白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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 15時。

 コンサート会場に向かっているところだ。リハーサルは16時から17時までだ。挨拶回りは初日にしておいたから、今日は一昨日よりも遅く家を出た。朝ご飯と昼ご飯をしっかり取ってきた。今、悠人からのラインを読んでいる。

「『島川さんがうちに遊びに来たいって言ってる。夏樹もどう?』だってさ。一貴お兄ちゃんだけが行くと迷惑を掛けそうな気がするから、俺も行った方がいいかな?」
「来てもらいたそうだな」
「うん。今日、新しい名刺を渡すそうだよ。純粋な友達募集中って書いてあるやつ。面白がってくれそうだって、一貴お兄ちゃんが言っていたんだ」
「もう友達なんじゃないのか?」
「そうだけどさ。アイデアを見て欲しいんだって。お義父さんはいいんじゃないかって言っていたよ」
「そうか」

 一貴さんは今もお義父さんの家で暮らしている。住んでいたマンションの荷物を運んできて、引っ越し状態だった。一緒に片付けを手伝っているうちに、一貴さんがそそっかしいタイプだと気づいた。慌てると失敗を重ねてしまう。それについては悠人が経験済みで、慌てず騒がず、どうしたの?と、本人に聞くと良いそうだ。そして、失敗した部分を一緒に片付けると良いそうだ。

 今日はIRON ANGELのメンバーも観に来てくれる。みんなに名刺を渡すのだと言い、一貴さんが楽しそうにしていた。しかし、俺から見ると、やや心配そうでもあった。嫌われたらどうしようという感情だと打ち明けてくれた。その時は黒崎もいた。強気に見える島川社長のプライベートな部分だと言っていた。前から知っていたのだろうか。

「黒崎さんさ。一貴お兄ちゃんが心配性な面があるって、前から知っていたの?」
「ああ。一貴には二つの面がある。子供と大人に分かれている。何か起きると、状況によって、子供になったり大人になったりする。大人の時は島川社長の顔だ」
「使い分けているって事?」
「自然と出るようだ。ストレスを感じた時に、子供のような一貴が出てくる。仕事の時は大人の島川社長だ。普段は一貴だ。俺達が見ている姿だ」
「3人居るってこと?」
「2人だ。普段は子供に近い。いや、3人かも知れない。カウンセリングが進めば、和らいでくるかも知れない」
「そうなんだね……」

 どれだけ多く傷ついてきたことだろう。子供の頃から誰かと比べられ続けて育ち、大人になった後はプラセルを大きくさせるために力を注いできた人だ。休む日が無かったのだろう。黒崎は一貴さんのそういう面を見ているから、寄り添いたくなったのだろう。初対面の時に俺に嫌みを言ったのに、一貴さんには優しかった。今になって思い出せることだ。

「黒崎さんは一貴お兄ちゃんに優しいよね。仲が良くて良かったよ」
「やることがキツイのは俺も同じだ。俺が24歳の時の話をしたことがあっただろう。アメリカ時代に訴えられた時だ。一貴に仲裁されて助かった」
「そういう話もあったね。ごめんね。一貴お兄ちゃんのことを嫌ったときがあったんだ」
「それでいい。嫌いなものは嫌いだ。今は好きか?」
「うん。憎めないんだ」

 すると、黒崎が笑った。何かあったのだろうか。

「黒崎さん、どうしたの?」
「その後出席したパーティーで、告白されて、迷惑だと断った」
「あの話?全否定されたって、一貴お兄ちゃんが言っていたよ。助けてもらった後にね~」
「それが目的で俺のことを助けたのかと思ったからだ。俺はあの時、傷ついたぞ」
「そっか。ごめんね……」
「謝らなくていい。一貴らしい話だ。着いたぞ」

 いつの間にか、会場に着いていた。俺達は裏側にある関係者用の駐車場に車を停めることになる。そこに停めた直後、藤沢からラインが入った。彼もまた会場に着いたそうだ。並川さんと聡太郎も一緒だという。今日は森本達も来てくれる。控え室が賑やかになりそうだ。

「今日も天気が良くて良かったな~」

 車から降りて、大きくのびをした。すると、悠人が到着した。佐久弥もいる。みんなでわいわいがやがやと話しながら、会場に入って行った。
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