134 / 265
15-16
しおりを挟む
午前5時。
お父さんの家から戻ってきた。まだ日が昇る前だ。リビングでお茶を飲んで、これからのことを考えた。悠人に謝る内容と、話し合いの場をいつにするのかということを。
黒崎が早瀬さんに電話をかけ始めた。オフィスで話す内容ではないからだ。表情が曇っていたから気になった。ため息交じりに電話で話している。いい内容ではなさそうだ。
「……悠人君だけじゃないのか。いつからだ?……そんなに前からか。……黒崎製菓としては歓迎する。今から親父に話しておこうか。そうか、深川さんか。じゃあ、オフィスで……」
通話を終えた後、髪の毛をかきあげながら、黒崎が眉間に皺を寄せた。どんな話が出てきたのか?黒崎製菓の名前が出てくるなんて、穏やかではない。
「どうなったの?いい結果じゃないよね……」
「黒崎製菓の件は問題ない。裕理には取締役会メンバーに入る打診をしてあった。いい返事がもらえた。本気を出したようだ」
「どうしてそんな顔しているんだよ?」
「話を受ける理由のことだ。悠人君を守れなかったと悔やんでいる。自分に力があれば、最初から近づいてこないはずだと。まだ32歳だ、しかたがない。俺も同じことだ。だから取締役会に入るそうだ」
早瀬さんが急に返事をして来たのは、今回のことが理由だと口にしたそうだ。黒崎製菓グループとしては大歓迎だが、黒崎としては心配になっている。
「本人がやりたいなら応援する。あとは、一貴の困った癖の関係だ」
「許してくれそうもない?嫉妬された話をした?昔の恋人のことか」
「妬みには気づいていたそうだ。昔の恋人のことは聞かなかった。一貴は裕理にも好意を持っていたようだ。悠人君へと同じものだ。恋愛感情だ。収集癖の件を話すと納得していた」
「えええ ? ごほっ、ごほっ」
思わずむせ返った。今年に入って、一貴さんと早瀬さんの接点が増えた。早瀬さんは一貴さんから恋愛感情で押されていたそうだけれど、サラッと受け流していたそうだ。まさか悠人にも向けられていたとは気づかなかったそうだ。それで昨日、俺と悠人の電話に気づいて、一貴さんを叱ったらしい。
「裕理は呆れ返っている。悠人君へ謝らせる。裕理は自分には不要だそうだ。大人しくしてもらえれば、それでいい。仕事上の距離を保ってくれと言っていた」
「どうして恋愛感情を持たれているって、分かったんだろうね?デートに誘われたとか。飲みに行くのは普通なんだよね?」
「……”綺麗な目をしている。淡いグリーンが魅力的だ”。そう囁かれたそうだ」
「ごほっ、ええ?ひゃひゃひゃ……」
早瀬さんの瞳は綺麗だ。それでも、面と向かって口にするのか?一貴さんのことだから、嫌みに聞こえる言い方をしたかも知れない。だから笑ったらいけないのに、その光景を想像するだけで、口元がほころんでしまった。悠人は知っているのかな?
黒崎としては納得いくものだそうだ。あれほどに嫉妬し続けたからだ。本人のことを考えているうちに、惹かれた可能性があるということだ。
「悠人君には話してあるだろう。困った兄貴だ。追い出してもいいか?親父にも話しておく」
「だめだって。お義父さんは笑わないから。早瀬さんのことも、傷つける気はないんだろ?好きなんだし。でもさ、嫉妬しているのに、恋愛感情があるんだね……」
「それが一貴の特性だ。嫉妬心をケースに保管して、恋愛感情を、もう一つのケースに入れてある。そういうことだろう」
「なるほどねえ。その説明ならしっくりくるよ」
「裕理が囁かれたのか。気色の悪い話だ。さすがにオフィスでは聞きたくない」
「そんな言い方をするなよ~。綺麗なものは綺麗だって……、ひゃひゃひゃ」
いくら何でも気が多すぎるだろう。ケースに入れるかのようにして、想いを保管するのか。いくらでも増やせそうだ。さらに聞かされた話には、呆れるしかなかった。
一貴さんが早瀬さんへ服をプレゼントそうだ。宅急便でオフィスへ送ったと、昨日の夕方に連絡があったそうだ。今日オフィスに到着予定だ。早瀬さんははっきりと断ったのに。それでも完全にシャットアウト出来なかったことを、悔しがっていたそうだ。
一貴さんは強引だ。一方的に送り付けられたなら、仕方がないだろう。送り返せばいい。しかし、黒崎は別の意味だと言った。
「”NO”だと意思表示をした相手が、送りつけてきたからだ。今までに無い経験のはずだ。それもあって、取締役会の話を受けた。この件で、いずれはR&W社の代表へ推される。その入口へ飛び込んだ。これからは進むだけだ」
「気持ちは分かるよ。大事な人を守りたいのに力がないって。それは落ち込むよー。早瀬さんに力がないの?がっちり守っているのに……」
「俺も同じだ。まだ力が足りない。あいつに負けられない。一貴じゃないぞ、裕理にだ」
「そんなに風に言うなよ~」
早瀬さんと一緒に頑張っていく。負けたくないライバルでも、蹴落とすことはない。そう言っているかのようだ。一旦は休憩した黒崎が、また進み始めたのだろうか。
お父さんの家から戻ってきた。まだ日が昇る前だ。リビングでお茶を飲んで、これからのことを考えた。悠人に謝る内容と、話し合いの場をいつにするのかということを。
黒崎が早瀬さんに電話をかけ始めた。オフィスで話す内容ではないからだ。表情が曇っていたから気になった。ため息交じりに電話で話している。いい内容ではなさそうだ。
「……悠人君だけじゃないのか。いつからだ?……そんなに前からか。……黒崎製菓としては歓迎する。今から親父に話しておこうか。そうか、深川さんか。じゃあ、オフィスで……」
通話を終えた後、髪の毛をかきあげながら、黒崎が眉間に皺を寄せた。どんな話が出てきたのか?黒崎製菓の名前が出てくるなんて、穏やかではない。
