。思わず足に力が入ると、耳元で囁かれた。
「いい子だ。上手になった」
「変なこと言うなよ」
「動くぞ。そのまますがりついておけ」
お互いの身体が熱い。漏れる吐息も同じだけ熱い。しっかりとした肩にすがりついて身を任せた。
ギシ……。
抱き上げられて寝室に入った。すっかり力が抜けてしまった体をベッドに預けた。黒崎から前髪をかき上げられて、額にキスをされた。その唇は熱がこもっている。身体を撫でていく手の熱さも同じだ。2回目が始まるのか。
「まだ無理だよ……」
「そのまま寝ておけ」
「もっと休んでからにしてよ」
「これはお仕置きだ」
「クリアしたじゃん……」
「収まらない」
「今日はドライブだよ。温泉旅館に行くんだよ?」
「今夜も思う存分、抱かせてもらう」
「もう……」
これでは深みにハマるだけだ。野獣化した黒崎には息が追いつかない。さっさと機嫌を取ることにした。黒崎の胸もとに伸び上がって、何度も唇にキスをした。
「これで許してよ」
「うまく逃げたな」
「分からず屋」
「だから閉じ込めたくなる」
「謝ってるのに。このヤローっ」
「おい、そこに付けるな」
「お仕置きだよ~」
シャツで隠れないかも知れない場所に吸い付いた。ついでに耳たぶにも軽く噛みついてやった。やっと訪れたのんびりした時間を過ごしたい。こうして肌のぬくもりを感じることで。しかし、黒崎すけべじじい度が増しただけだった。イヤらしく撫で回されて、呆れてため息が出てしまった。
ベッドで寝がえりを打つと、黒崎が居なかった。書斎にいるのだろう。寝室の窓からは夜空が見えている。暖房を掛けても寒いのにと思いながら、椅子掛けてある綿入り半纏を羽織った。寝室を出ると、書斎から灯りがもれていた。やっぱり仕事をしているようだ。黒崎製菓が休みに入った。黒崎と二人で温泉宿に行く予定だ。
(お茶を差し入れしようっと。今日は遠出するのに……)
そっと階段を降りてキッチンへ入った。この時間ならお茶の方がいいだろう。ほうじ茶とお饅頭を用意して二階に上がると、話し声が聞こえてきた。
(こんな時間に?浮気なんて思わないけど。ん?スリッパって言ってる……)
こんな会話をする相手は、一人しかいない。早瀬さんだ。ひっそりと話すことでもないだろう。すると、ノックをする前に声を掛けられた。すでに電話を切った後だった。
「起きていたのか」
「うん。スリッパのこと?」
「いや……」
このままトレーを置いて回れ右をしよう。サイドテーブルに置いて部屋を出ようとすると、背後から腕が回されて捕らえられた。
「寝るからさ~」
「浮気だと思ったのか」
「そんなわけないじゃん。早瀬さんしかいないだろ」
「こっちへおいで」
「寝るから……」
「少しだけだ」
「あ……」
こういう目をされると弱い。クラクラするような甘い眼差しが向けられた。吸い寄せられるように黒崎のそばに立った。この表情を見れば、遊んでいるのが分かる。このままだとエスカレートしそうだ。
「僕は傷ついた。癒してほしい」
「その変な遊びをやめろよ~っ」
黒崎が、出会ったばかりの頃の“優しい黒崎社長”のふりを始めた。そして、彼が椅子に深く腰かけて足を組んで、俺のパジャマに手を掛けた。抵抗すると意地悪そうに笑われた。暖房を強めたから寒くはない。明るい室内が恥ずかしい。しかも、視線をストレートに浴びている。
「もっとよく見たい」
「だめだって……」
「今のままじゃ見えない」
「もう……っ」
「逃げてもムダだ。疑った罰だ」
「ん……っ」
腰に手を添えられたまま、濃厚なキスを受け止めた。何度も角度を変えて、吐息ごと奪うようにキスをされている。口内が熱くて、漏れた溜め息も熱がこもっている。
黒崎の膝の上に座らされた後、首筋とのど元に強く吸い付かれた。仰け反った胸元にも、強く吸い付かれた。力強い腕で支えられている。身じろいでも逃げられない。そして、後ろにある書斎の机に背中を預けた。パソコン、書類、万年筆。右側に視線を向けると、大きな本棚がある。黒崎が笑い声を立てた。
「たまには書斎もいいだろう。お前が嫌がるから」
「だってここじゃ……」
「ギャップがありすぎて恥ずかしいのか。だから見たかった」
「意地悪だよ」
「いつものことだ」
「え……ちょっと」
抱き上げられて机の上に腰を下ろした。いくら整頓されていても散らかしてしまう。それにこの体制も恥ずかしい。黒崎が笑い声を立てている。
「だめだよ。散らかるだろ……」
「大人しくすればいい。おまえは誰のものだ?」
耳元で囁かれて、頭の中が蕩けそうになった。何度もキスを繰り返しているうちに圧迫感に襲われて、肩にすがり付いた。何度も揺さぶられているうちに息が上がっていく。見つめ合っては囁かれている。どんな目をしている。煽っているのか。そんなことを言われた。背中がゾクゾクして鳥肌を立てた。それすらも笑われている。
「朝から運転するだろー。早く寝たら?」
「昨日は抱けなかった。寝られない」
「あ……あっ」
「腰へ足を絡めろ」
「ん……」
「覚えたいと言っていただろう?」
「いきなりは……」
ダルい両足を持ち上げて腰へ絡めた。さらに覆いかぶさってきた。まるで、自分から引き寄せているように思えた。思わず足に力が入ると、耳元で囁かれた。
「いい子だ。上手になった」
「変なこと言うなよ」
「動くぞ。そのまますがりついておけ」
お互いの身体が熱い。漏れる吐息も同じだけ熱い。しっかりとした肩にすがりついて身を任せた。
ギシ……。
抱き上げられて寝室に入った。すっかり力が抜けてしまった体をベッドに預けた。黒崎から前髪をかき上げられて、額にキスをされた。その唇は熱がこもっている。身体を撫でていく手の熱さも同じだ。2回目が始まるのか。
「まだ無理だよ……」
「そのまま寝ておけ」
「もっと休んでからにしてよ」
「これはお仕置きだ」
「クリアしたじゃん……」
「収まらない」
「今日はドライブだよ。温泉旅館に行くんだよ?」
「今夜も思う存分、抱かせてもらう」
「もう……」
これでは深みにハマるだけだ。野獣化した黒崎には息が追いつかない。さっさと機嫌を取ることにした。黒崎の胸もとに伸び上がって、何度も唇にキスをした。
「これで許してよ」
「うまく逃げたな」
「分からず屋」
「だから閉じ込めたくなる」
「謝ってるのに。このヤローっ」
「おい、そこに付けるな」
「お仕置きだよ~」
シャツで隠れないかも知れない場所に吸い付いた。ついでに耳たぶにも軽く噛みついてやった。やっと訪れたのんびりした時間を過ごしたい。こうして肌のぬくもりを感じることで。しかし、黒崎すけべじじい度が増しただけだった。イヤらしく撫で回されて、呆れてため息が出てしまった。
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