白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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 我が家に到着した。大きな門を入り、ちょうど満開になった花壇のそばを過ぎて行った。タクシーが目的地に停まった。お義父さんの家の前だ。

 手早く荷物を降ろしていると、玄関の扉が開いた。そこから出てきたのは晴海さんだった。初めて見るジーンズ姿だ。ざっくりしたニットも似合っている。俺達が驚いていると、晴海さんが不思議そうな顔をした。

「みんな。おはよう。何かあったのか?」
「お義父さんと過ごしていたの?」
「ああ。手伝いに来た。人手があった方がいいだろう」

 晴海さんが荷物を持ち上げて、素早く家の中に運び入れて行った。黒崎は大きな荷物を運び入れて、俺は一貴さんのそばに付き添った。慣れない家だから歩くのが怖いだろう。そして、この家の玄関を入った瞬間、一貴さんがため息を漏らした。嬉しそうに。

「この家が明るくなっている……」
「最初からこういう感じだったよ。天気が悪かったんじゃないの?前に来た時は……」
「そうかもしれないな」

 懐かしむように見渡している先には、大きな花瓶がある。新しく花が活けられている。一貴さんが見たがったのは、隣に置いてある小さいほうの花瓶だった。そばまで行くと、ぷっと吹き出して笑い出した。

「……これ?国宝って書いているんだよ。字が汚いから判読できないよね?100均で買ってきたんだ~。シンプルすぎるから、何か書いてみたくなったんだ。それで俺が書いたんだよ」

 いたずら描きではない。ちゃんとデザインして書いてある。飾り文字を意識した。それを話すと、さらに笑われた。

「ここに置いてあるのがいい」
「お義父さんが気に入ったからだよ。玄関に置きたいって」
「へえ。明るくなるわけだ。これからお世話になります」
「こちらこそよろしくお願いします。お義父さんを呼んでくるよ。隠れていると思うんだ。隆さーーん!」

 きっとリビングに居るだろう。山崎さんが呼びに行ってくれたのに、ちっとも出てこない。こうなれば自分から行こうとすると、やっと出てきた。本を読んでいて気づかなかったという口実を使いながら。

「ああ。着いたのか」
「お父さん。おはよう」
「ああ。おはよう」

 お義父さんと一貴さんが向かい合った。その間に、黒崎と晴海さんが荷物を運び入れた。俺は一貴さんに付き添いながら、言葉に詰まっている親子の会話を聞いた。お義父さんは照れていた。一貴さんは驚いている。こんな人だったのかと言いたそうだった。
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