「どうなったの?いい結果じゃないよね……」
「黒崎製菓の件は問題ない。裕理には取締役会メンバーに入る打診をしてあった。いい返事がもらえた。本気を出したようだ」
「どうしてそんな顔しているんだよ?」
「話を受ける理由のことだ。悠人君を守れなかったと悔やんでいる。自分に力があれば、最初から近づいてこないはずだと。まだ32歳だ、しかたがない。俺も同じことだ。だから取締役会に入るそうだ」
早瀬さんが急に返事をして来たのは、今回のことが理由だと口にしたそうだ。黒崎製菓グループとしては大歓迎だが、黒崎としては心配になっている。
「本人がやりたいなら応援する。あとは、一貴の困った癖の関係だ」
「許してくれそうもない?嫉妬された話をした?昔の恋人のことか」
「妬みには気づいていたそうだ。昔の恋人のことは聞かなかった。一貴は裕理にも好意を持っていたようだ。悠人君へと同じものだ。恋愛感情だ。収集癖の件を話すと納得していた」
「えええ ? ごほっ、ごほっ」
思わずむせ返った。今年に入って、一貴さんと早瀬さんの接点が増えた。早瀬さんは一貴さんから恋愛感情で押されていたそうだけれど、サラッと受け流していたそうだ。まさか悠人にも向けられていたとは気づかなかったそうだ。それで昨日、俺と悠人の電話に気づいて、一貴さんを叱ったらしい。
「裕理は呆れ返っている。悠人君へ謝らせる。裕理は自分には不要だそうだ。大人しくしてもらえれば、それでいい。仕事上の距離を保ってくれと言っていた」
「どうして恋愛感情を持たれているって、分かったんだろうね?デートに誘われたとか。飲みに行くのは普通なんだよね?」
「……”綺麗な目をしている。淡いグリーンが魅力的だ”。そう囁かれたそうだ」
「ごほっ、ええ?ひゃひゃひゃ……」
早瀬さんの瞳は綺麗だ。それでも、面と向かって口にするのか?一貴さんのことだから、嫌みに聞こえる言い方をしたかも知れない。だから笑ったらいけないのに、その光景を想像するだけで、口元がほころんでしまった。悠人は知っているのかな?
黒崎としては納得いくものだそうだ。あれほどに嫉妬し続けたからだ。本人のことを考えているうちに、惹かれた可能性があるということだ。
「悠人君には話してあるだろう。困った兄貴だ。追い出してもいいか?親父にも話しておく」
「だめだって。お義父さんは笑わないから。早瀬さんのことも、傷つける気はないんだろ?好きなんだし。でもさ、嫉妬しているのに、恋愛感情があるんだね……」
「それが一貴の特性だ。嫉妬心をケースに保管して、恋愛感情を、もう一つのケースに入れてある。そういうことだろう」
「なるほどねえ。その説明ならしっくりくるよ」
「裕理が囁かれたのか。気色の悪い話だ。さすがにオフィスでは聞きたくない」
「そんな言い方をするなよ~。綺麗なものは綺麗だって……、ひゃひゃひゃ」
いくら何でも気が多すぎるだろう。ケースに入れるかのようにして、想いを保管するのか。いくらでも増やせそうだ。さらに聞かされた話には、呆れるしかなかった。
一貴さんが早瀬さんへ服をプレゼントそうだ。宅急便でオフィスへ送ったと、昨日の夕方に連絡があったそうだ。今日オフィスに到着予定だ。早瀬さんははっきりと断ったのに。それでも完全にシャットアウト出来なかったことを、悔しがっていたそうだ。
一貴さんは強引だ。一方的に送り付けられたなら、仕方がないだろう。送り返せばいい。しかし、黒崎は別の意味だと言った。
「”NO”だと意思表示をした相手が、送りつけてきたからだ。今までに無い経験のはずだ。それもあって、取締役会の話を受けた。この件で、いずれはR&W社の代表へ推される。その入口へ飛び込んだ。これからは進むだけだ」
「気持ちは分かるよ。大事な人を守りたいのに力がないって。それは落ち込むよー。早瀬さんに力がないの?がっちり守っているのに……」
「俺も同じだ。まだ力が足りない。あいつに負けられない。一貴じゃないぞ、裕理にだ」
「そんなに風に言うなよ~」
早瀬さんと一緒に頑張っていく。負けたくないライバルでも、蹴落とすことはない。そう言っているかのようだ。一旦は休憩した黒崎が、また進み始めたのだろうか。
0
あなたにおすすめの小説
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
発情期のタイムリミット
なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。
抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック!
「絶対に赤点は取れない!」
「発情期なんて気合で乗り越える!」
そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。
だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。
「俺に頼れって言ってんのに」
「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」
試験か、発情期か。
ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――!
ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。
*一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる