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19-1 コンサート
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5月19日、日曜日。午前9時。
17日から、都内の国際ホールにて、3日間のコンサートが始まった。初めてのコンサートの観客数は500人だったけれど、今回は2500人だ。3日間で7500人を迎える。今日は、その最終日を迎える。夕方から短いリハーサルがあり、それまでは家で過ごす。
今日は、実家の家族が来てくれる。お義父さんもだ。最終日ならビジネスの話になりづらいだろう。黒崎が必ず来いと誘った。両親からもだ。
夕方まで時間があるからと、リビングにて、黒崎から爪を整えられているところだ。この人と暮らし始めて以降、一度も自分で切ったことがない。いや、切らせてもらえない。黒崎の爪も整っているから、まかせて間違いないが、これぐらいは自分でやりたい。
「黒崎さーん。自分で覚えたいよ」
「だめだ。自分でやると分かりづらい」
「少しぐらい変でもいいだろ。切りすぎないようにするから」
「二枚爪になる。動くな。表面を整える」
ソファーへ並んで座り、黒崎の長いまつ毛を見つめた。いつも静かだが、こういう時はさらに大人しくなる。ピアノを弾いている時と同じだ。全く喋らずに、黙々と続けている。俺が一方的に話しかけている状態だ。うるさいとは言われない。やすりの動きが、相づちの代わりだ。
右手を済ませて左手に移った。その間も黙ったままだ。この人と暮らせるのは、俺しかいない気がする。口数が少なくて、必要なことだけを話す。静かだと思えば、偉そうにもなる。本人には悪気がない。
「足の爪は明日にしようよ。ゆっくり休んでよ」
「夕方まで暇だろうが」
「その言い方だよ~。もっと優しく言えよ~」
「俺も暇だ」
「その言い方だってば。暖簾に腕押しってやつだね」
これ以上は喧嘩の元だ。大人しくしていると、左手が解放された。やっと終わったかと思えば、唇を押し当てて吸いつき始めた。何度も繰り返しては噛みついてきた。このイヤらしさに呆れてしまった。
「黒崎さん。スベケじじいはやめろよ~」
「俺のものだ。そう言ったはずだ」
「そうだけど。せっかく見惚れていたのに。変質者になるなよ」
「脱がせるぞ。足をやる」
グイっと強引に足先を持ち上げられて、靴下を脱がされた。甘いムードならときめくが、喧嘩の一歩手前なら期待できない。黒崎が足元に座るか、俺が寝転がるかのどっちかだ。すると、ぐいっと押し倒されて、黒崎が覆いかぶさってきた。そして、顔が近づき、イヤらしいキスをされた。
「黒崎さん……。わざと音を立てるなよ」
「手の甲が日焼けをしている。塗ったのか?」
「日焼け止め?今度は首の後ろかよ?」
ひっくり返されて、首の後ろにキスをされた。日焼けしていると言いながら。すると、Tシャツの裾をはぐられた。汗をかいているのに。しかし、黒崎は気にしないと言い、吸いつき始めた。今度は優しい仕草だった。心が溶かされていると、耳元で笑い声が聞こえてきた。
「これで終わりだ」
「ここで止めるなよ……」
「お仕置きだ。一貴に変なことを教えるな。俺に相談しろ」
「何のことだよ?」
「名刺に ”純粋な友達募集中” と入れさせるな。ますます、友人が出来なくなる」
「気持ちが分かるからさ~。恋人はハードルが高いし、仕事がらみで人が寄ってくるだろ。名刺にでも書かないと、相手に伝わらないじゃん。まだ連絡は来ていないそうだけど。一貴さんも期待しているんだ。そのうちにって……。なんで笑うんだよ?」
「いや……」
黒崎が笑い出した。抱き上げられて、膝の上に座らされた。愛していると囁かれた。とても優しかったからビックリして動けなくなった後、何もなかったかのように、足の爪を整え始めた。
17日から、都内の国際ホールにて、3日間のコンサートが始まった。初めてのコンサートの観客数は500人だったけれど、今回は2500人だ。3日間で7500人を迎える。今日は、その最終日を迎える。夕方から短いリハーサルがあり、それまでは家で過ごす。
今日は、実家の家族が来てくれる。お義父さんもだ。最終日ならビジネスの話になりづらいだろう。黒崎が必ず来いと誘った。両親からもだ。
夕方まで時間があるからと、リビングにて、黒崎から爪を整えられているところだ。この人と暮らし始めて以降、一度も自分で切ったことがない。いや、切らせてもらえない。黒崎の爪も整っているから、まかせて間違いないが、これぐらいは自分でやりたい。
「黒崎さーん。自分で覚えたいよ」
「だめだ。自分でやると分かりづらい」
「少しぐらい変でもいいだろ。切りすぎないようにするから」
「二枚爪になる。動くな。表面を整える」
ソファーへ並んで座り、黒崎の長いまつ毛を見つめた。いつも静かだが、こういう時はさらに大人しくなる。ピアノを弾いている時と同じだ。全く喋らずに、黙々と続けている。俺が一方的に話しかけている状態だ。うるさいとは言われない。やすりの動きが、相づちの代わりだ。
右手を済ませて左手に移った。その間も黙ったままだ。この人と暮らせるのは、俺しかいない気がする。口数が少なくて、必要なことだけを話す。静かだと思えば、偉そうにもなる。本人には悪気がない。
「足の爪は明日にしようよ。ゆっくり休んでよ」
「夕方まで暇だろうが」
「その言い方だよ~。もっと優しく言えよ~」
「俺も暇だ」
「その言い方だってば。暖簾に腕押しってやつだね」
これ以上は喧嘩の元だ。大人しくしていると、左手が解放された。やっと終わったかと思えば、唇を押し当てて吸いつき始めた。何度も繰り返しては噛みついてきた。このイヤらしさに呆れてしまった。
「黒崎さん。スベケじじいはやめろよ~」
「俺のものだ。そう言ったはずだ」
「そうだけど。せっかく見惚れていたのに。変質者になるなよ」
「脱がせるぞ。足をやる」
グイっと強引に足先を持ち上げられて、靴下を脱がされた。甘いムードならときめくが、喧嘩の一歩手前なら期待できない。黒崎が足元に座るか、俺が寝転がるかのどっちかだ。すると、ぐいっと押し倒されて、黒崎が覆いかぶさってきた。そして、顔が近づき、イヤらしいキスをされた。
「黒崎さん……。わざと音を立てるなよ」
「手の甲が日焼けをしている。塗ったのか?」
「日焼け止め?今度は首の後ろかよ?」
ひっくり返されて、首の後ろにキスをされた。日焼けしていると言いながら。すると、Tシャツの裾をはぐられた。汗をかいているのに。しかし、黒崎は気にしないと言い、吸いつき始めた。今度は優しい仕草だった。心が溶かされていると、耳元で笑い声が聞こえてきた。
「これで終わりだ」
「ここで止めるなよ……」
「お仕置きだ。一貴に変なことを教えるな。俺に相談しろ」
「何のことだよ?」
「名刺に ”純粋な友達募集中” と入れさせるな。ますます、友人が出来なくなる」
「気持ちが分かるからさ~。恋人はハードルが高いし、仕事がらみで人が寄ってくるだろ。名刺にでも書かないと、相手に伝わらないじゃん。まだ連絡は来ていないそうだけど。一貴さんも期待しているんだ。そのうちにって……。なんで笑うんだよ?」
「いや……」
黒崎が笑い出した。抱き上げられて、膝の上に座らされた。愛していると囁かれた。とても優しかったからビックリして動けなくなった後、何もなかったかのように、足の爪を整え始めた。
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