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17-1 熱をだした夏樹
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5月2日、木曜日。午前5時半。
黒崎家の畑にて、九条ねぎを収穫しているところだ。気候がいいから育つのが早い。ネギは身体を温めるし、喉にもいいと言われている。我が家の門番として、大魔王の健康を気遣っている。風邪を引くと咳が重くなるからだ。去年から引いていない。俺も熱を出していない。
「ふう……。これぐらいいいか。いっぱいあるな。遠藤さんへおすそ分けしようか」
根から5センチ上の部分で切り取った。また生えてくるから収穫し放題だ。プチトマトも育っている。太陽の光を浴びて、オレンジ色から赤く変わりつつある。
「明後日ぐらいが収穫に良いかな?ああ、実が割れてる。こっちもか。プチっと……」
2個のトマトを取ってカゴへ入れた。よいしょっと立ち上がり、背筋を伸ばして空を見上げた。この朝の時間が落ち着く。
視線の向こうには、ノスタルジックな洋風の家が見えている。すると、リビングの窓が開いていた。黒崎がこっちを向いて手招きをしている。
「おーい、どうしたのー?」
「そろそろ入って来い。まだ寒いだろう」
「平気だよ。もう5月だよ?」
「手が冷えているぞ」
リビングのテラスへ行くと、カゴを取り上げられた。そして、そのまま腕を引かれて、家の中へ引っ張りこまれた。
たしかに肌寒かった。しかし、大事にし過ぎると身体が弱くなる。すでに過保護状態だ。コンサートが控えているからと、さらに気を遣われている。しかし、料理を手伝う気配はない。トーストにバターを塗ったり、運んだりするだけだ。成長したとは思う。物を落とさなくなったからだ。
「何か羽織って外に出ろ。せっかく体調がいい」
「分かっているよ~。朝ごはんにしようか。このトマト、酸っぱいかもしれないけど。食べてくれるだろ?ウンウン……。よしよし……」
黒崎の返事をきかずに決めた。朝ごはんは、温め直したポトフと、ロールパン、サラダだ。厚焼き玉子のストックもある。
ダイニングに料理を並べ終えた後、くしゃみが出そうになった。すぐに後ろを向いて、くしゃみを出した。
「くしゅんっ。ああー……」
「大丈夫か?」
「ポトフのコショウだと思う。さっき仕上げに掛けたから……」
「顔が赤いぞ?手は冷たかったが」
黒崎がそばへ来て、額に手を当ててきた。頬や首筋へも当てて眉を寄せた。熱が出ているはずだと言っている。ソファーへ促されて、体温計を渡された。自分としては、出ている感じはしない。
アラームが鳴って引き抜くと、意外な数字が出てきた。38.0度だ。平熱の低い俺には高熱だ。すぐにベッドへ連れて行かれた。
「寝ておけ」
「うん……」
すぐに着替えてベッドに寝転がった。連休に入るから病院が休みになる。午前中に行ってくると話すと、黒崎が山崎さんへ電話をかけ始めた。御園クリニックへ付き添ってくれという。
「黒崎さん。一人で行くよ。21歳の男が付き添われたくないよ」
「言うことをきけ。親父は夕方には帰ってくる。向こうで寝ておけ」
「りょーかい。うっうっ。クリニックでも有名なんだよ?あんたが付いてくるから」
「とにかく一人に出来ない。4日間はオフだったな。ちょうどいい。長谷部さんへ連絡しておこう」
「俺がするから……」
長谷部さんへラインを送った。本当にやりかねない。今度は朝ごはんを運んで来ると言い出した。嫌な予感しかしない。自分で取りに行きたい。
「あ……、くらっときた……」
起き上がりかけて、眩暈が起きた。そういえば昨夜も同じだった。肩が凝っているからだと思っていたが、熱が出る前だったのか。
「毛布を着ておけ」
「うん……」
