白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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14-1 大学3年生の春

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 4月10日、水曜日。午前6時。

 この家の2階には絵本部屋がある。子供の頃から集めた、数々のコレクションを詰め込んである。リフォーム時には床部分を補強した。それだけ重いからだ。

 大きな備え付けの本棚があるけれど、それでは足りずに追加した。ギチギチに詰めると傷むからと、余裕を持たせて収納している。ダンボール箱に詰めて保管している分もある。

「えーっと。おとぎのトラのシリーズは……。あった」

 やっと見つけた。藤沢から頼まれたシリーズだ。大学の友達が絵を描くサークルに入っていて、子供の頃に読んでいた絵本をモデルに描きたいと相談された。常に物を大事にする子だし、約束事を必ず守るから貸してやってくれと頼まれた。もちろん引き受けた。

「そこまで気を遣わなくてもいいのになあ……」

 今日の午後に、藤沢が大学に受け取りに来る。彼が来るのは初めてのはずだ。

「高校時代を思い出したよ~。一緒に生徒会メンバーをやってさ。フォローしてもらったっけ……」

 森本にも久しぶりに会いたいだろう。半年ぐらいは会っていないはずだ。高校の同窓会に呼ばれたが、ライブの練習があるから帰省できない。

 当時とは変わった自分を見て、同級生はビックリするだろうか。テレビやネット配信で観てくれているようだ。まさか中山君が?バンドボーカルデビュー?そういう反応をして、腰まで抜かしたクラスメイトがいたそうだ。

「俺もビックリしているよ~。いまだに夢じゃないかと思う時があるもん」

 よいしょっと立ち上った時に、下から物音がした。目を離すとすぐこれだ。アンが悪戯をして、黒崎が笑っているのだろう。噛みつかないし滅多に吼えない。そういう面ではいい子だ。ただし、元気が良すぎて散らかすのが好きだ。昼間は庭で走り回っているのに、エネルギーが有り余っている。

 バタン。

 ドアを閉めた後、やれやれとため息をついて、階段を降りていった。
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