白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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 16時。

 リハーサルが始まった。ステージは3段に分かれていて、それぞれがポジショニングをした。サポートメンバーであるドラムは原田さんだ。ベースは石笛さんだ。2人はバンド歴20年のベテランで、何かと面倒を見てもらっている。

 原田さんも石笛さんもバンドを組んでいて、そのライブに誘われている。もちろん観に行く。当初はヴィジブルレイに誘ったそうだけれど、今やっているバンドに集中したいということで、サポートメンバーになった。原田さんの方は、ベテルギウスに誘われているそうだ。今のドラムが脱退を考えているからだそうだ。音楽性の違いが出てきたからだと聞いている。

「黒崎君!隣に視線を向けてみて」
「はい!」

 今回のステージも撮影される。そして、DVDが発売予定でもある。3日間のどれかが選ばれるのだと思っていたら、最終日にしようという話を聞き、いっそう緊張感が増した。しかしそれは高宮さんと佐久弥の冗談で、一番出来の良い日にするということを聞き、安心した。

 そしたらまたそれが冗談だと言われて、本当のことを教えてくれと佐久弥にすがりつくと、原田さんが助け船を出してくれた。苛めないでやってくれと言ってくれた。結局のところ、3日間すべて出すのか、出来の良い日だけを出すのかは未定だということだった。おそらくは最終日になるだろうということも聞いた。

「うっうっ。これってストレスなのかな~」

 なんだか胃が痛い。スタンドマイクの前に立っている姿を撮影されている。手を振ってくれと言われて、手を振った。笑顔で振ってくれと言われてしまい、焦った。

「すみませんでした!」
「その顔、いいよーーー」

 撮影してくれているのは仙頭カメラマンだ。次は悠人のことを写している。ギターフレーズを弾き終えた。そこへ佐久弥がやって来て、悠人の髪の毛をいじり始めて、悠人が怒りだした。

「もうーーーーーー!何回目だよーーー!」
「その顔もいいよーーー」

 仙頭さんが悠人の表情を逃すことなく、シャッターを切っていく。そして、落ち着いている佐久弥の姿も写し始めた。

 ガーーーーーーー。

 スピーカーの調整が終わり、リハーサルが終わった。この後はステージが始まるまでの間に、ヘアメイクと着替えがある。そして、音楽雑誌の取材もある。忙しくて充実している。

 観客席を眺めた。ここに来る人の顔をなるべく多く覚えて帰りたい。カメラは良い思い出を写すためにもあるものだと実感した。
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