そっと寝かされて、上から毛布を掛けられた。暑いよと口にする前に、ウトウトと眠気が起きた。すると、ドアの閉まる音が聞こえてきた。ここは任せておこう。
黒崎家の畑にて、九条ねぎを収穫しているところだ。気候がいいから育つのが早い。ネギは身体を温めるし、喉にもいいと言われている。我が家の門番として、大魔王の健康を気遣っている。風邪を引くと咳が重くなるからだ。去年から引いていない。俺も熱を出していない。
「ふう……。これぐらいいいか。いっぱいあるな。遠藤さんへおすそ分けしようか」
根から5センチ上の部分で切り取った。また生えてくるから収穫し放題だ。プチトマトも育っている。太陽の光を浴びて、オレンジ色から赤く変わりつつある。
「明後日ぐらいが収穫に良いかな?ああ、実が割れてる。こっちもか。プチっと……」
2個のトマトを取ってカゴへ入れた。よいしょっと立ち上がり、背筋を伸ばして空を見上げた。この朝の時間が落ち着く。
視線の向こうには、ノスタルジックな洋風の家が見えている。すると、リビングの窓が開いていた。黒崎がこっちを向いて手招きをしている。
「おーい、どうしたのー?」
「そろそろ入って来い。まだ寒いだろう」
「平気だよ。もう5月だよ?」
「手が冷えているぞ」
リビングのテラスへ行くと、カゴを取り上げられた。そして、そのまま腕を引かれて、家の中へ引っ張りこまれた。
たしかに肌寒かった。しかし、大事にし過ぎると身体が弱くなる。すでに過保護状態だ。コンサートが控えているからと、さらに気を遣われている。しかし、料理を手伝う気配はない。トーストにバターを塗ったり、運んだりするだけだ。成長したとは思う。物を落とさなくなったからだ。
「何か羽織って外に出ろ。せっかく体調がいい」
「分かっているよ~。朝ごはんにしようか。このトマト、酸っぱいかもしれないけど。食べてくれるだろ?ウンウン……。よしよし……」
黒崎の返事をきかずに決めた。朝ごはんは、温め直したポトフと、ロールパン、サラダだ。厚焼き玉子のストックもある。
ダイニングに料理を並べ終えた後、くしゃみが出そうになった。すぐに後ろを向いて、くしゃみを出した。
「くしゅんっ。ああー……」
「大丈夫か?」
「ポトフのコショウだと思う。さっき仕上げに掛けたから……」
「顔が赤いぞ?手は冷たかったが」
黒崎がそばへ来て、額に手を当ててきた。頬や首筋へも当てて眉を寄せた。熱が出ているはずだと言っている。ソファーへ促されて、体温計を渡された。自分としては、出ている感じはしない。
アラームが鳴って引き抜くと、意外な数字が出てきた。38.0度だ。平熱の低い俺には高熱だ。すぐにベッドへ連れて行かれた。
「寝ておけ」
「うん……」
すぐに着替えてベッドに寝転がった。連休に入るから病院が休みになる。午前中に行ってくると話すと、黒崎が山崎さんへ電話をかけ始めた。御園クリニックへ付き添ってくれという。
「黒崎さん。一人で行くよ。21歳の男が付き添われたくないよ」
「言うことをきけ。親父は夕方には帰ってくる。向こうで寝ておけ」
「りょーかい。うっうっ。クリニックでも有名なんだよ?あんたが付いてくるから」
「とにかく一人に出来ない。4日間はオフだったな。ちょうどいい。長谷部さんへ連絡しておこう」
「俺がするから……」
長谷部さんへラインを送った。本当にやりかねない。今度は朝ごはんを運んで来ると言い出した。嫌な予感しかしない。自分で取りに行きたい。
「あ……、くらっときた……」
起き上がりかけて、眩暈が起きた。そういえば昨夜も同じだった。肩が凝っているからだと思っていたが、熱が出る前だったのか。
「毛布を着ておけ」
「うん……」
そっと寝かされて、上から毛布を掛けられた。暑いよと口にする前に、ウトウトと眠気が起きた。すると、ドアの閉まる音が聞こえてきた。ここは任せておこう。
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