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午前9時。
大学に到着した。3年生になり、今まで過ごしてきたキャンパスを移動した。隣同士ではあるが、歩くと距離がある。最寄り駅からは遠めになった。それでも徒歩5分で着く。
普段降りていた駅を過ぎて、一つ先の駅で降りた。まるで違う大学へ通う気がする。ここで降りるのは、理学部と工学部の学生ぐらいだ。すでに顔なじみになった子がいる。
大勢いる新入生のうち、この二年間でつき合うメンバーが決まってきた。大きなきっかけは学部選択だった。なんとか試験をパスしたいし、これからも協力し合って卒業したい。自然と団結していったわけだ。
ガーーーー。
ホームから階段を降りた後、ここから見えている大学へと歩いて行った。静かな歩道沿いからは、遠くの方からの話し声がしている。
周りには観光スポットがあり、それを目当てに探索しているグループがいる。その人たちもゆったりしている。のんびりしたキャンパスライフになりそうだ。
「くろさきーーー!」
「日下、おはようーー」
名前を呼ばれて振り返った。同じ惑星環境学科の、日下葉月《くさかはづき》から呼び止められた。2年生最後あたりから話すようになった。日下がきっかけになり、悠人と俺には新しいつながりが出来た。
「八代が楽しみしている。早く行ってやろう」
「何かあったっけ?」
「黒崎と話したいからだよ。この2年間の学生生活で、やっとアイツの声が聞けたんだ」
「聞いたことないって?マジで?」
「あいつ、全然喋らないからさーー」
八代は、月曜日に初めて顔を合わせた子だ。悠人と真羽、山崎、森本も一緒にいた時だった。オリエンテーションの合間の休憩時間でのことだ。スクリーンが見えなかった箇所があったからと、八代が困っていた。そのページの説明をすると、ホッとしていた。その後で学食に誘い、みんなで一緒に食べた。
「あの時、普通に話していたよ?」
「授業の中で必要なときだけだ。それで人間関係が困らないのが、うちの大学だよなー。数学科はそういう奴が多いらしいけど。うちの学科は喋る方だからなあ」
「そうなんだ?学食にいる時、映画の話をしたよ?コメディアンもやっている映画監督の作品が好きだって」
「マジでかー?どんな魔法を使ったんだ?悠人君もいたからか?あのリアクションに引きずられたのか!?」
「うへへ。そうかもしれないね~」
理学部の学生は、人見知りタイプが多いと聞いたことがある。誰とも話したことがないとか、初めて声を聞いたというケースは少なくない。自分自身がそうだったから気持ちが分かる。八代が話さなくても平気だ。何時間でも、黙って向かい合える自信がある。
悠人は正反対のタイプだ。いつの間にか相手が笑っている。気難しいと噂されている教授にも好かれていた。毒牙を抜かれるようだ。あのフレーズによって。
「悠人って、ひいい兄貴って呼ばれているそうだな。今年の新入生に、ファンが何人もいるってさ」
「へええ。嬉しいなあ。え?ひいい兄貴?」
「ファンの間で、そう呼ばれているんだろ?新入生が話していたぞ。サークル勧誘でも聞いた」
「うひゃひゃひゃ。悠人は嫌がってるのに」
悠人はこう言っていた。カッコいい呼び方を望まないと。そして、せめて普通に呼ばれたいと、ヘコんでいた。この分なら、俺たちの学年でも浸透しそうだ。笑っていると、日下から肩を叩かれた。俺も人のことは言えないのか。
「黒崎にも異名が付いているんだぞ?」
「どんなやつ?いつからだよ?一昨日から学期が始まったのに」
「”イタワリの達人”だ!」
「労わりの達人?」
「そう。イタワリ。ああー、違う意味だぞ。板を割ったことがあっただろ?空手部の練習で」
「あの時のやつか~。え?そんなことで?」
2年生ラストの出来事だ。学食へ行く前に、空手部の練習に遭遇した。板を割るトレーニングをしていたから参加させてもらい、拍手喝采をもらった。
「もう忘れているかと思ったのに」
「そんなことないぞ。理学部棟へ行ってみろ。歓迎されるぞ」
「高校時代を思い出すよ。何でも ”達人” が付くんだよ」
「男から認められた証だ」
話しているうちに大学に到着した。まだ見慣れない建物に迎えられた。歩いていると、悠人と森本たちに会った。急に肩の緊張がほぐれて、わいわい話しながら教室へ向かった。
大学に到着した。3年生になり、今まで過ごしてきたキャンパスを移動した。隣同士ではあるが、歩くと距離がある。最寄り駅からは遠めになった。それでも徒歩5分で着く。
普段降りていた駅を過ぎて、一つ先の駅で降りた。まるで違う大学へ通う気がする。ここで降りるのは、理学部と工学部の学生ぐらいだ。すでに顔なじみになった子がいる。
大勢いる新入生のうち、この二年間でつき合うメンバーが決まってきた。大きなきっかけは学部選択だった。なんとか試験をパスしたいし、これからも協力し合って卒業したい。自然と団結していったわけだ。
ガーーーー。
ホームから階段を降りた後、ここから見えている大学へと歩いて行った。静かな歩道沿いからは、遠くの方からの話し声がしている。
周りには観光スポットがあり、それを目当てに探索しているグループがいる。その人たちもゆったりしている。のんびりしたキャンパスライフになりそうだ。
「くろさきーーー!」
「日下、おはようーー」
名前を呼ばれて振り返った。同じ惑星環境学科の、日下葉月《くさかはづき》から呼び止められた。2年生最後あたりから話すようになった。日下がきっかけになり、悠人と俺には新しいつながりが出来た。
「八代が楽しみしている。早く行ってやろう」
「何かあったっけ?」
「黒崎と話したいからだよ。この2年間の学生生活で、やっとアイツの声が聞けたんだ」
「聞いたことないって?マジで?」
「あいつ、全然喋らないからさーー」
八代は、月曜日に初めて顔を合わせた子だ。悠人と真羽、山崎、森本も一緒にいた時だった。オリエンテーションの合間の休憩時間でのことだ。スクリーンが見えなかった箇所があったからと、八代が困っていた。そのページの説明をすると、ホッとしていた。その後で学食に誘い、みんなで一緒に食べた。
「あの時、普通に話していたよ?」
「授業の中で必要なときだけだ。それで人間関係が困らないのが、うちの大学だよなー。数学科はそういう奴が多いらしいけど。うちの学科は喋る方だからなあ」
「そうなんだ?学食にいる時、映画の話をしたよ?コメディアンもやっている映画監督の作品が好きだって」
「マジでかー?どんな魔法を使ったんだ?悠人君もいたからか?あのリアクションに引きずられたのか!?」
「うへへ。そうかもしれないね~」
理学部の学生は、人見知りタイプが多いと聞いたことがある。誰とも話したことがないとか、初めて声を聞いたというケースは少なくない。自分自身がそうだったから気持ちが分かる。八代が話さなくても平気だ。何時間でも、黙って向かい合える自信がある。
悠人は正反対のタイプだ。いつの間にか相手が笑っている。気難しいと噂されている教授にも好かれていた。毒牙を抜かれるようだ。あのフレーズによって。
「悠人って、ひいい兄貴って呼ばれているそうだな。今年の新入生に、ファンが何人もいるってさ」
「へええ。嬉しいなあ。え?ひいい兄貴?」
「ファンの間で、そう呼ばれているんだろ?新入生が話していたぞ。サークル勧誘でも聞いた」
「うひゃひゃひゃ。悠人は嫌がってるのに」
悠人はこう言っていた。カッコいい呼び方を望まないと。そして、せめて普通に呼ばれたいと、ヘコんでいた。この分なら、俺たちの学年でも浸透しそうだ。笑っていると、日下から肩を叩かれた。俺も人のことは言えないのか。
「黒崎にも異名が付いているんだぞ?」
「どんなやつ?いつからだよ?一昨日から学期が始まったのに」
「”イタワリの達人”だ!」
「労わりの達人?」
「そう。イタワリ。ああー、違う意味だぞ。板を割ったことがあっただろ?空手部の練習で」
「あの時のやつか~。え?そんなことで?」
2年生ラストの出来事だ。学食へ行く前に、空手部の練習に遭遇した。板を割るトレーニングをしていたから参加させてもらい、拍手喝采をもらった。
「もう忘れているかと思ったのに」
「そんなことないぞ。理学部棟へ行ってみろ。歓迎されるぞ」
「高校時代を思い出すよ。何でも ”達人” が付くんだよ」
「男から認められた証だ」
話しているうちに大学に到着した。まだ見慣れない建物に迎えられた。歩いていると、悠人と森本たちに会った。急に肩の緊張がほぐれて、わいわい話しながら教室へ向かった。
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